富裕層に人気のPHEVなのにRAV4は早々に一時受注停止
6月8日に正式発売となったのが、トヨタRAV4 PHV。ところが発売直後に、“バッテリーの生産能力を上まわる受注があったため”、年度内生産分の販売を終了。その状況はいまも続いている。
これについて事情通は、「RAV4 PHVの月販目標台数は300台です。ただ、トヨタ内部では『もっといける(売れる)のではないか』との意見もあったようですが、最終的に『そんなに売れるわけがない』との意見が尊重された結果、異例の発売直後の販売停止となってしまったようです」と話してくれた。
RAV4 PHVで最上級グレードの価格は539万円。価格設定の高さもあり、「それほど需要がのぞめない」としたのだろうが、それならば完全に需要を見誤ったといっていいだろう。6月といえば、新型コロナウイルス感染拡大により、全国的に発出されていた緊急事態宣言が解除となり、新車販売も急速に回復基調となっていた時期となる。
そのころ販売現場では、「新型コロナウイル感染拡大下でも、収入や身分の安定している公務員、そして元官僚や元大手企業幹部などで、年金生活を送っている富裕リタイア層をターゲットに販売活動を展開している」という話を聞いた。メディアでは観光業や航空会社など、新型コロナウイルス感染拡大で深刻なダメージを受けている業種を頻繁にクローズアップしていたが、すべてのひとが深刻なダメージを受けているわけではない。
また、富裕層は事実上の“鎖国”状態で海外旅行には出かけられないし、感染防止のため高級レストランでの外食もままならず、せいぜいテイクアウトで楽しむ程度となり、お金の使い道が限定される生活を送っていた。そのためもあり、新車購入が注目されていったともされている。
ただ、前述したようにメディアが、感染拡大で“困ったひとたち”を連日紹介しているなかでは、高級ドイツブランドなど、輸入車を購入するのは見た目からも散財している印象を与えやすく、世間体を考えると難しいと考える富裕層が注目したのが、RAV4 PHVやハリアーなのである。通常のRAV4のハイブリッドやガソリンについては、驚くほどは高くなく、それらと見た目が余り変わらないRAV4 PHVは世間からも高級車(高額車)とは見られにくい。
しかしRAV4 PHVは最上級モデルなら500万円を超え、しかもPHEV(プラグインハイブリッド)となれば、一般的には先進性の高いイメージもあり、購入する富裕層の満足感も高いので、“隠れ高級車”として、新型コロナウイルス感染拡大下では、平常時よりも需要は十分期待できたのである。
日本ではHEV(ハイブリッド)やPHEV、BEV(純電気自動車)などは、環境性能の高さもあり、実用性を重視したアピールがされている。BEVなどは家庭の蓄電池代わりに使えることを強調しているのはその好例だろう。しかし、世界に目を向ければ、とくにBEVやPHEVは“金持ちの道楽”的な普及が目立っている。
たとえばアメリカでも電動車普及率の高い南カリフォルニアにおいて、街なかを走っているBEVはテスラが圧倒的に多い。そのほかはBMW i3(レンジエクステンダーもあるが)も多く、テスラやi3ほどではないが、GM(ゼネラルモーターズ)のBOLTも見かける。
日系ではクラリティを日本よりはるかに多く見かける。韓国起亜自動車のソウルベースのBEVや、ヒュンダイioniqなども販売されているが、現地事情通によると「HEVはプリウスをはじめ、フォードなど多くのブランドでラインアップしているので、プリウスならばタクシーでも活躍するぐらい実用車として乗っているひとも多いですが、BEVやPHEVは富裕層の日常の足として使っているケースが圧倒的に多いですね。そのため、街なかで韓国系のBEVを見た時はたいていレンタカーのケースが多いですね」とのこと。
次世代のクルマであるというワクワク感を演出してほしい
タイの首都バンコクでは、高級ショッピングモールの駐車場の店内入口近くに充電施設付きの駐車枠があり、そこに富裕層が高級BEVやPHEVを停めて充電している間にショッピングするのがトレンドとのこと。BEV先進国の中国でも、一般的な実用志向のBEV(中国メーカー製)はライドシェアで使われていることが目立ち、個人所有としてはポルシェ・カイエンや、レンジローバーなど、欧州高級ブランドのPHEVやテスラなどが街なかで目立っている。
中国で改革開放経済をスタートさせるとき、当時の指導者である鄧小平氏は、「先に富めるものから富め」との“先富論”を説いた。
日本はいきなり、「地球環境にやさしい」とか、「災害時に役に立つ」などを全面に打ち出している点で普及を鈍らせているように見える。BEVならではの、今までの内燃機関車と比べ、何が新しく、そしてどこか面白いのかなど、クルマ本来の魅力というものがあまりにもアピールされていない。それどころか、“動かせる蓄電池”のようなイメージが先行してしまっているのも、消費者の注目を浴びない一因となっている。
「とにかくまず乗ってもらおう」と考えるのならば、やはり“格好いい”とか、“お洒落”、“先進的”など、感情面に強くアプローチできるモデルを国内でもラインアップしていかなければ、それ以外の方法で本格普及させるには政策的なもの(内燃機関車販売禁止など)がなければ、遠い道のりになるだろう。
ただ、日本国内では節電の徹底などもあり、余剰電力(電気が余っているということ)が目立っている。電力会社のなかにはBEVの普及促進を図り、余剰電力を減らしたいと、ここのところ路線バスやタクシーなど公共交通機関も含め、BEVの社会的普及に注目しているという話も聞くので、今後は普及に弾みがつく可能性も高い。日本でHEVがここまで普及したのは、HEV専用車として先進性を強くアピールしたプリウスというクルマがあったからこそだったのを、いま一度思い出してもらいたい。

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