この記事をまとめると
■1970年代、スーパーカーとしてロータス・ヨーロッパは絶大な人気を誇っていた■実際のヨーロッパはスーパーカーではなくライトウェイトスポーツカーだった
■それでもヨーロッパはフォーミュラカーのような操縦感覚のスーパーなクルマではあった
「サーキットの狼」の主人公が駆る特別なマシン
ロータス・ヨーロッパと言えば、日本では漫画「サーキットの狼」で主人公がドライブしていたことで、スーパーカーブームの中でも特別扱いされた1台。しかし、そのパワーは最高でも126馬力と、当初から400馬力近くを豪語していたランボルギーニ・カウンタックと比べてかなり見劣りする。
それもそのはず、ヨーロッパをスーパーカー扱いしているのは日本ぐらいで、海外ではライトウェイトスポーツとして扱われることが多い。

当時、ロータスにはエランもあったが、こちらはFRPモノコックボディという革新的な構造のエリートの後継車で、GT的な位置づけだった。対するヨーロッパは、現在はケータハムが生産しているセブンに代わるモデルとされた。

セブンが登場した当時は、F1はまだフロントエンジンだったが、まもなくミッドシップに移行していく。そこでミッドシップのヨーロッパを提案したのだ。
正体は軽量な車体を活かした超絶ハンドリングマシン
フレームはエランに続いてバックボーンタイプを採用。後部をY字に開き、中に直列4気筒エンジンやトランスミッションを縦置きした。この部分だけ見ると、たしかに葉巻型と呼ばれた当時のフォーミュラマシンを思わせる。
しかも車名のとおり、当初はヨーロッパ大陸のみで販売された。クーペボディだけとしたのは、高速長距離移動を念頭に置いたため。綴りも「Europa」と、英語ではなくイタリア語やスペイン語のそれとした。

ルノー16に積んでいた1.5リッターOHVエンジンを、トランスミッションもろとも供給してもらったのは、現地で整備がしやすいようにという配慮だった。
ヨーロッパにはS1、S2、ツインカム、スペシャルの4世代がある。ルノーエンジンだったのはS2までで、ツインカムは先にエランに積まれていたフォードブロック+ロータスヘッドの1.6リッターDOHCを搭載。後方視界の不満を解消するために、エンジンフード左右のフィンが削られたことも特徴だ。
そしてスペシャルでは、当時のJPSカラーのF1のように、細いピンストライプがボディに描かれ、エンジンはエラン・スプリントに続き、圧縮比を高めバルブを大径化した、通称ビックバルブ・ツインカムが積まれた。

僕はS1を除くすべてのヨーロッパに乗ったことがあるけれど、S2とツインカム以降では印象は大きく異なる。
S2は加速も音も牧歌的で、まっすぐ走る限りはまるでスポーツカーっぽくないが、コーナーでは激変。軽くて重心の低いボディとエンジン、理想的な前後重量配分、しなやかな足の組み合わせは、マジで底なしだった。それをF1ドライバーのように、路面すれすれの低い場所に座り、上体を大きく傾けた姿勢で味わうのは、まさにフォーミュラフィーリングだった。

それに比べるとツインカム以降は、加速は力強く、音も気持ちよくなり、サスペンションは固められて、身のこなしはソリッドになった。あらゆる面でスポーツカーっぽくなったけれど、個人的にはS2のほうがインパクトは上だった。

スーパーカーとは排気量やシリンダー数や最高出力やトップスピードなど、スペックがすごいスポーツカーのことを指すと個人的に思っている。