社会環境によって道交法の実効性には差がある

世界各地の国や地域によって、道路状況、社会慣習、そして民族性などが違うのは当然だ。



そのなかで、自動車の運転に関する法律は、国や地域それぞれで取り決められているが、それを日本を軸足として単純に厳しいか、それとも緩いかという判断をするのは、とても難しいと思う。



たとえば、GDP(国民総生産)が低い経済発展途上国と日本を比べると、そもそも国民の生活環境が厳しい場合が多く、現実的に道路交通に対する法律が上手く使われていないという解釈をせざるを得ない場面もある。



各国の生活状況を具体的に紹介するのは控えるが、交通の実例としてインド北部の場合、新設された片側3車線の高速道路では、まるで5~6車線あるかのように走行する場面に何度も出くわしている。むろん、これを取り締まろうとする動きはほとんどなく、社会慣習として織り込み済みとみるしかない。



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さらにインドの話で、地域によっては、一般道を牛がゆっくりと歩いている場面もけっして珍しくない。牛は聖なる存在であり、交通を妨げているとはいえない。



そうしたインド、また東南アジア各所、さらに中国では、一方通行を平気で逆走する二輪車がよくいるが、それを取り締まっている場面には出くわしたことがない。



また、日本のテレビ番組で海外面白事情としてよく登場するように、積載規定量を大幅にオーバーした状態で走行する二輪車や四輪トラックが多く走っている国や地域も珍しくない。

荷物だけではなく、二輪車一台に大人二人に子ども三人といった状態で走っているケースも日常茶飯事だ。



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こうしたさまざまなシーンを客観的にみると「日本だったら、とんでもない道路交通法違反だ」と思うが、各国や各地域の現地にいると、最初は少し驚くが、しばらく過ごしているうちに「これはここの当たり前」という意識に変わっていく。



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スマホ「ナビ」の扱いは欧米のほうが許容気味

先進国でも日本との差を感じる場合がある。たとえば、車内でのスマホの取り扱いについてだ。



日本では車内でのスマホ使用や、車載器や後付けカーナビなどの画面を注視することに対して、罰則規定が2019年12月に強化されたことは記憶に新しい。



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欧米でも、車内のスマホ使用については日本と同様に厳罰化の動きがある一方で、スマホのカーナビ利用については、取締りが少し緩い印象がある。

スマホのカーナビ利用は、日本でも同様に欧米では若い世代で多いが、欧米では中高年でも利用するケースが多い。



なぜならば、そもそも欧米では中小型車では車載カーナビの普及が日本に比べてかなり低くかったため、スマホ登場前までは、オランダのTomTomやアメリカのガーミンなどのPND(パーソナル/ポータブル・ナビゲーション・デバイス)など簡易的カーナビが主流だったという、社会背景がある。



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道路交通法、それ自体は国連加盟国間での共通認識があるなど、法的な内容に大きな違いはなくとも、社会環境によってその実効性には差がある。それが、各国や各地域を巡っての実感だ。