政府は1月23日、関係閣僚会議で「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」をまとめた。この中には、外国人に対する「生活保護制度の運用の適正化」も盛り込んでいる。
同会議を受けて2月3日には、上野賢一郎厚労大臣が記者会見で、外国人への支給実態を把握していく方針を示した。
人道上の配慮から長年続けられてきた外国人への生活保護の取り扱いに準じた保護。その法的根拠や受給者の実情を紐解くとともに、政府が進める「実態把握」の狙いと課題を整理した。(ライター・榎園哲哉)

“行政サービス”として支給されてきた外国人への生活保護

そもそも、外国人は生活保護を受給できるのか。
生活保護法1条は、下記の通り、この法律の対象を「すべての国民」と定めている。
〈この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする〉
最高裁もまた、生活保護法の対象に外国人は含まれないと判断している(最高裁平成26年(2014年)7月18日判決)。
一方、厚生省(当時)は1954年5月、「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」と題した通知を都道府県知事宛てに送付。この中で、「生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて(中略)必要と認める保護を行うこと」と示しており、これをもとに現在でも一定の類型の外国人に限り、例外的に「生活保護の取り扱いに準じた保護」を行っている。
また、上記最高裁判決も、「行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得る」とし、「生活保護の取り扱いに準じた保護」を認めている。

保護対象は3類型の在留資格保有者に限る

「生活保護の取り扱いに準じた保護」の対象となっている外国人とは、どのような人のことなのか。
同通知では、以下3類型の在留資格の保有者を挙げている。
・身分系在留資格(永住者※1、定住者※2、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等)
・特例法による特別永住者(在日朝鮮人、在日韓国人、在日台湾人)
・入管法上の認定難民
※1:「素行が善良であること」「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」の3つの要件が必要。在留期間は無期限。
※2:法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者。
該当例は第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人等。在留期間は5年、3年、1年、6月または法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)。
このほかの在留資格、たとえば就労資格(就労ビザ)では、「生活保護の取り扱いに準じた保護」の対象とは認められない。

在日韓国・朝鮮の人たちが受給の大半占める

では、現在、生活保護に準じた保護を受けている外国人の内訳は、どうなっているのか。
政府統計などを基に、研究者らが編集・運営する「移民政策データバンク」によると、すべての生活保護利用者(約200万人)のうち、外国人(日本国籍を持たない者)の割合は3.25%(約6万5000人、2023年度時点)で、この10年間は、ほぼ3%台前半で推移しているという。
国籍別では、韓国・朝鮮(50.9%)、中国(16.3%)、フィリピン(14.9%)、ブラジル(5.3%)が上位で、この4か国で全体の約9割(87.4%)を占める(2023年度時点)。
外国人の生活保護受給について詳しい一般社団法人「つくろい東京ファンド」事務局長の大澤優真氏によると、半数を占める韓国・朝鮮の人たちは「戦前から戦後にかけて渡日、また、日本で生まれ育った在日コリアンの高齢者と推測される」と説明する

戦火から逃れたウクライナ避難民への支給も

また、近年の動向で無視できないのは避難民の存在だ。
NHKは2月21日、ウクライナを逃れ日本で避難生活を続ける人たちの課題を考える催しを取材。「ロシアによる軍事侵攻が続き、帰国の見通しが立たず、日本への定住を望む人が増えている」と報じた。
また、催しの中では、ウクライナから避難した60代の女性が「日本語の難しさと年齢のため、仕事を見つけることができなかった」として生活保護を申請したことも語られたという。
出入国在留管理庁によると、ウクライナからの避難民は1967人(1月末時点)。その多くは、2023年末に新設された「補完的保護対象者」として「定住者」への資格変更が可能となっており、生活保護の対象に含まれている。

マイナンバーを使って在留資格等を確認する

こうした中、政府が打ち出した「運用の適正化」はどのように進められるのか。
上野大臣は会見で、「外国人に対する生活保護については、制度の利用実態の把握が十分ではないという課題が指摘されている」とし、「外国人による制度の適正な利用に向けて、地方自治体の実務において、マイナンバーによる在留資格等の情報連携を可能とするとともに、今後、厚生労働省としてもそうした情報の全国的な収集などを進めていく」と語った。
記者から、関係閣僚会議がまとめた「総合的対応策」において、行政措置(生活保護の取り扱いに準じた保護)の対象範囲の見直し検討が明記されていることについて論及されると、「行政措置の対象となる者の見直しについては、具体的な方針やスケジュールは現時点で決まっていない」と述べるにとどめた。

続けて記者から「行政措置の対象の縮小も含めた検討になるか」という質問が飛ぶと、「そうしたことは十分念頭に置く必要があるとは考えている」としつつ、「いずれにしても、実態把握が非常に重要で、そこをまずわれわれとしては注力していきたい」と答えた。

受給者の実態把握・見直しは来年6月から

生活保護制度を所管する厚労省社会・援護局保護課担当者は、「マイナンバーを使った情報連携を令和9年(2027年)6月から実施する予定です」と語る。
支給窓口となる各地方自治体・福祉事務所のシステム構築が整った後、外国人も発行対象となるマイナンバーを用いて、在留資格等の情報を収集する方針だ。
しかし、前述したように、現時点で行政措置に基づき、生活保護の取り扱いに準じた保護を受けている外国人のほとんどは、日本人と同様の生活を送り、税金や社会保険料の納付義務を負ってきた人だ。支給見直しの方針については、関係者らから懸念の声も上がっている。
弁護士や有識者らでつくる「生活保護問題対策全国会議」(事務局・大阪市)は1月29日、政府方針に反対する緊急声明を出した。
前出の「つくろい東京ファンド」の大澤氏も、「基礎データを把握すること自体に問題性は感じていません」とする一方、「『総合的対応策』を見ると、見直しありきの対応になるのではと危惧しています。同時に、『総合的対応策』の書きぶりは、あたかも外国籍者は不正受給が多いといった不確かな認識を広め、不安を煽ることになり得ると考えています」と指摘した。
「外国人との秩序ある共生」に向かう国の姿勢が改めて問われている。
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。
防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。


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