なんと2000万円クラスの個体も存在する!
1999年1月にデビューし2002年12月に生産中止となった、第二世代GT-Rのラストモデル、R34スカイラインGT-Rの中古車価格がエライことになっている。R34GT-Rの平均価格でも1000万円~1050万円ぐらい。VスペックIIニュルになると、2000万円クラスの個体もあるほど。
同じ第二世代GT-Rでも、R32とR33の平均価格は400~420万円といったところなどで、R34だけが突出していることがよくわかる。果たして、20年落ちの総生産台数1万1134台のR34GT-Rに本当に1000万円オーバーの価値があるのだろうか?
経済学ではモノの価値には「使用価値」と「交換価値」、さらに「象徴価値」という3つの価値があるとされている。「使用価値」というのは、機械としてのクルマの価値。R34の場合、標準車の新車価格が499万8000円。Vスペックが559万8000円。一番高価な最終型のMスペックニュルが630万円なので、このあたりが妥当なところ。もちろん中古車であれば、各部が消耗・劣化しているので、機械としての価値は新車よりもずっと低くなっている。
一方、「交換価値」は、需要と供給のバランスで決まる価値のこと。いわば『人気』で決まるもの。R34GT-Rの高値は、この交換価値で支えられている。R34に対し、アメリカの25年ルールが解禁となるのが、2024年からなので、それを機にまた一段と「交換価値」が高くなる可能性は否めない。

最後の「象徴価値」は簡単にいえば物語性。
また、レースでのリザルトなどもこの「象徴価値」を左右するが、R34の場合、ニュルブルクリンク24時間耐久レースでのクラス優勝(2004年)やJGTC(現スーパーGT)の1999年、2003年のチャンピオンといった記録があるが、JGTCは改造範囲が広く、2002年からはGT-Rの魂=直6のRB26の代わりにV6のVQ30にエンジンをスイッチするなどしたので、レースとR34の物語性の結びつきは、R32などに比べればかなり弱い。

ただし、R34GT-Rを所有していると、クルマ好きの間で、「あのR34に乗っている」と一目置かれる。これこそ「他者と物語を共有すること」=「象徴価値」そのもので、この点でもR34GT-Rには、やはり他車にはない価値があるといえるだろう。
いまのR34GT-Rの価格はクルマの程度から考えると高すぎる!
さて、この3つの価値の総和として、現在R34GT-Rには1000万円というプライスがついているのだが、これは妥当なのかというとけっこう疑問……。正直コンディションのいい個体は少なくなってきているし、メンテナンスが必要な個所はどんどん増えていて、維持にはけっこうお金がかかる。
さらにR34自慢のアクティブLSDのパーツや、トランスファー、リヤのドライブシャフト、フューエルポンプコントロールモジュレーターなどの重要な補修部品が製造廃止になっていたり、NISMOヘリテージで再販になったパーツも、軒並み高価になっていたりと、これからもコンディションを維持していこうと思うと、それなりに高額な維持費を覚悟しておく必要があるだろう。

トヨタ2000GTのように、生産台数が337台と僅少で、工業製品というより工芸品といえるほど手がかかっているクルマならともかく、よほどR34GT-Rに思い入れがない限り、1000万円以上で車体を購入し、そこから整備していくぐらいなら、もっと程度がよく、より価格の安いポルシェの中古車でも買ったほうがよほどお買い得だと思うのだが……。
投機目的で購入するにしても、たしかにアメリカの25年ルールで値上がりすることも考えられるが、新型コロナウイルスの影響で、これから世界的に経済が低迷する可能性も高く、そうなると高価な中古車などは、真っ先に下落するリスクは大いにある!

また、乗らないで大事にとっておくという手もあるが、クルマは動かさないと傷むもの。「惚れてしまえばあばたもえくぼ」というとおり、本当にそのクルマが好きなら、懐事情が許す限り、いくら費用をかけようがその人の自由だと思うが、客観的にみるといまのR34GT-Rの相場はアンバランスとしか思えない。
いま、R34GT-Rを所有しているオーナーには、コツコツとメンテナンスしながら、走りを楽しんでもらいたいと思うが、これから1000万円以上出してR34GT-Rを購入しようとしている人は、けっこうリスキーな買い物になると考えた方がいいのでは?