この記事をまとめると
■ボンネットの「穴」にはクーリングのためのものと空力デザインの2タイプが存在



■クーリングにはエアを取り込むインテークと熱せられたエアを排出するアウトレットがある



■後付けした補機類がボンネットに干渉しないように膨らみを持たせたパワーバルジもある



スポーツカーのボンネットの穴やコブには意味がある

スポーツカーのボンネットには、何やらいろいろ穴(ダクト)が空いていたり、凸凹の形状になっているものがある。アレには一体どんな意味があるのか。



ボンネットに空いている穴は、クーリングのためのダクトと、ダウンフォースや空気抵抗を減らすためのダクトの二種類に分けられる。



そして、クーリングダクトもインテークとアウトレットの2タイプがあって、穴の向きが前向きなのはインテーク、後ろ向きなのはアウトレットと思えばいい。



エアインテークの代表は、日産GT-Rのボンネットなどにもついている「NACAダクト」。



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NACAダクトとは、NASAの前身、アメリカ航空諮問委員会(NACA:National Advisory Committee for Aeronautics)が開発した、ボディの表面に突起物を設けずに空気を取り入れる、デルタ状(二等辺三角形)の低抵抗の空気取り入れ口のこと。



ボンネットのNACAダクトは、ここから外気をボンネット内に採り入れ、大きな熱源になっているタービンに風を当て、冷却性を高める目的で設けられている。



また、スバルのインプレッサなど上置きインタークーラーのクルマだと、インタークーラーに風を当てるために、大きなダクトがついている。



速さアピールでもカッコつけでもなかった! ボンネットの「穴」や「コブ」の役割とは



一方のエアアウトレットは、フロントバンパーの開口部から入って、インタークーラーやラジエターを通った風を、できるだけ速やかにエンジンルームの外に排出し、水温や吸気温度を下げ、エンジンルーム内全体の熱も抑えられる。



チューニングカーのエアロボンネットにはこのタイプが多く、日産のスカイラインGT-Rをベースにした、NISMOのコンプリートカー、R34GT-R Z-tuneのボンネットなどがその代表。



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うまく使えば強大なフロントダウンフォースが得られる

そして空力デザインとしては、フェラーリF12ベルリネッタのエアロブリッジが有名。



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ボンネットの上を通る空気をボディーサイドに流し、空気抵抗を低減させ、ダウンフォースを発生。CFD(数値流体力学)で5000時間、風洞テストが250時間という本格的な設計で、時速200kmでの走行時に123kgのダウンフォースを発生させる。



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国産車でいえば、無眼がS660用に開発したカーボンエアロボンネットなども、大きなエアアウトレットを配置し、このダクトを全解放すると大きなフロントダウンフォースを発生させ、フロントタイヤの接地性がアップする。



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その他、ダクトではないが、パワーバルジなどの突起物もある。



パワーバルジは、パワーアップのために追加した補機類などが、ボンネットに干渉しないよう膨らませたもので、ハイパワー車の象徴でもあった。



ホンダのCR-Xやシティターボ、日産のフェアレディZ(Z33後期)やトヨタのレビン・トレノ(AE92 スーパーチャージャー)などのパワーバルジが印象的。



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なかには三菱のGTOのように、ボンネットの低さを優先したため、ストラットタワー(+電子制御サス)が収まりきれなくなって、ボンネットの左右に突起を設ける荒技を繰り出したクルマも……。



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普通なら凸凹などない方が美しいはずのボンネットの凸凹も、きちんと意味があるものだとパフォーマンスの象徴としてかっこよく見えてくるから面白い。

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