3年後や5年後の車両状態を保つために加入を進めるケースが多い
新車の購入を検討しようと、ディーラーで見積りをとるとだいたい計上されているのが“メンテナンスパック”。メンテナンスパックとは、各ディーラーなどで期間やメニューなど細部は異なるが、例えば初回車検までの定期点検整備にかかる整備料金や一部消耗品代などを事前に支払うことでお得になるというもの。
その損得勘定については今回省くことにするが、新車を売ることで得られる利益がわずかとなってしまった現状では、ディーラーはアフターメンテナンスの収益を重視しており、まずはメンテナンス入庫の囲い込みをしたくメンテナンスパックを展開している。
顧客の囲い込みという面では、残価設定ローンもそのひとつとなる。3年や5年後などの当該車種の残価率を設定し、残価率をもとに残価を算出、それを支払い最終回に据え置くことで、月々の支払い負担を軽くしようというものである。じつはメンテナンスパックの加入促進の動きは、残価設定ローンとも密接な関係があるのだ。
たとえばスズキが展開する残価設定ローンとなる“かえるプラン”では、メンテナンスパックが標準付帯される。以前スズキディーラーを訪れたときにメンテナンスパックが標準付帯されている理由を聞くと、「残価設定ローンは数年先の残価を保証しています。事故を起こしたり、残価を維持するための走行距離や内外装の状況などの条件が著しく守られていない場合以外は、ローンを組むときに設定した残価が保証されます。新車に乗り換えたり、そのまま返却されれば、ディーラーが当該車両を引き取って再販することになるため、当該車両のコンディションを定期的にチェックして維持する意味もあり、メンテナンスパックが標準付帯されています」と話してくれた。

軽自動車は遠乗りする機会が少なくても、毎日の生活で使うケースが多いので意外なほど走行距離が伸びるし、内外装の状況もかなり劣悪になることも多い。ある意味品質を管理したいという意味もあり、スズキのように標準付帯しないケースでも、積極的にメンテナンスパックの加入を呼び掛けているようである。
最終支払回で現車を確認すると想定外に傷んでいることも……
事情通は「メンテナンスパックが出始める少し前のころに聞いた話では、冗談抜きで法定点検などで入庫されたクルマのボンネットを開けると蜘蛛の巣だらけということは珍しくなかったそうです。また、オイル交換をせずに乗り続けてエンジンが焼きついてしまい、新しいエンジンに換装するケースもそれほど珍しくなかったようです。メンテナンスパックが当たり前のようになってきたいまでは、そんな話は以前ほど頻繁には聞かなくなりましたね」とのことであった。

もともと過走行気味となるお客や、クルマを荒っぽく使うひとなどへは積極的に残価設定ローンはすすめないようにして“自己防衛”するセールスマンも多いと聞く。しかし、それでも支払最終回にいざ実車をチェックすると、けっしてベストコンディションとはいえないクルマも放っておけば続出しかねないのである。
残価設定ローン普及の背景のひとつとしては、計画的な下取車の入庫予定の把握という面も大きい。3年や5年後の支払い最終回に残価相当分をについて再ローンを組んで乗り続けるひともいるが、大部分は車両返却もしくは新車への乗り換えでディーラーが引き取ることになる。こうなると、ディーラーとしては、将来的にどのような車種が下取りなどでいつごろ入庫予定となるか予測することができる。さらに、メンテナンスパックに加入してもらい、自社整備工場でメンテナンスを行っておけば、品質面でもある程度の維持が可能となるのである。
残価設定ローンの利用は別としても、メンテナンスパック加入率の高いクルマはリセールバリューも良好で安定したものとなりやすいといってもいいだろう。