椅子感覚の自然な姿勢で座れる高齢者にオススメのシートも!
小さな軽自動車の後席のかけ心地に過大な期待を寄せるのは間違い? たしかに軽自動車の多くは前席優先のパッケージだった時代もあったが、スーパーハイト系やハイトワゴン系といった、背の高い軽自動車が主流になってからは、軽自動車でも後席の重要度が増し、だからこそ、後席に赤ちゃんを乗せるような子育て世代に絶大なる信頼を得ているのだ。
では、軽自動車の後席を諦めずに!?済むクルマの条件とは、どんなものだろうか。まずは空間だ。
そしてプロの目線で見れば、シートの座面が長いほうが、太ももの密着度が高まり、たとえば公園のベンチに座っているような座面の短いシートより快適だ。そしてかなり重要なのが、フロアからシート座面までの高さ。ここが低いと、いわゆる体育座りのようになり、腰だけで体重を支えるため、長時間の着座では疲れがち。その点では、天井の高いクルマのほうが、シートを高くセットしやすく、結果的に椅子感覚の自然な着座姿勢になり、乗り降りもしやすくなるのである。
また、シート下に燃料タンクの出っ張りがあると足が引けず、不自然な着座姿勢になり、降車時、立ち上がりにくくなる。いすに座った状態で、足を投げ出した状態だと、立ち上がれないのと同じ理屈である。
そうした点を考慮すると、やはりスーパーハイト系、ハイトワゴン系の軽自動車が有利だ。
中でも2009年から2014年まで製造された、ダイハツ・タントのリヤヒンジドアモデルの「タント・エグゼ」は、大人のタント、軽にくつろぎという革新……というキャッチフレーズで登場しただけに、シートにも徹底的にこだわった1台だった。

シートは「グラマラスシート」と呼ばれ、十分なシートの厚みが与えられ、後席を含む全席で座り心地のよさをアピールしていた。シートのフロアからの高さも約15mm高められていたから(室内高は20mmUP)、シートそのもののかけ心地の良さに加え、乗り降りのしやすさという点でも(両側スライドドアには敵わないにせよ)、魅力的だったというわけだ。今では中古車でしか手に入らないが、大人のスーパーハイト系軽自動車を望むなら、探してみる価値はありそうだ。

1)ダイハツ・タント
現在、新車で手に入る軽自動車のなかで、後席の乗り心地(居心地)に優れているのは、やはりスーパーハイト系のダイハツ・タントだ。

先代モデルの後席のかけ心地がイマイチだったことから、後席のかけ心地にこだわり、ふんわりとしたソファ感覚とやや前上がりの座面(欧州車の後席もそう)によって、太もも部分のサポート性は良好。しかも、フロアからシート座面の高さは約360mmと高く(先代は330mm)、椅子感覚の自然な姿勢で座れ、立ち上がりやすさも文句なし。足腰が弱ったシニアにもうってつけの後席と言える。

軽であることを忘れさせてくれるほどの快適感をもつモデルも
2)ホンダN-BOX/スズキ・スペーシア
では、タントと同じスーパーハイト系のホンダN-BOXやスズキ・スペーシアはどうかと言えば、フロアからシート座面までの高さはN-BOX355mm、スペーシア360mmと同等。しかし、シート座面が比較的水平に近く、かけ心地の良さではタントにややリードされてしまうのだ。

ただし、すでに説明した、シートからの立ち上がり性では、センタータンクレイアウトによって、後席スライドが最後端位置でも足が引ける、後席下に燃料タンクのないN-BOXが優位に立つ。もっとも、タント、スペーシアも、後席スライド機構を使って、後席を前に出せば、足を引くことができるから心配はいらない。

3)ホンダN-WGN
そうそう、スーパーハイト系でなくても、後席の乗り心地、かけ心地に優れた軽自動車がある。それはホンダN-WGN。新型N-WGNのシートは基本的にN-BOXのフレームを使っているのだが、前席はもちろん、後席のかけ心地もN-BOX以上に抜群で、ドーンと腰を下ろしても底づき感がなく、ゆったりとしたソファ的なかけ心地を実現している。

その理由は、N-BOXに対してシート表皮の伸び率を25%高め、ウレタンの硬度を5%ダウンさせ、なおかつ、座ったときに硬く感じるフレームを人から遠ざける配置にしてあるからである。N-WGNの後席に座っていると、ハイトワゴン系ならではの空間の広さとともに、軽自動車の後席に座っていることを忘れさせてくれるほどの快適感が得られるのである。

4)スズキ・ハスラー
加えて、スズキ・ハスラーの乗り心地は、もはや軽自動車の域を超えたものと言って良く、荒れた路面、段差でもフラットライドに終始。スタッドレスタイヤを履いて軽井沢を往復したこともあるけれど、あまりの乗り心地の良さから、まったく疲れなかった記憶がある。

ちなみに、ここで紹介した、後席の乗り心地、かけ心地のいい軽自動車台の後席居住空間についても、紹介しておきたい。身長172cmの筆者のドライビングポジション背後の後席で、シートスライドを最後端位置にセットして座ってみると……。
タントは頭上に270mm、膝周りに355mmものスペースがある。N-BOXは同250mm、450mm。スペーシアは同270mm、340mm、N-WGN同195mm、320mm、ハスラー同160mm、300mmと、ゆとり感が強調されるひざまわり空間ではN-BOXが圧倒する。

また、後席の着座感の良さにかかわるシート座面の長さは、タント500mm、N-BOXとスペーシアが480mm。同じスーパーハイト系の日産ルークスは430mmと極端に短い。ハスラーは490mmである。

というわけで、総合的にはタント、N-WGN、ハスラーなどが、後席の乗り心地、かけ心地の面で、軽自動車としてとくに優れていると言えそうだ(乗降性を除く)。もっとも、走行性能、先進運転支援機能、後席の空調環境、シートアレンジ性などを加味すれば、別の選択肢もアリ、ということになるんですけどね……。