この記事をまとめると
トヨタとヒョンデが市販しているFCVだが、その普及には高い壁が立ちはだかる



■固体高分子型燃料電池の生産には高度な技術が必要で、また水素の生成にも多くのエネルギーを必要とする



■国内では150坪の敷地が必要な水素ステーションの普及にも大きな問題が残っている



究極エコカーといわれるFCVだが普及はなかなか進まない

ドイツのBMWは今夏、燃料電池システムの小規模生産を開始したと発表した。メルセデス・ベンツが日本でのGLC F-CELLの販売をやめている一方で、同じドイツを代表する自動車メーカーであるBMWの取り組みは、FCVの取り組みの交錯を象徴するようだ。



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今年から日本市場へ復帰した韓国のヒョンデは、電気自動車(EV)のIONIQ 5に加え、燃料電池車(FCV)のNEXOも販売している。

ヒョンデによれば、NEXOは世界でもかなりの台数が売れているFCVであるという。



トヨタのFCV継続は素晴らしい! それでも「水素燃料電池」の世界が訪れる気配が見えない理由



国内においては、トヨタがMIRAIをモデルチェンジして2代目を販売しているが、日産は固体高分子型での燃料電池開発をやめ、ホンダはクラリティ・フューエルセルの販売をやめている。



トヨタのFCV継続は素晴らしい! それでも「水素燃料電池」の世界が訪れる気配が見えない理由



水素を燃料とするFCVは、究極のエコカーなどともいわれるが、その普及には高い壁が立ちはだかる。



FCVで使われる固体高分子型燃料電池の生産は、精密な工程が不可欠だ。ラップのような薄い膜を何層も積層しなければならない。その精度が燃料電池の効率を左右する。したがって、製造工程は自動化されるのが一般的だ。もちろん、自動車工場は組み立てを除き自動化が進められている。



トヨタのFCV継続は素晴らしい! それでも「水素燃料電池」の世界が訪れる気配が見えない理由



元素のなかでもっとも小さくて軽い水素を70MPa(メガ・パスカル=約700気圧)という高圧で保管するため、カーボンファイバーなどの最先端の樹脂でタンクを製造するにも高度な技術が必要だ。これだけ手の込んだ部品を大量生産するには多大な労力がいる。したがって、価格も高くならざるを得ない。



水素の生成とコスト・インフラの整備など難題が山積み

水素の値段もまだ確定的になっていない。

いま日本で販売されている水素の価格は、同等車種のハイブリッド車の燃料消費を基準に暫定的に算定された値段である。また、既存の水素の多くは、化石燃料を基につくられている。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを使って水を電気分解すれば、脱二酸化炭素の水素が手に入るというが、では、その水はどのような水を使うのか、明確には語られていない。実際には、純水と呼ばれる不純物を含まない水でなければ電気分解できず、純水を作るための装置はあっても、それを稼働させるのにエネルギーがいる。



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世界には、安全な水を利用できない人が数十億人いるとされており、すでに気候変動が起きている現在、干ばつが広がり、容易に水を手に入れられない状況が差し迫っている。まず、人が生きるための飲み水の手配が先であるはずだ。



いずれにしても、水素は一次エネルギーではなく何かから製造しなければならない二次エネルギーだ。そこで、電力を含めエネルギー消費が存在する。



ほかにも、70MPaの高圧で水素ガスを充填するには、より高圧の80MPaまで高めてから充填する必要がある。そこまで高圧にするには、現状では二酸化炭素排出量を増大させ、脱二酸化炭素に資する適正な圧力は35MPaまでとする試算結果もある。



トヨタのFCV継続は素晴らしい! それでも「水素燃料電池」の世界が訪れる気配が見えない理由



国内においては、水素ステーション設置に500平方メートル(約150坪)の敷地が必要とされており、ことに都市部では地価が高いため、台数の限られるFCVのための事業に乗り出すには、損得勘定が成り立ちにくい。



以上のように、未来的な雰囲気のある水素だが、扱いや製造、事業としての採算など、電気自動車(EV)以上に実現には難しさがある。

そこで海外を含め、物流での活用に道を拓く試みがある。しかし、こちらも大型トラックやトレーラーでの過酷な使用条件では、耐久信頼性で厳しいとの声もある。



トヨタのFCV継続は素晴らしい! それでも「水素燃料電池」の世界が訪れる気配が見えない理由



未来への挑戦は大切だ。しかし、原理原則や社会の実態を踏まえたうえでの挑戦でなければ、臍を噛む懸念が残る。

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