この記事をまとめると
■重いものを動かすには大きな力が必要なため、クルマの軽量化は燃費・電費に大きく関わる■軽量化に役立つ樹脂素材だが、これまでに車両のボンネットに採用されたことはない
■樹脂素材は耐熱性・耐候性・耐久性に問題があり量産車への採用は見送られてきた
クルマの軽量化は動力性能だけでなく燃費・電費にも超有効!
環境性能のひとつとして、車両の軽量化は不可欠だ。エンジン車であろうと電気自動車(EV)であろうと、軽ければ軽いほど燃料消費も電力消費も改善される。
なぜ軽いことが重要かといえば、車両重量が1トン以下の軽自動車でさえ、停止状態からの発進では燃費が一桁代に落ちる。
軽量化策として、車体を構成する鉄板を薄くし、それでも強靭さを保つため、高張力鋼板や超高張力鋼板が使われる。その使用量は年々増えている。

それとは別に材料置換といって、鉄板ではなく素材として軽い材料で軽量化を行う方法もある。たとえばアルミニウムやマグネシウムといった金属への置き換えや、樹脂の活用だ。樹脂は、石油化学製品であり、これにガラス繊維や炭素繊維を織り交ぜて強化して使う。アルミニウムやマグネシウムのような軽い金属よりガラス繊維を使う樹脂は安価に利用できるので、車体外板の一部に使われる場合がある。
ボンネットフードには耐熱性・耐候性・耐久性が必要
しかし、樹脂はこれまでボンネットフードに使われてきたことはない。それは、耐熱性に限界があるからだ。

身近な家庭用品などで見かける樹脂素材の多くは、耐熱温度が100℃前後で、高熱に耐える樹脂でも200℃ほどだ。そして、やがて融けてしまう。ボンネットフードの下にはエンジンが搭載されており、車体の他の部分より高温になりやすい。したがって、ボンネットフードへの樹脂の利用は、モータースポーツなど特殊な利用以外では耐久性に課題が残る。
また、耐候性といって気象や気候による劣化の課題も考えられる。太陽光や紫外線、酸性雨、温度差などによって、変色やひび割れを起こす懸念が樹脂にはある。以前から前後バンパーには外観の造形を活かす樹脂が使われているが、ボンネットフードに比べてひび割れや塗装の変色などを起こしやすい傾向がある。さらに、エンジンの熱の影響が加わり、温度差が大きくなれば、耐久性はさらに落ちやすくなるだろう。

それでもモータースポーツ用であれば、耐久性や耐候性より軽さが何より重視されるので、安価に軽量化できる樹脂の利用は十分に考えられる。また、塗装の重さも軽減したいため、粘着性のシートを使った配色を行うこともあり、塗装の劣化は気にせずに済む。変形やひび割れが起これば、交換すればよいといった割り切りもできる。
露天の駐車場で保管され、10~20年も利用されることもある量産車では、余分の補修費用を負担せずに済むようにとの視点を含め、車体外板に使われる材料が選ばれることになる。