トヨタの新車購入でスズキを競合車にするひとが増えた
インターネットの普及に伴い、実際に新車購入のアクションを起こす前に、メーカーのウェブサイトで商品情報を得ながら、購入車種を絞り込むのが一般的となっている。ウェブサイトでは見積りシミュレーションもできるし、ローンの試算までできてしまう。つまり、いまどきは実際に新車購入へ動き出す時には、購入本命車種を決めているので、ライバル車をたくさん用意し、ゴリゴリ競り合わせて値引き拡大を進める“昭和の新車購入”は少数派になっているとのこと。
トヨタ・ノア系(ヴォクシー、エスクァイア)とセレナ、ステップワゴンや、見た目以外スペックはほぼ共通となる軽自動車などでは、ライバル同士を競り合わせても効果が期待できそうだが、そもそもゴリゴリ競り合わせても効果が期待できるような、“ガチ”でのライバル関係そのものが成立しにくくなっているのもまた現状である。
「トヨタでは2020年5月から、一部を除き全店で全車種の併売化をスタートさせたこともあり、他銘柄(他メーカー車)と商談で競り合うことはほとんどなくなりました」と話してくれたトヨタ系セールスマンであったが、「それでも最近はスズキのモデルと比較検討されるお客さまは目立ちますね」とのことであった。
当のセールスマンも、日産やホンダのクルマをお客から持ち出されることがほぼなくなっているなかで、スズキ車が引き合いに出されることに少々驚いているそうだ。このセールスマンによると、ルーミーを検討しているひとがソリオを、ライズを検討しているひとがクロスビーをそれぞれ比較しているお客が目立つようである。
ルーミーとライズといえば、ダイハツからのOEMでありながら、いまやトヨタを背負って立つような存在と言ってもいいほどの超人気モデルとなっている。ただ、興味深いのはルーミーの発売が2016年11月なのに対し、いまのようなオリジナルスタイルとなった2代目ソリオは2010年に発売。そしてライズが2019年11月発売なのに対し、クロスビーは2017年12月に発売となっている。
軽自動車販売で激しくスズキとバトルを繰り広げるダイハツが開発および生産を行っていることもあり、「スズキで気になるクルマがデビューした」といって、ルーミーやライズ(ダイハツではトールとロッキー)が登場したわけでもないだろうが、スズキとトヨタ(ダイハツ)の商品開発現場においては、同じような“感覚”や“価値観”があるように見えてならない。
世界的には3ナンバーサイズのスイフトを国内モデルだけ5ナンバーサイズにするなど、国内市場に接する姿勢はトヨタ(現行カローラはサイズダウンし事実上国内専売に近い)と似通って見える。
電動化モデルがあるのは強みだが……
ただ、いかんせんブランドパワーやセールスパワーの差もあり、先駆者であるスズキよりトヨタが注目されてしまい、いまの“大化け”状況となってしまっている。
スズキ系ディーラーのセールスマンも、「トヨタさんは、やはりすごいですよ。ルーミーをあそこまで売ってしまうんですからね」としみじみ語ってくれた。
クロスビーは、月販目標台数2000台に対し、デビュー後暦年での年間販売台数ベースで初めてフルカウントとなった2018暦年締め(ライズはいなかった)年間販売台数は3万624台(月販平均台数2552台)だったものの、2020暦年締めでは1万5546台(月販平均台数約1295台)となっており、ルーミーよりも大ヒットとなったライズの影響を、少なからず受けているのが現状のようにも見える。
ソリオについては、現行モデルではルーミーをかなり意識したようで、販売現場で車両説明を聞くと、「ルーミーに比べて~」という説明をセールスマンから多く聞くことができた。メインのパワートレインは、ルーミーにはないマイルドハイブリッド採用と差別化している。ダイハツにはいまのところ電動パワートレインは存在しないし、ダイハツからのOEMなのでTHS(トヨタのハイブリッドシステム)が搭載されることはまずない。
ストロングハイブリッドをやめ、マイルドハイブリッドメインにしたところにもスズキらしさを感じる。「スズキはトヨタに比べると、装備を奢っているとお客さまからお声をいただくこともあります」とは現場のセールスマン。
大ヒットしたライズだが、販売現場で聞くとクロスビー云々は抜きにしても「ハイブリッドはないの?」とお客に聞かれることが多かったとのこと。いまは「ヤリス クロスにはありますよ」と振れば、たいていはヤリス クロスを購入する(ヤリス クロス大ヒットの一因)ようだが、ルーミーでもそこが(ハイブリッドがない)唯一の泣き所のようである。ただ、ソリオが1.2リッターなのに対し、ルーミーは1リッターとなっているので、自動車税が安くなるというのは逆にソリオに対する攻めどころとなっているようだ。
いまや、軽自動車を除けば、国内市場をより強く意識したモデルをラインアップしているのは、トヨタ(ダイハツ)とスズキぐらいとなっている。ただ気になるのは、先日スズキの鈴木 修氏が会長を退任すると正式発表したこと。
鈴木会長が一線を退いたあとも、販売現場に寄り添ったモデルの投入が続けられるのか、そこがいま気になってならない。ただ、業販比率の高いスズキでは、業販店の声というものが新車開発で重視されているようなので、余計な心配となることを願いたい。

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