この記事をまとめると
■ミニバンとはアメリカから入ってきた言葉■日本ではミニバンという言葉が使われる以前から同ジャンルのクルマが存在した
■ミニバンとは何か? といまの日本のミニバン市場について解説する
日本のミニバンの歴史は1980年代からスタート
日本の乗用車市場においてミニバンは重要なポジションを占めている。他ジャンルを選ぶ人もいるが、とくに子育て中のファミリー層にとってはいの一番に選択肢に上がるのがミニバンといっても過言ではないだろう。今回はミニバンの歴史から現在の人気車種までを振り返ってみたいと思う。
■ミニバンとは
ミニバンという名前を聞くと「小さい」を意味する「MINI(ミニ)」と商用車を意味する「VAN(バン)」を繋げた単語のように思う人も多いだろう。だがよくよく考えると、たとえばプロボックスや軽自動車のアルトバンなどに比べてもほとんどのミニバンは小さくないどころかむしろ大きい。ましてやミニバンは商用車でもないので、不思議に思うだろう。
じつはミニバンのバンは、キャラバンを短縮したもので、アメリカ文化からきた言葉なのだ。アメリカでのキャラバンはキャンピングトレーラーを指し、日本の基準でいえば巨大な、フルサイズワンボックスやフルサイズSUVなどの自家用車でキャンピングトレーラーをけん引していた。サイズは全長5m、全幅2mなどの日本では走らせるのに難儀するほどのサイズのクルマたちだ。
その後アメリカで、ひとまわり小さいダッジ・キャラバン、日本でも一時期流行したシボレー・アストロなどが登場して人気に。これがフルサイズに比べれば小さいということでミニバンというジャンルになったのだ。
このアストロは日本にしてみれば大きなクルマであったが、アメリカでの呼び名であるミニバンが定着。日本における似たようなジャンルのクルマがミニバンと呼ばれるようになった。
現在の日本におけるミニバンは、正確な定義こそないものの、基本は6人以上が乗車できる2BOX(居住スペースとラゲッジスペースが1空間)のクルマを指すといって問題はないだろう。それこそ一見矛盾するようだが、LLサイズミニバンやSサイズミニバンなどといういい方もされている。
■ミニバンの歴史
上に述べた6人以上が乗れる2BOXカーがミニバンであると考えると、じつはミニバンという名前が日本に入ってくる前の80年代に、日本ではミニバンがスタートしていたといえる。
そもそも前述したダッジ・キャラバンが1983年、シボレー・アストロが1985年にアメリカで登場し、アストロが日本で流行したのは1990年代である。
日本では、1982年に日産がプレーリーを発売。このクルマは2BOXボディに3列シートの8人乗り仕様が用意され、リヤドアにはスライドが採用されていたので、現在のミニバンの要件を完全に満たしたクルマといっていいだろう。なお、プレーリーに対して日産では当時セダンという言葉を用いていた。このあたりからも、ミニバンという言葉が基本的にはまだ日本で使用されていなかったことがわかる。
さらにプレーリー発売の翌年、三菱からシャリオが登場する。このシャリオは6人乗りと7人乗り仕様が存在する3列シート車で、プレーリーとは異なりドアにはスイング方式(ヒンジ方式)を用いている。これも間違いなくいまであればミニバンだが、三菱ではセダンとキャブオーバーワゴンそれぞれの長所を採り入れた多目的乗用車といった表現が使われていた。
その後1988年にはマツダからMPVが登場、1990年代にはミニバンが一大ブームを巻き起こす。ただしブームといっても一過性のものではなく、現在に至るまでミニバンは一定の人気を誇っているのだ。
1990年代にブームを支えたクルマたちを何台か紹介しよう。
まずは1990年に登場したトヨタ・エスティマである。天才タマゴというキャッチフレーズを使った、丸味を帯びたボディ形状が話題となった7人乗り(発売当初)のスライドドア車だ。
続いては1994年に発売されたホンダ・オデッセイだ。低全高のスイングドアミニバンで、乗車定員は6人と7人仕様を用意。ホンダらしく走りのいいモデルとして大ヒットを果たした。
ホンダからは1996年にステップワゴンが誕生している。現在でいうところのMクラスミニバンで、室内スペースを有効に活用するような四角いボディ形状が特徴。ファミリー層に刺さり、人気モデルとなった。3列シートの8人乗りが中心であったが、2列シート仕様もラインアップされている。
1997年には、日産エルグランドが登場した。いわゆるLクラスミニバンと呼ばれるジャンルで、電動スライドドアや電子制御サスが選べるなど、高級ミニバンのパイオニアともいえる存在だ。現在人気のアルファードが誕生するきっかけともいえる車種である。
ミニバン人気は2000年代に入っても衰えるどころかむしろ加速した印象が強い。2001年にはMクラスミニバンとしていまでも人気の高いノア・ヴォクシー、2002年にアルファードがそれぞれトヨタから登場している。
さらにSクラスミニバンと呼ばれるジャンルも活性化した。これはいわゆるコンパクトカーサイズでスペース効率を追求して3列シート化したもので、2001年にホンダがモビリオを出すと、2003年にトヨタからシエンタ、日産からキューブキュービックが誕生してしのぎを削った。
また、ロールーフで走りに優れたスイングドアのミニバンも、ホンダが2000年にストリームを登場させると、2003年にはトヨタがウィッシュを誕生させ、一定の人気を博した。
本記事の冒頭に記したとおり、こと子育て中のファミリー層にとっては、たとえ4人家族などであっても大は小を兼ねる的に3列シートのミニバンを選ぶケースはいまでも多い。だがここ数年、ブームと呼ばれるほどSUVの人気が高まっていることも事実だ。SUVには、トヨタ・ランドクルーザーやホンダCR-V、日産Xトレイル、マツダCX-8のように3列シートをもつグレードを展開するものもあるが、多くは2列シート車であり、3列シート車でも3列目はエマージェンシーとして考えるような広さのクルマが多い。つまりミニバンの代替車としてではないのだが、悪路走破を想起させる力強い雰囲気や、ミニバンのように生活感を感じさせないスタイリング、高いアイポイントによる運転のしやすさなどでファミリー層にも人気となっている。
日本自動車販売協会連合会の登録車数データで上位20位以内に入っているミニバンとSUVの車種名をみてみよう。
2017年4~9月
4位:トヨタC-HR(SUV)
5位:ホンダ・フリード(ミニバン)
8位:トヨタ・シエンタ(ミニバン)
9位:トヨタ・ヴォクシー(ミニバン)
10位:日産セレナ(ミニバン)
15位:ホンダ・ヴェゼル(SUV)
16位:トヨタ・ノア(ミニバン)
18位:トヨタ・ハリアー(SUV)
20位:日産エクストレイル(SUV)
2021年4~9月
4位:トヨタ・アルファード(ミニバン)
6位:トヨタ・ライズ(SUV)
8位:トヨタ・ハリアー(SUV)
9位:ホンダ・フリード(ミニバン)
10位:トヨタ・ヴォクシー(ミニバン)
11位:ホンダ・ヴェゼル(SUV)
12位:日産セレナ(ミニバン)
13位:トヨタRAV4(SUV)
14位:トヨタ・シエンタ(ミニバン)
17位:トヨタ・ノア(ミニバン)
19位:ホンダ・ステップワゴン(ミニバン)
20位:トヨタ・ランドクルーザー(SUV)
当然モデルチェンジのタイミングによって販売台数は大きく左右されるため、あくまで参考となるが、上記をみればSUVに勢いがあることは読み取れるものの、けっしてミニバン人気が衰えたわけではないことがわかるだろう。
むしろ、他ジャンルのクルマが、ミニバンやSUVにとって代わられたと考えるのが自然である。
替えの効かないミニバンだけの魅力がある
■ミニバンの良さとは?
①なんといっても車内空間の広さ
ミニバンのミニバンたるゆえんは、基本的には車内が広いことであろう。前述したとおり、Sクラスミニバンと呼ばれるものから、LLクラスミニバンまで、多彩車車種が揃っている日本市場ゆえ、絶対的な広さはクルマのクラスによってまったく異なる。しかしたとえばSクラスミニバンでいえば、同クラスの2列シートをもつコンパクトカーに比べて室内の開放感がある。
これは背が高く、低床フロアを採用するクルマが多いためで、空間としては縦方向に広く、またそれに合わせてシート形状等を工夫し、足を前に投げ出すのではなく下に降ろすように座るものが多く、乗員が広さを観じることができる。
当然、全長と全幅が同じようなクルマであれば、車内として捉えられるフロア面積は同じようなものとなる。だがミニバンは、左右及び後ろ側のボディが垂直気味に立っているモデルが多く、前後左右からクルマを眺めたときに、台形気味の他モデルに比べると三次元の空間が有効に使えるのだ。
ラゲッジスペースはどうだろうか? こちらも広いモデルが多い。注意が必要なのは、基本的に3列シートを備えるため、同じフロア面積の2列シート車に比べて全列を使用した場合はラゲッジのフロア面積は狭い。だが、ほとんどのモデルが3列目シートを跳ね上げたり、床下に収納できるなどのアレンジ機構を備えるため、2列シート状態で考えると、先ほどの直方体気味のボディ形状と、そもそも縦方向に背が高いモデルが多いために広く使えるのだ。また、直方体に近いラゲッジスペースのため、荷物が積みやすいということも挙げられる。
加えて、長尺物を積む際、ミニバンには2列目席にキャプテンシートと呼ばれる左右独立のシートを採用するモデルも多数あるため、そうした車種であれば荷室から1列目席まで突き抜けるように置くことができる。こうした点もミニバンならではの利点といえるだろう。
②乗車人数の多さ
クルマには乗車定員が決められており、それを超えて人が乗ることは違法となる。
③乗降性のよさ
さきほど、2021年の4~9月の登録台数ランキングの上位20位に含まれるミニバンとSUVを挙げたが、そこに入っているミニバンはすべてリヤドアがスライドドアのモデルだ。スライドドアは、ボディを横から見た際、前方斜めからも、後方斜めからも、垂直にもエントリーできる。
また、小さいお子さんや高齢者などは、フロアやシート座面に手をついて頭から乗り込むことができるなど、乗車の態勢に自由度が高いのだ。それゆえ、2列目席への乗車が、スイングドアモデルに比べると高いといえる。
④アウトドアにも便利
ミニバンには1列目席の間を通ることができる、ウォークスルー機能をもったクルマが多いため、前席と後席の移動が車内で行える。たとえば雨の日に、運転席や助手席の乗員が後席へと移動、その広い空間を利用して雨具の準備をするなども可能だ。
アウトドアシーンで考えると、1列目から3列目シートまでを倒し、フルフラットと呼ばれるベッドのような状態を作ることができるクルマも多い。
■今人気のミニバン5選
①トヨタ・アルファード
新車価格帯:359万7000円~775万2000円(特別仕様車除く)
中古車価格相場:200万円~850万円
上記の販売ランキングにもあるとおり、圧倒的な人気を誇るのがトヨタ・アルファードだ。まずボディサイズはLLクラスと呼ばれる大きなものだが、当然国産車であるために通常使用していて取り回しに難儀することはない。
そしてアルファード最大の特徴は、なんといってもその豪華さだ。ショーファー的に使われるケースも多く、非常に広い室内に加えて、2列目シートは4パターンから選択することが可能。もっとも豪華なエグゼクティブラウンジシートは、パワーオットマン、小物入れやカップホルダーが付いたアームレスト、暖めることも冷やすこともできる快適温熱+ベンチレーション機能などが付き、飛行機のビジネスクラスのような快適さが味わえる。
エンジンは2.5リッターと3.5リッター、さらにハイブリッドをラインアップ。とにかく豪華さを求める人はアルファードを選べば間違いないだろう。
②ホンダ・フリード
新車価格帯:199万7600円~327万8000円(ModuloX含む)
中古車価格相場:120万円~300万円
Sクラスミニバンとして人気を誇るフリード。現行モデルは2代目となるが、初代が登場した2008年から、累計で100万台を突破したモデルである。家族のためのミニバンとして考え抜かれたパッケージで、低床フロアによって地面からわずか390mmの位置にステップがあるため、高齢者も子どもも乗り降りがしやすい。
パワーユニットにはハイブリッドと1.5リッターガソリンを用意。6人乗りと7人乗りが設定されるが、フリード+という、2列シート5人乗りのモデルもラインアップする。走りを重視したModuloX、SUVルックのクロスターなどバリエーションの豊富さも特徴だ。
③トヨタ・ノア&ヴォクシー&エスクァイア
新車価格帯:255万6400円~337万9200円(特別仕様車除く)
中古車価格相場:100万円~350万円
Mクラスで人気が高いモデルが、トヨタの3モデルだ。この3モデルは兄弟車であり基本的には同じクルマといっても問題ないだろう。以前はカローラ店、ネッツ店、トヨタ店、トヨペット店と販売チャンネルごとに販売車種が分かれていたため、こうしたラインアップが揃っているのだ。現在は、全車種全店取り扱いとなっているため、車種統合が進み、エスクァイアとヴォクシーはグレードが少なくなり、ノアがもっとも充実している。
ノアのボディサイズはグレードによって異なり、いわゆる5ナンバーサイズと3ナンバーサイズが混在する。乗車定員は7or8人で、パワーユニットは1.8リッターハイブリッドと、2リッターガソリンエンジン。走り系グレードのGRスポーツもラインアップする。
ミニバンの王道ともいえる作りで、使い勝手から燃費、走りまでどこをとっても不満のないクルマに仕上がっている。
④日産セレナ
新車価格:257万6200円~419万2100円(AUTECH含む)
中古車価格相場:100万円~420万円
セレナは上記のトヨタ・ノア系のライバルとなるMクラスミニバン。最大のウリは日産が誇る現在の2大技術であるe-POWERとプロパイロットであろう。
e-POWERは1.2リッターエンジンを搭載するが、これは完全に発電用として使われ、駆動は100%モーターで行われるため、電気自動車のような走り味が特徴だ。
プロパイロットはレベル2といわれる自動運転技術で、高速道路などであれば軽く手を添えているだけでステアリング操作をアシストして車線を維持して走行したり、設定車速内で前走車との間隔を維持するようにアクセルやブレーキを操作してくれる装置となる。
ラインアップには上質な内外装がウリのAUTECHも揃う。
■記事まとめ
ミニバンはやはり他のボディタイプでは替えの利かないジャンルだといえる。6人以上で乗るなら当然のこととして、たとえ4人程度の乗車人数でも、シートアレンジ、車内空間の活用性などで、ライフスタイルによっては非常に便利に使えるクルマだといえる。また、最近では走行性能がかなり向上しており、背高なボディ形状だからといって不満の出るような中身ではなくなってきている。

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