Cd値とはいかに抵抗なく空気を流す形状かを示したもの

 クルマの空力特性を表す「Cd値」という言葉がある。自動車誌やカタログなどで目にする機会も多くあることだろう。「数値が小さいほど優れた空力特性」と一般に理解されているCd値について、クルマの空力特性全般から振り返ってみることにした。



 そもそも、Cdとは何の略か、ということになるが、これはDrag coefficientのことで、日本語に訳すと「抗力係数」となる。これを略して「係数:抗力」と表記したものがCdで、同じような略表記は「揚力係数」を表すCl(Lift confficient)などがある。



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 さて、自動車に関わる空力特性だが、走行中の自動車に働く力は、前後方向、上下方向、左右方向の3つの力とそれによって生じる3つの回転力(モーメント=ヨー/ピッチ/ロールの3方向)、計6つの力がある。これら6つの力を総称して「空力6分力」と名付けているが、Cd値は車両の前後方向(厳密に言えば進行方向)に発生する抗力、空気抵抗係数を表したものである。



 自動車と空気抵抗の関係は、じつは思ったより古い時代から着目され、ドイツのアウトバーン(ヒトラー政権下で具体化、1930年代前半)が作られた段階で、高速走行時に空気が進行の妨げになると指摘されていた。このため、空気をスムースにかき分ける流線形(ストリームライナー)が、空気抵抗を小さくする形状として考え出されることになる。



数字は小さいほうがいいけれど「空気抵抗」はそれだけじゃない! 最近新型車で強調される「Cd値」ってそもそも何?

 日本でCd値が注目され始めたのは、1980年代に入って車輌の高性能化が図られた時点で、自動車メーカーはこぞってCd値の小さなデザインが時代のトレンドという訴求のしかたを見せていた。Cd値自体は、簡単にいってしまえば、いかに抵抗なく空気を流す形状かを示したもので、ボディ表面の凹凸が少ないほど空気の流れはスムースになる、すなわちCd値は小さくなるという関係にあった。いま振り返ればおもしろくもあるのだが、小さなCd値でまとめられた車両が、いかにも高性能車という印象を与えていた。



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Cd値だけでは意味がなく前面投影面積と合わせて考えるべき

 たしかに、Cd値が小さくなれば空気抵抗が抑えられるのは事実だったが、車両が受ける空気抵抗には、このほか車両の前面投影面積も関係している。というより、空気抵抗自体はこの前面投影面積とCd値を掛け合わせたものであるため、Cd値自体が優れていても大きな前面投影面積の車両の場合、必ずしも空気抵抗に優れるとは言えないのである。



 現在、Cd値が着目されているのは、より空気抵抗の小さな車両が燃費性能に優れることになり、燃費に優れる車両は二酸化炭素の絶対排出量を少なく抑えられることから、社会環境に合致した車両と見なされる点にある。

こうした流れは、燃費性能を重視する車両、具体的にはHVが市場に浸透し始めてからのことで、フロントノーズ先端からフロントウインドウ、ルーフにいたるまで、ほぼ一直線のラインで駆け上がる3代目プリウスあたりからこの傾向は顕著になってきた。



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 Cd値そのものは、車両の基本デザインに関わることからユーザーレベルで対処することは難しく、むしろ空力対策と考えられるアフターパーツの装着が、Cd値を悪化させてしまう場合もある。現在注目されるのは、左右両ドアに設けられたドアミラーの存在で、これが後方確認モニターに置き換わりドアミラーの装着が保安基準から外れると、Cd値の良化を促すことになる。



数字は小さいほうがいいけれど「空気抵抗」はそれだけじゃない! 最近新型車で強調される「Cd値」ってそもそも何?

ドアミラーの有無自体は大したことではないようにも思えてしまうが、Cd値の良化=燃費の良化、これによって得られる二酸化炭素排出削減の効果という関係から、社会にとっては大きなプラス要素となって働くことになるのである。

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