レクサス車と比べても見劣りしないルックス
1997年に「ワイルドbutフォーマル」というキャッチコピーとともに新ジャンルのSUVとして登場した初代ハリアー。それまでSUVといえばクロスカントリー(クロカン)モデルが主流だったマーケットに新鮮さを吹き込んだ。北米に輸出されると一気に人気に火がつき、今では世界的ブームとなったラグジュアリーSUVの元祖となっている。
そのハリアーが4代目へと進化し、登場した。1997年と違い、現代はライバルとなるSUVモデルが世界中のメーカーから発売され群雄割拠の状態だ。はたして新型はいかなる魅力と実力を授けられているのか、早速試乗インプレッションを試みた。
まず最初に試乗したのは2リッターの直4ガソリンエンジンを搭載し前輪を駆動するFFモデルだ。レザーパッケージを装備したZグレードは豪華な仕立ての内装がなされていて、装備面も充実。黙って乗せられたら最上級グレードかと勘違いしてしまいそうだ。

エクステリアの印象は流麗なボディデザインが魅力的で、なだらかなルーフデザインとCピラーからリヤハッチへと回り込む造形が美しい。車体パネルの美しい曲線や精度の高そうな建て付けで「レクサス」車と比べても見劣りしない。ハリアーの象徴だったフロントグリルの「鷹」のマークは廃され、トヨタのエンブレムに置き換えられている。

室内に乗り込むと、レザーシートのあつらえが良く、座ってみるとホールド性や固さなど申し分のない仕上がりだ。インパネデザインは水平基調でセンターに12.3インチの特大モニターが備わる。視認性や操作性も高く、コマンドメニューも豊富だ。

上を見上げると大きなガラス製サンルーフが後席上部まで、2分割で備わっている。だがこのガラスサンルーフは開閉しない。閉じたままだがガラス内にサンドイッチされた液晶が電気的にコントロールされ、調光する仕組みとなっているのだ。完全透明~穏やかな光を透過させる2段階の調光調節が可能だが、メルセデス・ベンツ車のような完全遮光性能までは備えていない。その代わり従来式の電動サンシェードで遮光できる。

さてエンジンを始動し、走り始める。最初のタイヤのひと転がりで、このクルマの素性の良さが感じとれる。試乗会場のスタート地点は石畳路なのだが、路面の細かな凹凸をタイヤとダンパーが穏やかに吸収してくれているのがわかる。

もうひとつ、このクルマはHV(ハイブリッド)か? と思うほど静かなのだ。
静粛性には優れるもののエンジン音の質に課題
しかし、さらに車速を上げていくと残念な部分も見え始める。まずエンジン音がいただけない。遮音性能は優秀だが、完全にエンジン音を遮断しているわけではない。僅かにだが漏れ聞こえるエンジン音がなんとなく安っぽい音色で、力強さを感じない。とくに加速場面ではトルクの物足りなさや加速感の鈍さを感じながらのエンジン音なので、なおさら貧弱に聞こえてしまったようだ。

トランスミッションはCVTを採用している。このCVTはRAV4に採用され評価の高い発進用のギヤを組み込んだダイレクトシフトCVTで、発進から微低速域では文句ない仕上がりだが、高速道路への流入など加速領域ではエンジン回転が大きく立ち上がりノイズも高めてしまっている。音量と加速感のアンバランスがドライビングの楽しさをスポイルしてしまうのだ。

次にHVのFFに乗り換える。こちらは2.5リッター直4エンジンにHVシステムを組み合わせていて、パワー/トルクも強力になっている。発進時はEV走行なので静かでスムーズ。

2リッターガソリンモデルよりパワートレイン重量が増したことで前輪への負担は増えるが、第三世代となるラックアシスト電動パワーステアリング(EPS)により質の高い操舵フィーリングが得られ、ライントレース性も正確になった。

最後にHVの4WDモデル(E-Four)も試す。E-Fourモデルは後輪専用のモーターを備え、140km/hまで後輪の駆動アシストを行うことができる。RAV4のE-FourシステムはV-MAXまでアシストできるのでモーターと制御が異なるようだ。一般道ではしかし必要十分なトラクションと安定性を確保でき、シティ派SUVながら雪道や悪路へも踏み出せる多様性の高さを備えていると言えるだろう。

3モデルに試乗したが、総じて言えるのは静粛性が高まったことと装備を含め質感が向上したこと、そして先進の装備を標準で搭載することで高い安全性を確保しているといえる。
スタイリッシュなデザイン性の高さと新技術の融合で既に2万台以上のオーダーを受けているという新型ハリアー。今年もっとも注目される1台になることは間違いなさそうだ。
