キャブレター時代には当たり前の出来事だった

始動時にエンジンがかぶるというのは、いまのクルマではほとんど無縁だが、キャブレター時代にはポピュラーな出来事だった。



この『かぶる』というのは、燃料が必要以上に供給されてプラグが濡れてしまう状態を言う。



燃焼室に吸い込んだ混合気を着火させるには、プラグの点火=火花が必要だが、真冬の朝など寒いときに、燃料が濃いめに供給されると、その燃料がプラグを湿らせ、きちんと着火ができなくなる。

これがかぶった状態……。



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キャブレター時代、寒いときにはチョークレバーを引いて、空気の通り道を絞って、エンジンを始動しやすくするのがセオリーだったが、このチョークの調整をしくじったり、エンジン始動後にチョークレバーを戻すのを忘れていると燃調が濃くなって、プラグがかぶり気味になることがよくあった。



ちなみに英語でチョークとは、「窒息させる」「塞ぐ」という意味。プロレスの「チョークスリーパー」のチョークと同じ。



懐かしき「キャブ時代」のトラブルだと思いきや「いまのクルマ」でも起こりうる! エンジンが「かぶる」とは?



極寒のときは空気の密度も濃くなるが、キャブレターはエンジンの負圧で混合気を燃焼室に送り込む仕組みなので、負圧が同じなら、空気密度の濃い/薄いに関係なく、同量のガソリンを吸い上げてしまう。結果として寒いときは、空燃比が薄くなって、火がつきにくくなるので、始動時にチョークを引いて一時的に空気を絞り、着火しやすい条件を作り出していたというわけ。



本格的にかぶらせてしまうと、プラグを外して交換するか、完全に乾かさないと再始動が難しくなる。昔はかぶったプラグをワイヤーブラシで磨いて再利用する人も見かけたが、ワイヤーブラシで磨くと電極が傷つき、トラブルの原因になるので、あくまで応急処置的な対応でしかない!?



現代のクルマでもエンジンのかぶりは起こりうる!

もっとも、平成以降のクルマ=フューエルインジェクションのクルマの場合、プラグがかぶることはほとんどない。なぜなら始動時も走行時もコンピュータが空燃比を最適化してくれるので、プラグがかぶるほど燃料が濃くなることがないからだ。



ただし、例外もある。ひとつは「アクセルペダルを踏み込んだままセルモーターを回した場合」。



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もう一度愛車の取扱説明書を読み直して欲しいのだが、AT車の場合、「ブレーキペダルを踏みながらスタートボタン(エンジンスイッチ)を1回押す」、MT車なら「ブレーキペダルをしっかりと踏み込みながら、“アクセルペダルを踏まずに”クラッチペダルをいっぱいに踏み込んで、スタートボタン(エンジンスイッチ)を1回押す)」と書いてあるはず。



どこにもアクセルペダルを踏んで、スターターを回せと書いていないのに、アクセルペダルを踏みながらスターターを回すと、燃料が必要以上に吐出され、プラグがかぶる原因に。



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もうひとつは、エンジン始動直後に再びエンジンを止めてしまったとき。



エンジン始動時は基本的に濃い目の混合気が送られるので、そのガスが燃焼しきらないうちにエンジンを止めると、プラグをかぶらせることがある(とくに寒い日)。



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そうしてプラグをかぶらせてしまった際、スターターを回してもう少しでエンジンがかかりそうな気配があれば、アクセルペダルをパタパタと踏んだり戻したりするとかかる場合があるが、数回試してダメだったときは諦めてJAFを呼ぶことにしよう。

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