都心部では花火が禁止されている場所が多いが、近年では、公園などで時期を限定して手持ち花火を認める自治体も増えている。東京都内では、2023年から2024年にかけて港区など4区が試行的に手持ち花火の利用を解禁し、2025年も3区が新たに期間限定で利用を認めた。

一方で、花火にはトラブルが絶えない。都内在住の40代会社員男性Aさんは、近所の公園で夜中に複数組の若い親子が花火で遊んでいる様子を目撃し、最初はほほ笑ましく思っていたが、父親の一人が市販の打ち上げ花火を持ち出してきて面食らったという。
Aさんが住む自治体では公園で打ち上げ花火を使用することは禁止されているが、父親が持ち出した打ち上げ花火はそのまま発射された。ハラハラしながらAさんが見守っていると、案の定、公園の周囲の建物に住んでいると思しき人がやってきて「迷惑だ」と抗議を行い、反論した若い父親と言い争いをはじめた。最終的には警察まで出動する事態となり、Aさんが当初抱いていた心温まる気持ちもすっかり冷めてしまった。
手持ち花火が解禁されている自治体でも、打ち上げ花火やロケット花火などは小型でも大きな音を立てたり人にケガをさせたりする危険性が高いため、引き続き禁止としているところも多い。ルールを無視してこれらを発射した場合、法律的にどのような問題があるか。

23区で進んだ「手持ち花火」解禁

大田区ではこれまで区立公園での花火を禁止してきたが、今年は夏休み期間中の8月1日~17日、午後6時~8時半に区内52公園で手持ち花火の使用を試行的に認めた。
港区は2023年夏休みに試行的に解禁し、2024年から本格実施している。千代田区、荒川区、杉並区も期間限定で解禁し、今年は品川区や台東区も指定した公園での手持ち花火を認めた。また、足立区や世田谷区など12区では、場所や時間帯の制限はあるものの年間を通じて手持ち花火を認めている。
一方、新宿区、目黒区、板橋区、練馬区は全面的に禁止。板橋区や練馬区では今後の対応を検討しているところだという。

近隣の自治体に目を向けると横浜市、川崎市、千葉市の公園では手持ち花火が利用可能だ。さいたま市は原則禁止としつつ、7~11月、予約制で利用できる花火ゾーンを3カ所、市内に設けている。

横浜市や中野区などは5万円以下の罰金を規定

解禁も進んでいるとはいえ、依然として、花火を禁止している公園は多い。もし、禁止されているのに花火をした場合や、解禁されている区でも許容されているルールから逸脱した行為をした場合は、法律や条例による罰則はあるのか。
そもそも、公園は、都市公園法によって国が管理する都市公園(国営公園)と、地方自治体が条例や要綱によって管理する都市公園及び区立公園、その他の公園(児童公園や町内公園など)に分かれる。
都市公園法では、都市公園を損傷・汚損する行為や、公衆の都市公園の利用に著しい支障を及ぼすおそれのある行為をしてはならないと定めている(同法11条)。この規定に違反した場合には、10万円以下の過料に処される可能性がある(同法42条)。
そして花火の使用は「火気を使用する行為」として、公園の安全や他の利用者への支障を及ぼすおそれがあるため、11条の禁止行為に該当する可能性がある。つまり、許可されていないのに国営公園で花火をすると10万円以下の罰金を科される可能性があるということだ。
また、地方自治体が管理する都市公園で花火をする行為についても、各地方自治体による条例の内容によっては、罰則の対象となる可能性がある。
たとえば、横浜市公園条例では、「花火、キャンプファイヤーなど火気を使用する」(6条7号)行為を市長の許可なく行った者は「5万円以下の過料に処する」(26条)と規定している。滋賀県都市公園条例も火気の使用(4条9号)に対して5万円以下の過料を規定しているなど(15条)、同様の規定をしている自治体は他にも多数ある。
一方で、港区や中野区、台東区など東京23区の区立公園条例の多くでは、「花火」については条例で規制されていない。
しかし、港区の条例では、「公園の管理上支障がある行為」(5条10号)について2000円以下の過料(35条)と規定しており、台東区も同様の行為(4条13号)に5万円以下の過料を規定。加えて、中野区は「他人に迷惑を及ぼす行為」(3条10号)にも5万円以下の過料(15条)を規定している。
都内の区立公園でも、許可されていないのに花火をすることや、手持ち花火が解禁されている公園であっても打ち上げ花火やロケット花火を持ち出し発射することが「公園の管理上支障がある行為」や「他人に迷惑を及ぼす行為」と評価され、過料を科される可能性はあるだろう。

トラブルが発生した場合の自治体の責任は?

ロケット花火が公園のそばを通りかかった人に直撃する、打ち上げ花火が近くの住宅に突っ込むなどのトラブルが起きた場合、被害者は実際に花火で遊んでいた加害者だけでなく、公園の管理者である自治体に責任を問うことはできるだろうか。
損害賠償の扱いについて詳しい早矢仕麻友弁護士によると、公園は「公の営造物」にあたり、その設置または管理に問題があることにより通常有すべき安全性を欠いていたために他人に損害を生じたときは、国や地方公共団体が賠償責任を負うこともあり得るという。
では、直接的な被害が発生していなくても、花火が解禁されている近隣の公園から発生する煙や騒音が迷惑な場合にはどうすればいいのか。このようなケースでは、ただちに法律的な対応を取ることはできないため、まずは状況に応じて地方自治体の担当者などに相談するのが現実的だろう。
子どもたちにとって、花火は夏の大切な思い出を彩るイベントだ。しかし、周囲に迷惑や被害を及ぼすトラブルが発生すれば、その思い出も台無しとなってしまう。解禁されている公園であっても、花火をする側はルールを遵守し、安全と周囲への配慮を怠らないことが大切だ。


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