この記事をまとめると
■ニュースで高級車のメーカー名をあえて報道する理由を解説■「乗用車」「高級車」というよりメーカー名を出すほうが注目度が集まりやすい
■やりすぎると「報道」ではなく「晒し」になってしまうことが懸念されている
話題作りには欠かせない名詞となってしまっている
連日のように、ネット上では自動車に関わる交通事故のニュースが流れる。
その際、ちょっと気になるのは「〇〇市内中心部の交差点で、フェラーリが激突」とか、「ポルシェに乗った〇代女性が、〇〇駅前の駐車場を出た際に急発進してガードレールを損傷」といったタイトルの出し方だ。
スポーツカー、スーパーカー、そして概ね輸入車の場合に、こうしたモデル名、ブランド名、または企業名が出ることが多い印象がある。
一方で、近年数多く発生している、高齢ドライバーによる逆走や、スーパーマーケットやコンビニに飛び込んでしまうような重大事故の場合、「70代男性が運転する軽自動車」とか「ミニバンタイプの乗用車が」といった表現が多いように感じる。

こうしたニュースの記事化に関して、さまざまなメディアの間で情報共有できるようなガイドライン、または法的な基準が明確にあるわけではないと思う。
だから、事故報道で、スポーツカーのモデル名と、軽自動車や乗用車といった普通名詞での報道がゴチャ混ぜになっているといえるのではないだろうか。要するに、ニュースとしてのインパクトが、ニュースを伝える側にとって重要だということだ。
視聴者や読者に対する、いわゆる「引き」というものだ。
「引き」が良いニュースとは、ニュースの素材が一般の人が考えるイメージとギャップが大きいということだ。
一流ブランドは多くの人の目を引きやすい
たとえば、20代女性が乗るフェラーリと書けば、その女性自身または配偶者の職業や肩書きなどが気になる人が少なくだろう。
テレビ番組でも、コーナーの冒頭に颯爽と真っ赤なフェラーリで登場する若い女性が登場し、スタジオのひな壇芸人さんたちが、「こんな若い子がどうしてフェラーリ?」といったコメントをして番組が進行するのは、昔からよくあるパターンではないだろうか。
エンターテインメント性が強いバラエティ番組ならば、取材対象者が企画内容を許諾すれば、こうした番組構成は妥当かもしれない。だが、前述のように交通事故の報道では、興味本位のニュースになってしまうと、なぜ事故を報道するのかという報道の本質をゆがめてしまいかねない。

そのため、報道機関によって、コンプライアンスの観点から原稿を社内で確認するなど、社内での共通認識を設けている場合もあるだろう。
一方で、周知のとおり、近年はSNSによる個人の文字、写真、映像による投稿が社会に対して一定の影響力を及ぼすようになってきている。
現在の社会情勢の中では、今後も事故関連のニュースとして、モデル名や企業名が出たる場合と、または出ない場合が入り混じってしまうことは避けられないのかもしれない。