この記事をまとめると
■ドイツ御三家と呼ばれるクルマは日本では高級車扱いされることが多い■本国では日本よりも高い金額で販売されていることが多い
■ドイツの所得は日本より高いがその分税金も高いので現地でも高級車となる
日本でいう高級車は現地だと安い?
日本とドイツの経済状況は似ているが、円安の影響もあって円換算にすると、ドイツ国民の平均所得を額面だけで見比べると日本よりも遥かに高い。しかし、付加価値税が19%とあり自動車を購入するにあたって新車・中古車にかかわらず19%が付随するので、円安のいまはアウディ/BMW/メルセデス・ベンツの御三家やポルシェの税込価格は、ある意味日本のほうがお買い得という場合もあるというのは、あまり知られていないのではないだろうか。
「ドイツ車をドイツで買うと国産車なんだから随分と割安で、誰でも買えるのでしょう?」という質問をいまだに受けることがある。
実際にドイツ現地の価格をお知らせすると、その価格に驚かれることも多い。また、ドイツでは中古車市場の取引も活発で、日本のように極端な中古車価格の下落が少ないだけに、中古車でもある程度のステータスの位置付けからは外れ難くなっている。
日本ではドイツ御三家は、一応高級車とされているが、果たして自国ドイツではどんな位置付けなのだろうか。ドイツでは高級車(Luxuswagen)は、ロールス・ロイス/フェラーリ/ベントレー/アストン・マーティン/ランボルギーニ/マセラティ/マクラーレン/ポルシェ/御三家のスポーツラグジュアリークラス等を代表とする車両のことをいい、その下の御三家はプレミアムカー(Premiumwagen)にカテゴライズされるといってよいだろう。日本と比べると、本国の御三家のモデルラインアップはかなり広いこともあり、ひとくくりにするのは容易ではない。
新型コロナウイルスやウクライナの戦争の影響を受けて、2021~22年度から急激に新車価格が大高騰したドイツでは、BMWの1シリーズや3シリーズ、メルセデス・ベンツのA/BやCクラス、アウディのA1/A3やA4クラスあたりは比較的購入しやすい価格帯ではあったものの、もはやそれらのクラスさえもなかなか手を出し難くなったといえる。
むしろ日本のほうが安いくらいに価格は高騰
ADAC (ドイツ自動車連盟)の調査によると、たとえばドイツで長年新車販売数No.1を継続中の庶民の味方のVWゴルフだが、90馬力のもっとも廉価モデルのオプションなし価格は2021年には2万700ユーロ(約338万円)が、2023年には3万1145ユーロ(約509万円)まで値上がりしているという状況だ。他メーカーも、とくに採算が取りにくい小型車の値上がり率が高いという。
御三家のもっともスタンダードなモデルのオプションなしのドイツ国内での新車ベース価格は以下のとおり。
BMW320i セダン:5万1900ユーロ~(約848万円)
アウディA4 :4万1800ユーロ~(約683万円)
メルセデス・ベンツC200:5万3680ユーロ~(約877万円)
日本で販売される御三家には、すでに各日本法人がセレクトした日本人好みのある程度のオプションがパッケージになっているが、ドイツ本国で新車を購入する場合はスタンダードなオプションを追加すると1万~2万ユーロ(約160万~320万円)が、ベース車両にプラスされると予想する。御三家の庶民モデルとされているクラスでさえこの価格であるだけに、たとえ円安による影響があったとしても、誰にでも購入しやすいクラスのクルマではないのは明らかだ。
ドイツ人の2023年度の平均月収は4323ユーロ(約71万円)、年収では5万1876ユーロ(約850万円)と日本と比較すると一見遥かに多いように見えるが、所得税等が非常に高いため、手もとに残る額は驚くほどに減る。また、日本のような通勤・家賃手当等の福利厚生、ボーナスを設けている会社は少ない上、物価や光熱費、家賃等を含めた生活費は日本よりも高いなかで、プレミアムクラスの車両を新車購入、維持するのはなかなか容易ではないのではないだろうか。