ラインオフ式には豊田章男社長も登場

今年1月の東京オートサロン2020で世界初公開されてから約8か月、9月4日に正式発売された「GRヤリス」。スバルとの共同開発された「86」、BMWと共同開発された「GRスープラ」に続く、トヨタの重要なスポーツ戦略車となるが、前出の2台と異なるのはトヨタ独自開発のモデルであることだ。



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開発を担当した齋藤尚彦さんは「市場規模が小さいスポーツカーを継続させる……と言う意味ではどのモデルも志は変わりませんが、我々は1999年にセリカGT-FOURの生産終了以降、スポーツ4WD開発の技術/技能どちらも失っていました。

それを取り戻すためにも自分達の手を使ってトライする必要があったのも事実です」と語る。



クルマのポテンシャルの高さはすでに様々な自動車メディアで報告済みだが、今回は生産工場についてだ。GRヤリスは元町工場内にあるTGR専用工場「GRファクトリー」にて生産が行なわれるが、8月26日にラインオフ式が開催された。オープニングセレモニーでは、GRヤリス(ラリー仕様)が工場内に特設されたスクリーンを破って登場。ドライバーは豊田章男社長である。



レーシングドライバーでも目隠しされたらわからない製品精度! GRヤリス「生産の秘密」とは



クルマから降りて「GRヤリスを作ってくださった皆さん、ありがとう」と一言。続いて「話は長くなりますが……」と前置きをして、GRヤリスにこだわる理由を語った。せっかくなのでノーカットでお届けしたい。



「トヨタは古くから式年遷宮の如く、20年に1度スポーツカーを作ってきました。1960年代には2000GTやヨタハチ、その20年後との1980年代にはスープラ、レビン(/トレノ)、MR-S(/MR2)、セリカなどが世に出ました。その後、20年後の2000年代にも出るはずでしたが、当時のトヨタは出すことができなかった。しかし、LFAで流れを作り、スバルの力を借りて86、BMWの力を借りてスープラを出しましたが、私は不満足でした。

ゼロからトヨタだけの力で……。ニュルを走っている時、こういわれました。『トヨタさんにはできないでしょ?』と。トヨタでも出来ることの証明が、GRヤリスです」



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「このクルマの開発にあたっては新しい出来事がありました。一つはWRCに参戦のために『レースで勝つクルマを作る』。これまでは市販車をレース用に改造していたが、それを逆の流れにしようと。もう一つはエンジニア、トップレーサー、そして皆さん(現場)がワンチームでクルマを作る、それは大きなチャレンジだったと思います。今までと違う流れを作るのは大変だったと思いますが、皆さんは私の思い入れ以上に、このクルマに思い入れを持って欲しいと思います」



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「GAZOO Racingはニュル24時間参戦から生まれましたが、設立以来式年遷宮を持って開発してきたスポーツカー、そしてGAZOO Racingその物。そしてとくにGAZOOという名はトヨタ変革を意味するグループだと認識してください。そしてクルマづくりも変わり、工場づくりそしてモノづくりの分野まで変革をしていきます。トヨタの中で皆さんは先頭を走っている、いわば先駆者という認識をもっていただきいと共に、そんな先駆者に対して『これからも一緒に戦うぞ!!』ということで、私の感謝を伝えたいと思います。本当に皆さんありがとうございました」



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時に声を詰まらせながらのコメントだったのだが、筆者はその理由がすぐにわかった。

それは2007年にマスタードライバーの成瀬弘氏と共にGAZOO Racingを立ち上げ、ニュル24時間に初参戦したときのことだ。



「トヨタはニュル24時間に向けて中古車でトレーニングを行ない、中古車でニュル24時間に参戦しました。しかし、ほかの自動車目カーは2~3年後に出るはずの、ニューマシンで参戦している。当時、私と成瀬さんは、『トヨタはいつも“抜かれるクルマ”ではなく、“抜くクルマ”も作りたい。そして、そんなクルマでレースに出たい!!』と」、おっしゃっていた。



10台のバラツキテストでは驚きの感触!

そんな豊田社長の想いが13年のときを経て実現したのである。齋藤さんは、「社長がGRヤリスのチーフエンジニアでありマスターテストドライバーです。初期段階からテストに参加してもらい、毎週のように乗ってもらいました。ほかのドライバーも気付かないようなことも指摘、データを解析するとハッと気づかされることばかり。クルマは着実に進化していきました」と語っている。



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そんなGRヤリスはどのように生産されるのか? GRファクトリーはレーシングカーと同じような高精度・高バランスを実現できる専用工場だと言う。一番の特徴はベルトコンベアを用いたライン生産ではなくセル生産方式を採用している事だ。

元々セル生産方式は少人数、もしくは一人で製品を完成させる作業形態だが、GRファクトリーはこれらの工程を分割してそれぞれの工程の間をAGV(無人搬送車両)で繋ぐ。



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これにより「高精度組み立て」と「量産」を融合している。組み付けはトヨタの各工場から集められた精鋭が担当するが、ボディ、サスペンション、アライメントなどなど、正確な位置決めをするためのさまざまな工夫が見られる。ちなみに開発ドライバーを務めた石浦宏明/大嶋和也選手は「性能のためにかなり細かい要求をしましたが、シッカリ製品になっているのは皆さんの努力の結果です」、「試作車10台のばらつき試験をしたが、我々でも『クルマを変えた』といわれなければわからないレベル」とバラつきのなさに驚いたそうだ。



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ただ、ここまで聞くと「社長肝いりプロジェクトだから採算度外視でしょ?」と思う人もいるかもしれないが、ハッキリ言わせていただくが社長はそんな甘くない(笑)。



社会情勢や景気に左右されないスポーツカービジネスを行なうには、ビジネスとして成り立たせること。GRファクトリーも当然、黒字運営できるように設計されている。齋藤さんは「少量生産でもコストを上げない、その実現のための特効薬はありません、とにかく『現地現物』と『TPS(トヨタ生産方式)』を愚直にやることでした」と語る。GRファクトリーはズバリ、大量生産が得意なトヨタの少量生産への挑戦である。

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