8月22日未明、神奈川県相模原市中央区田名の農道付近で、高校2年生の男子が頭部にけがをして倒れているのが見つかり、病院に搬送されました。男子高校生は同月24日、搬送先の病院で死亡が確認されたとのことです。

男子高校生の死因は、頭部打撲による脳挫傷とみられています。
神奈川県警は9月11日までに、男子高校生と一緒にいた中学2年生の男子に暴行を加えてけがをさせたとして、16歳~17歳の少年4人を傷害の疑いで逮捕しました。
同県警は、少年4人が男子高校生の死亡にも関与した可能性があるとして、事件の経緯を捜査しています。
本件では、男子高校生が死亡した件よりも先に、一緒にいた男子中学生に対する傷害事件の方で被疑者の少年らが逮捕されました。今後の捜査や刑事手続きがどのように進むのか、罪を犯したことが事実であれば少年らはどのような責任を負うのかなどを解説します。(弁護士・阿部由羅)

なぜ「殺人」ではなく「傷害」で逮捕された?

本件では、被疑者とされている少年らは、男子高校生が死亡した件よりも先に、一緒にいた男子中学生に対する傷害の疑いで逮捕されました。
傷害事件での逮捕が先行した背景は定かでないものの、被害者が生存しているため嫌疑が固めやすかったから、あるいは死亡事件については殺意の有無を慎重に検討する必要があるからといった理由が考えられます。
後述するとおり、特に殺意の有無は殺人罪・傷害致死罪を分ける重要な論点であるため、時間をかけて慎重に捜査を進めたい捜査機関の意向がうかがわれます。
殺意の有無などの論点についても捜査が煮詰まれば、男子高校生の死亡事件についても、追って被疑者の少年らが再逮捕される可能性が高いと考えられます。

男子高校生を死亡させたとすれば、少年らはどんな刑事責任を負う?

男子高校生の死亡が少年らの暴行によるものであるとすれば、少年らはその行為について刑事責任を問われることになります。
この場合、主な争点として挙げられるのは次の3点です。
(1)殺意の有無
(2)少年らの間の意思連絡の有無
(3)各少年が果たした役割

殺意の有無:殺人罪か傷害致死罪か

男子高校生に対して殺意をもって暴行を加え、それによって死亡させた場合は「殺人罪」が成立します(刑法199条)。
殺人罪の法定刑は「死刑または無期もしくは5年以上の拘禁刑」で、最も重く処罰される犯罪類型の一つです。ただし、犯人が犯行当時18歳未満だった場合は、死刑は認められず無期拘禁刑が最高刑となります(少年法51条1項)。
これに対し、暴行に伴う殺意が認められない場合は「傷害致死罪」が成立するにとどまります(刑法205条)。
傷害致死罪の法定刑は「3年以上の有期拘禁刑」で、殺人罪よりはかなり軽くなっています。
殺意の有無は、主に次の情況証拠によって判断されます。
(a)創傷の部位、程度
被害者の頭部・胸部・腹部などの枢要部(身体の重要な部位)に重大な傷害が生じている場合は、強度の暴行が多数回にわたって加えられたことをうかがわせるため、殺意を推認させる方向に働きます。
(b)凶器の種類、用法
殺傷能力の高い凶器を、死に直結しやすい方法で用いた場合は、殺意が認定されやすくなります。
(c)動機の有無
殺意につながるような怨恨・怒りなどが認められる場合には、殺意を推認させる方向に働きます。
(d)犯行前後の行動
犯行前後にどのような行動をとったかも、殺意の有無を認定するうえで考慮されます。
たとえば、犯行前や犯行中に「殺してやる」などと叫んでいれば、攻撃意欲が強かったことがうかがわれるため、殺意が認定されやすくなります。
また、血を流している被害者を加害者が救護せずに立ち去った場合は、死んだとしても意に介さなかったことがうかがわれるため、殺意を推認する方向に働きます。

意思連絡の有無:全員による共謀か、一部の少年の独断か

本件では被疑者として4人の少年が浮上しています。
犯罪を行うことについて、少年らの間で意思の連絡(共謀)が行われていたかどうかは重要な論点の一つです。
被害者を暴行することについて少年全員が共謀していた場合は、全員が何らかの刑事責任を問われることになります。
一方で、「一部の少年が突如として被害者を殴り始めて、他の少年は驚きのあまり見ているだけだった」といったケースもあり得ないとはいえません。このような場合には、暴行に参加していない少年は刑事責任を問われない可能性があります。

また、共謀に参加している少年についても、殺意の有無は個別に検討されます。
たとえば、一部の少年については殺意が認められて殺人罪が成立し、その他の少年については殺意が認められず傷害致死罪が成立するといったケースもあり得ます。

各少年が果たした役割:正犯か幇助犯か

男子高校生を死亡させたことについて、各少年がどのような役割を果たしたのかも、刑事責任の内容に大きく影響します。
首謀者や実行犯は「正犯」の責任を問われる可能性が高い一方で、見張り役などの補助的な役割を担ったに過ぎない者は「幇助犯」にとどまる可能性があります。
幇助犯の場合は必ず刑が減軽されるため(刑法62条1項・63条)、殺人罪でも最高刑は「無期拘禁刑」となります。

処分を決める手続きは今後どのように進む?

報道によれば、本件で被疑者とされている少年らは16歳~17歳であるとのことです。
20歳未満の少年については、成人同様の刑事手続きではなく、家庭裁判所において保護処分の審理が行われるのが原則とされています。
ただし、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(殺人罪や傷害致死罪など)の事件であって、被疑者の少年が16歳以上の場合は、家庭裁判所は原則として事件を検察官に送致しなければなりません(少年法20条2項)。
検察官への送致が行われた場合は、成人の刑事裁判と同様に、刑事裁判所で審理されることになります。
本件では、男子高校生の死亡について殺人罪または傷害致死罪の成否が問題となるため、家庭裁判所から検察官へ事件の送致が行われる可能性が高いと考えられます。

■阿部由羅(あべ ゆら)
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。
その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。


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