トヨタは市場を模索しつつ5ドアハッチバックを多く投入していた
4ドアセダンに始まりFF2BOX、1BOXワゴン、ミニバンと時代に応じて市場の支持を集める車両形態は変化を続けてきたが、なぜか注目を浴びない車型があった。5ドアハッチバックである。セダン型乗用車の落ち着きとワゴンの荷室ユーティリティを兼ね備えた5ドアハッチバック車は、ヨーロッパ市場では安定した人気を持つ車型のひとつだが、日本では各メーカーがトライするも、注目されることなく姿を消すケースが大半だった。
使い勝手に優れたスタイリッシュな乗用車と受け取れる反面、セダンが持つフォーマル性に欠け、ワゴンが持つ絶対的な荷室スペースにはおよばないという、どっちつかずの印象が強かったのかもしれない。ここでは、内容的には申し分なかったのに、いつしか姿を消してしまった5ドアハッチバック車に目を向けてみた。
1)トヨタ・コロナ
5ドアハッチバックといえば、まずまっ先に名を上げなければならないのがトヨタだ。トヨタは、1960年代のRT40系コロナにはじまり、歴代コロナで5ドアハッチバックにトライしてきた歴史を持っている。途中、途絶えた時代もあったが、10代目となるT190系まで5ドアリフトバックの名称でラインアップに加えていた。
2)トヨタ・オーパ
残念ながらコロナは、11代目のT210系でその長い歴史にピリオドを打つことになったが、5ドアハッチバックモデルとして2000年に新型車Opa(オーパ)をリリース。セダン型をベースにした5ドアハッチバック車ではなく、V50系ビスタをベースとする車両で、車両全高を1500mm強に設定することで狭苦しさ感を排除。ミニバンがファミリカーの主流となりつつある時代背景で、室内空間の広さは重要なテーマとなっていたからだ。
エンジンは1.8リッターと2.0リッター、FFと4WDの駆動方式を用意して、十分な荷室スペースも持つ小型5ドアハッチバック車としての需要を狙ったモデルで、ワゴンと解釈してもよかったが、市場の趨勢はミニバン志向でヒット作にはならなかった。
もっとも、市場の開拓(調査?)を積極的に試みるのはトヨタの伝統で、この時期いくつかの5ドアハッチバック車が投入されていた。1.5~1.8リッタークラスをカバーするカローラ・ランクス/アレックス、2.4リッターと3.5リッターで上級クラスを狙ったブレイド、そして両者を整理統合しながら発展したオーリス、現在にいたる1.2リッターターボと1.8リッターハイブリッドのカローラスポーツと、ミニバンかSUVかというカテゴリーの2極化が進むなかで、市場を模索しながら投入車種を決定しているような動向が見られる。
実用性には優れていても陰に隠れてしまったモデルも存在
3)日産プリメーラ
一方、5ドアハッチバックで一時代を築いたのが日産プリメーラだ。とは言っても、日本ではなく欧州市場でのことである。初代P10型(1990~1995年)から2代目P11型(1995~2001年)、最終型となる3代目P12型(2001~2008年)まで、1.8リッターから2.0リッタークラスを受け持つ4ドアセダン/5ドアワゴン/5ドアハッチバックの3車型を用意し、ヨーロピアンテイストの走り味(とくに初代)が注目されるモデルだった。
しかし、日本での主力は4ドアセダンだった。
4)スズキ・エリオ
居住性を確保した5ドアハッチバックという視点で言うなら、スズキがリリースしたエリオ(2001~2007年)も優れたモデルだった。ただ、これも国内より海外での需要を見越した車両で、販売計画では海外3000台/月、国内1000台/月が目標のモデルだった。スズキは、軽自動車のトップランナーとして知られるメーカーだが、普通車でもカルタスワゴンといった完成度の高い車両を上梓するなど、商品作りに長けた側面を持っていた。
エリオは、まさにそうしたスズキの商品企画が生み出した車両で、プラットフォームはエリオ専用に新設計されたものだった。実用性に重きを置き1.5リッターと1.8リッターの二本立てでシリーズを構成。当初は5ドアハッチバック車のみの設定だったが、後に4ドアセダンが追加された。車両全高は1550mm(5ドア)/1545mm(4ドア)と通常の乗用車より高めの設定で、室内空間の広さを意識した車両性格がうかがえた。
5ドアハッチバックは2001~2006年まで生産され、その後はSX4にバトンタッチ。ユーティリティの高い5ドアハッチバックよりスポーティでワイルドな感覚のSUVに路線転換したかたちになっていた。
このほかにも、小型トールボーイワゴンあるいは小型FF2BOXの5ドア仕様として、ダイハツYRV(2000~2005年)やホンダ・ロゴ(1996~2001年)など、意欲的なモデルもいくつか商品化されたが、いずれも1代限りでモデルは消滅。ミニバン化、SUV化の波が押し寄せるなかで、実用的な車両性格の5ドアハッチバック車が生き延びる道は、かなり狭いものとなっている。

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