この記事をまとめると
■昔、クルマの「押しがけ」という言葉をよく耳にした



■「押しがけ」とはクルマを人力で押してエンジンをかけること



■いまやほとんど行う機会はないが、その方法について振り返ってみたい



文字通りクルマを人力で押してエンジンをかけること

クルマの「押しがけ」って知っているだろうか?



「押しがけ」とは文字どおり、スターターを使わずにクルマを人力で押してエンジンをかけること。MT車限定のテクニックになる(ATはトルクコンバーターを使っているので、エンジンと車軸が直結にならないので押しがけできない)。



簡単に方法を説明すると、まずキーをオンの位置にして、ギヤを3速もしく4速に入れ、クラッチペダルを踏んだ状態で車体を後ろから人に押してもらう。



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小走りぐらいの速度(8km/h)くらいまで加速させたら、クラッチペダルを一気につなぐ。エンジンがかかったらクラッチを切って、数回空ぶかしをして、アイドリングが維持できればOK。



いつどんなとき、何のために「押しがけ」をしたのかというと、昔のクルマでバッテリーが弱ってエンジンがかからないとき、あるいはスターター自体が不調でエンジンがかからなかったときのウラ技として使うことがあった。



筆者が学生時代に乗っていたポンコツのTE71(トヨタ・カローラレビン)も、スターターモーターのマグネットスイッチが不調で、ときどき始動に手こずることがあり、坂道を使って一人で押しがけをして切る抜けたことがある……(このときはノーズが山側向きだったので、リバースギヤに入れ、バックで押しがけ)。



昭和のクルマ好きはみんな知っていた「バッテリー上がり」の緊急テク「押しがけ」とは



しかし、レーシングカートですらスターター付きが当たり前になってきた昨今(かつての2ストカートは、押しがけがデフォルト)、乗用車で押しがけというのは基本的にあり得ない。



まずキーを回すタイプではなく、プッシュボタンタイプが標準になっているのと、バッテリーが放電しきっている場合は、ECUや燃料ポンプ、インジェクター、点火系も働かないので、押しがけが通用しない可能性があるからだ。



また、エンジンが停止している状態ではパワステも効かないし、ブレーキブースターも正常に働かないので、それによるリスクも考えるとおすすめはできない。



さらに乗用車のAT率が99%ということを考えると、「押しがけ」は現実的な緊急回避方法にはなり得ないだろう。



というわけで、押しがけの方法自体は知っていても損はないが、もしもエンジンがかからなくなったときは、ロードサービスを呼ぶのが現実的だ(単純なバッテリー上がりなら、ブースターケーブルを使ったジャンプスタートも可)。

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