ヘッドライト自体の普及が進みレベライザー機能も自動化
ヘッドライトのオートレベライザーという機能がある。この場合のレベルとは上下の高さを意味する。
ヘッドライトが上向きになれば、対向車の運転者は当然、眩しく感じる。ロービームなのにハイビームになっているような感じだ。
そうした物理的な現象とは別に、「最近、なんだか対向車のヘッドライトがとても眩しい」という話は90年代終盤から巷でよく聞かれるようになった。アフターマーケットで国産車向けのHID(ハイ・インセンシティ・ディスチャージ・ランプ)バルブの売上を伸びてきたころだ。
いま(2021年4月)になって当時を振り返ると、確かにHIDの登場はユーザーにとって大きな衝撃であり、筆者自身もライトメーカー関連の商品比較試乗で、HID登場で夜間走行が劇的に楽になったと驚いた記憶がある。と同時に、対向車に対する配慮の大切さも痛感した。
筆者は当時、ハロゲンライトを装着したドイツ車を日常的に運転しており、手動のオートレベライザーを積極的に使っていたので、「今後、HID化が進むと自動オートレベライザーは必須となる」と思っていた。
その後、量産車では欧州の高級車がハロゲンライトからHIDへシフトする動きが出てきて、それに応じて手動ではなく自動式レベライザーの普及が進み、欧州ではオートレベライザー義務化の動きにつながった。
日本でも、国土交通省が欧州など海外での動向を見ながら、2007年に道路運送車両法の一部改正のタイミングで、自動式の前照灯照射方向調整装置として、オートレベライザーを事実上、義務化している。

その後、皆さんもご存じのとおり、ヘッドライトはLED化が進んでいる。

さらに、欧州・新車アセスメント(ユーロNCAP)で高度運転支援システム(ADAS)の評価項目が増えていくなかで、ハイビームからロービームへの切り替えになっても走行状況に最適な照射範囲を確保するシステムの開発が欧州メーカーでは積極的に進んできた。日本でもNCAPにおけるADAS強化のなかで、欧州と同じようにLEDライトを活用した新システムが次々と量産され、高級車から軽自動車まで幅広く採用されるようになってきた。
オートレベライザーというヘッドライト調整機能の自動化は、もはや単なる高さ調整の領域を超え、ドライバーにも対向車にも、そして歩行者にとって最適な明るさを確保する総合的なシステムになっている。