この記事をまとめると
■SUVを6輪車にするカスタムが多く存在し海外では人気がある■設置面積を稼げることからパフォーマンス向上に効果があり軍用車でも使われる
■ピックアップトラックの多いアメリカで人気があり、ハイパフォーマンスモデルもある
世界中にある個性派6輪車を紹介
6輪車といえば、昭和40年代生まれは即座に「たいれる」とひらがなの字面まで思い浮かべることでしょうが、ミレニアルとかZ世代にとってはAMGのG63 6×6や、フォードのスーパートラックF450 Super Dutyがツボ。ティレルのF1マシンP34の場合は、フロントタイヤを小径化することで前面の抵抗を減らすことが主な目的でしたが、新世代6輪マシンは果たしてどんなコンセプトがあったのでしょう。
AMGがGクラスのリヤタイヤを4輪に増加しG63 6×6(6輪駆動)としてリリースしたのは2014年のことでした。

そもそもは中東の王族、またはオイルダラーによる特注らしく、正式リリース以前にも6輪化されたGヴァーゲンはあったようです。ご承知のとおり、かの地では郊外=砂漠なので、砂地での走破性、さらにお金持ちならではのこだわり「もっと速く!」がマストオーダー。このうち、走破性についてはタイヤの本数が増えれば、それだけ接地面積が増えてグリップには有利となるはず。

ただ、ホイールベースもタイヤ1本分は延長されることになるので、アプローチアングル、すなわち砂の丘陵なんかに出くわした時は不利。なはずですが、ドバイのランクル砂漠ツアー動画なんかを見ていると「そんなの関係ねー」とばかりにシャシー底面を砂地に潜り込ませ、パワーにものを言わせて脱出してますね。
で、4輪より6輪の方が「速い」のかというと、じつに微妙ではないかと。
仮に同じパワーだとしたら、タイヤ2本分シャーシ、足まわりの重量が嵩むので不利。ただし、砂地という場面では6輪駆動の方が比較的ロスなくパワーを使えるはずなので、もしかしたら「いくらか速い」かもしれません。

いずれにしても、AMGの中東担当セールスマンはどうやって売り込んでいるのか興味深いものです。
ハイパフォーマンス6輪車が流行っている?
ところで、AMG G63 6×6は世界的にSUVの6輪化というトレンドも生み出したようで、柳の下を狙ったクルマがちらほらと。
たとえば、アストン・マーティンのコスメ&チューンブランドの「カーン」がランドローバー・ディフェンダーを6輪化。カーンのブランドネームでなく、チューニングトラック専用ブランド「フライング・ハンツマン」からリリースされ、お値段3000万円程度とAMGの半額以下というお買い得プライス。それでも、シボレー製V8エンジンを搭載して430馬力を発揮するそうなので、少なくともノーマルの超ダルい走りよりは「だいぶマシ」なことでしょう。

が、ディフェンダーの6輪車はなにもこれが最初ではありません。ミリタリーマニアなら先刻ご承知でしょうが、1980年代にオーストラリア軍がJRA(ジャガー・ローバー・オーストラリア)に特注した「ぺレンティ」という6輪駆動マシンがあったのです。
JRAは駆動システムから作り上げ、旧弊なエンジンでは「使い物にならん」とばかりに、いすゞ製ディーゼルエンジンに換装。見事、軍が要求した積載量や速度を達成したのです。もしかすると、フライング・ハンツマンの6輪駆動システムはぺレンティからヒントを得たのかもしれませんね。

柳の下のどじょうはまだまだおりまして、フォードのカッコいいピックアップF-150ラプターを6輪駆動マシン、その名も「ヘネシー・ヴェロキラプター」。

つまり、猛禽(ラプター)を超越しドロマエオサウルスという恐竜の名にちなんだもの。
また、フォードには6輪は6輪でもトラックと同じくダブルタイヤ仕様の6輪車、「デューリー」と呼ばれるスーパーデューティというカタログモデルも存在します。ラプターの上級車種というか、より本格的なトラックシリーズでF-250/350/450と用途に応じてグレードが選べるラインアップ。牽引能力15トンと言いますから、エアストリームキャビンのフルサイズなんか余裕で連ねちゃう感じ。

なるほど、ダブルタイヤ仕様の正しい使い方をしていて、6輪駆動車がなんとなくミーハーに見えてきてしまうのは筆者だけでしょうか。たとえば、荷台にロシア製40トンクラスの鍛造マシンとか、発電所むけ変圧器みたいな重量物を載せて激走してみせてくれたら誰もが納得すると思うんですがね。