少しくらいのひび割れは許容範囲で問題なし
タイヤをよく見ると表面に無数のひびが入っているのに気付くことがある。ぶつけたわけでもなく、トレッド面の山は十分にあるのにひびが入ってしまうのは不思議に思うかもしれないが、これは熱や紫外線などによるもので避けられない経年劣化だ。
紫外線はゴムを分子レベルで切断するため、その影響を受ける表面に小さな亀裂が入っていく。
では、このタイヤ表面のひび割れは無視していてもいいのかといえば、そうではない。ひび割れ具合によっては安全な走行に支障をきたすこともある。
とはいえ、タイヤ表面がひび割れていたとしても、ひびの深さが浅い限りは保安基準的にはNGとならない。いわゆる車検においては基本的にタイヤの溝深さについては1.6mmというチェック項目はあるが、ひび割れについては明確な基準がないからだ。
生産から年月が経っていて、経年劣化によりひび割れだらけのタイヤであっても車検は通ってしまうことがある。ただし、タイヤというのはおもにゴムによってグリップを生み出しているものであり、ゴムというのは一種の生ものである。ひび割れの有無にかかわらず生産が古いタイヤというのは、未使用であったとしても安全に走れるコンディションにはないと考えるのが妥当だ。
目安としてはさまざまだが、生産から5年を経たタイヤというのは交換を考慮すべきタイミングになっているといえる。なお、タイヤの生産年月はタイヤ側面(サイドウォール)に四桁の数字で表記されている。たとえば「1021」となっていれば、最初の二桁が第10週を示し、後ろの二桁が西暦2021年であることを示している。つまり3月8日からの週に生産されたフレッシュなタイヤということがわかるのだ。
内部構造にまで達するようなひどいものは要交換
冒頭の話に戻り、タイヤ表面に亀裂やひび割れが見られるとき、どのような問題があるのだろうか。
正直いって、表面に薄くひびが広がっている程度であれば無視してかまわない。紫外線などによりゴム表面が傷むのは設計時から織り込み済みで、ある程度まではタイヤメーカーも使用可能と明言している。とくに、トレッド面の浅いひびであれば走行することでゴム表面が削れることもあって無視していいだろう。

しかし、とくにサイドウォールのひび割れが深くなり、タイヤの骨組といえるコード(カーカス)部に達しているようだと安全ではない。たとえトレッド面の山が残っていたとしても、すぐにでもタイヤ交換すべき状態といえる。

なぜなら、タイヤのサイドウォールやショルダー部分というのはカーカスを保護するために存在しているといっても過言ではない。ひび割れが深くなって、カーカスまで達しているということは、その保護性能が失われているという証拠。もはや設計通りの機能を発揮できる状態でなくなっているのは明らかだからだ。
とはいっても、アマチュアが目視で確認しても、ひび割れがカーカスにまで達してるかどうかはわからないことが多い。心配であればタイヤショップなどでプロのメカニックに確認してもらうという手もあるが、目視でひび割れが深く見えるようであれば、プロの見立てでNGといわれてもおかしくない。交換前提で予算を組んでいたほうがいいだろう。
結論をまとめると、タイヤ表面のひび割れというは、亀裂が浅い範囲であればある種の仕様といえるため問題ない。だが、サイドウォールのひび割れが深くなり、タイヤの骨格といえるカーカスに達している場合は、トレッド面のコンディションにかかわらず安全とはいえない。タイヤ交換を考えるべきだ。