この記事をまとめると
■日本だけでなく世界各地で原材料高騰による新車の値上げが行われている■日本では「値上げは悪」というイメージがあり、日本メーカーは価格維持を優先する傾向にある
■許容範囲内での値上げで納期遅延が改善されるのであれば値上げを受け入れてもいいのだはないかと考える
為替の変動で輸入車は価格変更を行うことがある
先日フランスのテレビニュースを見ていると、フランスでもサプライチェーンの混乱による自動車産業への影響が大きいとのトピックを扱っていた。状況は日本と似たようなもので、深刻な納期遅延が発生しているという。長いと半年ほど待つことになるとのことなので、若干日本より状況は“マシ”なのかもしれない。
しかし、次のリポートに耳を疑った、“新車価格が値上がりを続けている”というのである。リポートによると、値上がり幅はブランドやモデルによって開きがあるものの、もっとも値上がりがひどい例では、いまのような状況になる前に比べ、約17万円値上がりしているとのこと。新車の供給遅延を嫌がり中古車に消費者が流れていることや、そのため中古車のタマ不足で価格も割高となっているのも日本と同じような状況であった。
日本国内でも、輸入車は“値上げ”を行う。日本メーカー車では改良のタイミングなどで“価格改定”は行うが、単純な“値上げ”というのは、ほぼ聞いたことはない。輸入車も闇雲に値上げを行っているわけではなく、いまの“非常事態”ならば部材費の高騰などによるものが多いだろう(平時の場合には為替変動への対応によるものが多い)。つまり、収益を圧迫するような事柄が発生したために価格転嫁しているといっていいだろう。
日本では高い料金を支払うくらいなら長期の納車待ちを選ぶ?
一方で、自動車だけでなく、日本企業の多くは“企業努力”の旗印のもと、コストダウンを進めて値上げすることなく、価格維持を優先するとはよく聞く話。
ただ、自動車に限ってみても、たとえば取引先のある部品の供給が滞り、新車生産を甚大に遅延させてしまうとして、“スポット買い”で新規取引先から代用部品を購入すれば、それなりにコストアップになってしまうだろう。
いまの自動車業界では日本メーカーだけでなく、世界の自動車メーカー間で部品の“奪い合い”が起きている。その最たるものが“半導体”である。

ある事情通は「世界の中で日本メーカーの“買い負け”が目立っているように見える」と話してくれた。
ただし、海外メーカーも単純に値上げに走っているわけでもないようで、自社努力でコストダウン上昇分の吸収をはかろうとしているのは日本メーカーと同じ。日本的に言えば“総合的判断”で値上げを行っているようである。
一方で、日本においてはマスコミの「値上げは悪」のような偏向報道が目立つように見えるなか、新車販売で見れば“日本の消費者は値上げするぐらいなら、長期の納車待ちを選ぶ”といった状況になっているように海外からは映るかもしれない。

どちらが正しいのかという問題ではなく、何をしたら顧客満足度がより高まり、企業利益にもより貢献するのかという“視点”の違いからくるものと考える。従来の価格を維持したまま、コスト上昇分を吸収しようとすれば、いまのような“非常事態”では、なおさらどこかに“ひずみ(理不尽な負担/めぐりめぐって給料が上がらないという話もある)”が発生しやすくなるだろう。
ここまであらゆる面で世界的な混乱が起こり、収束まで長期間かかるのを覚悟しなければならない現状下では(収束せずにニューノーマルになる可能性もある)、納期遅延というか“納車がいつになるのかわからない”といった事案も多発しているので、許容範囲での値上げである程度改善するならば筆者は受け入れてもいいと考えるが、日本ではその考え方が“少数派”なので、日本メーカーはそれを選択しない(単純な値上げ)ということになっているのだろう。