ミッションオイルが冷えて固くなるとギヤが入りにくくなる
冬の寒い朝、人間だってベッドから出たくなくなるように、クルマもガレージから出たくなくなる。ガラスには霜が降りて、エンジンは冷え切ってなかなか水温が上がらないので、ヒーターから温風が出てくるまで時間がかかる。
そして極めつけがミッション。
それは一言でいうと、低温でミッションオイルが固くなっているため。
MT車のトランスミッションには3本のシャフトが通っていて、ひとつはクラッチからミッションケースにつながるインプットシャフト。もうひとつはミッションからプロペラシャフト、ドライブシャフト、デフにつながっているアウトプットシャフト。そしてインプットシャフトとアウトプットシャフトの間にあるカウンターシャフトという構成だ。
インプットシャフトとアウトプットシャフトは、カウンターシャフトを介してつながっていて、それぞれのギヤは常時噛み合っており(常時噛合式)、シフトレバーに連動して動くスリーブが入ったギヤだけ固定されて、アウトプットシャフトと接続される仕組みになっている。
逆にいえば、ニュートラル状態では、アウトプットシャフト側のギヤはつねに空転していて、アウトプットシャフトそのものは、走行中タイヤの回転に合わせて回っている。

2本のシャフトの回転差が大きくなるとギヤが入りにくくなる
一方、カウンターシャフトはクラッチがつながっているときは、エンジンの回転に合わせて回っているが、クラッチが切れると慣性だけで回ることになる。
このとき、ミッションオイルが冷えて固くなっていると、ミッションケース内を満たしているオイルの抵抗が大きく、カウンターシャフトが止まってしまう……。
その結果、カウンターシャフトとアウトプットシャフトの回転差が大きくなりすぎて、シンクロナイザーでも同調しきれなくなって、ギヤが入りにくくなるというわけだ。
標準的なミッションオイルは、75W-90の粘度だが、氷点下まで冷えたときなど、極端にいえば蜂蜜のような固い粘度に! 走り出して5~10分もすれば、油温も上がって普段の粘度に戻るので、シフトもスコスコ入るようになるが、オイルが温まるまでは、無理やりギヤを入れたりせずに、“ダブルクラッチ”などを駆使したほうが、ミッションには優しい。

ちなみにクルマが停止しているときは、ドライブシャフト・プロペラシャフトも止まっているので、ミッションのアウトプットシャフトもストップ。クラッチを切ればカウンターシャフトも止まるので、回転差は生じず、オイルが冷えていても停車時だと1速(とリバース)には難なく入る。
またミッションオイルが温まらないということは、水温もエンジンの油温も、タイヤもブレーキもベアリングもダンパーもブッシュ類も全部冷えたままでもあるので、真冬はエンジンをかけたらすぐにクルマを動かして、ゆっくり丁寧に走りながら、各部のウォームアップをしてあげよう(停止したままアイドリングで暖機運転を続けるのは無意味で不要)。
