HVでは大成功を収めたトヨタ
世界的な電動化のなかで、トヨタは電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の導入に慎重な動きをしている。
トヨタは、世界で最初に量産ハイブリッド車を発売し、電動化への動きを先導した。これに、国内ではホンダと日産が続いたが、欧米の反応は鈍かった。
米国も、テスラが象徴するように、電動化への動きを強めようとしている。ことにテスラは、中国やドイツにも生産拠点を設け、EV攻勢を強める姿勢にある。ドイツ市場では、メルセデス・ベンツのSクラスよりテスラ・モデルSのほうが販売を伸ばしているとさえいわれる。
過去20年ほどのなかで、トヨタはHVで着実に燃費改善を進め、燃費の向上はCO2排出量削減にも貢献している。HVは、技術としての進化を続けながら原価低減などの面でも効果を上げているに違いない。したがって、初代プリウスが登場した当時は採算が合わなかったはずだが、現在では十分に利益を上げられる環境対策となっている。
海外でのEVの導入も「ポジティブ」な理由ではない
これに対しEVやPHEVは、バッテリー搭載量が増えることで原価の上昇が起こり、採算に合わないとトヨタではみているようだ。海外を中心にEVを先に導入する計画も、寺師茂樹副社長が昨年の記者会見で「各国の法規制による反則金を支払うよりはまし」との答え方をしている。
また初代プリウスから使っているニッケル水素バッテリーは、採算が見込めているが、EVやPHEVに必要なリチウムイオンバッテリーはまだ経験が十分でなく、単にクルマとして使うだけでなく、EV後、PHEV後の再利用などについてトヨタは実証段階だ。ここが事業化できる見込みが立たなければ、EV後、PHEV後に、まだ60~70%の容量を残すとされるリチウムイオンバッテリーの新品時の原価はもちろん、再利用時の価値を見込む差し引きの原価計算も成り立たない。
さらに、EVやPHEVは、自宅などで充電することが基本だが、日本では集合住宅(マンションなど)の管理組合で合意を得なければ200Vの充電コンセントを設置できない課題があり、そのことに対しトヨタは手を打っていない。そしてトヨタは、HV技術があればEVやPHEVは作れると語るが、作れることと売れることは異なり、充電を含めEVやPHEVは、エンジン車やHVと違う販売戦略が不可欠であるにもかかわらず、そこに気付いていないかのようだ。
トヨタの販売店では、EVを持たないとほかのメーカーに移られてしまうとの危機感を持つが、国内に関してトヨタはEVやPHEVの導入に慎重なままだ。ようやくRAV4 PHVの導入を待つ程度にとどまっている。このままではトヨタは、EVとPHEVの販売で今後かなりの苦労をするのではないかと危惧される。

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