中途採用で自社に合った人材を採用する上で重要となるものが、実施する面接の形式や手法です。しかし「面接にどんな種類があるのかあまり把握できていない…」とお困りの人事・採用担当者もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、特に中途採用のケースに焦点を当てて、面接の種類や面接時のポイントを解説します。自社の目的に合った形式・手法で採用面接を実施したいときには、ぜひご参考ください。
代表的な面接の種類
中途採用で用いられる採用面接の方法としては、主に以下の3種類が挙げられます。それぞれの詳細を個別に確認していきましょう。
個人面接
個人面接は、転職希望者と面接官が対面で実施する形式です。中途採用では最もメジャーな形式であり、実践する機会も多いでしょう。
転職希望者は基本的に一人ですが、面接官は複数人で参加する場合もあります。会話形式で行われることがほとんどで、約20~30分かけてこちらから質問する、あるいは転職希望者からの質問を受けるかたちで面接が進みます。一人の転職希望者と時間をかけて話ができるため、人柄やコミュニケーション力、そのほかの特徴などを深掘りしたいケースでは最適です。
個人面接の基本的な流れ個人面接では、基本的に以下の流れで面接が進みます。
個人面接の基本的な流れ
①転職希望者が入室する
②お互いに挨拶を交わす
③面接を実施する
④転職希望者からの質問を確認する
⑤転職希望者の退室後、評価を行う
なお、より詳細な中途採用での面接の進め方は後ほど解説しますので、そちらもご覧ください。
オンライン面接
ビデオ通話やチャットツールを用いて行うオンライン面接は、リモートワークが普及した近年、実施する機会が増えてきた形式です。なおWEB面接と呼ばれることもありますが、どちらの名称であっても内容に差はありません。
対面で実施する必要がある個人面接と異なり、時間や場所の制約にとらわれずに実施できる点が大きなメリットです。オフラインでは接触できない層にもアプローチできるほか、スピード感のある選考の実現にもつながります。
このように多くのメリットがあるオンライン面接ですが、ノウハウがない状態で実施することは難しいかもしれません。そのような場合におすすめなのが、以下のマニュアルです。面接でそのまま使える質問集も付属しているので、採用活動を行われる際はぜひご活用ください。
オンライン面接の基本的な流れオンライン面接の進め方は以下の通りです。
オンライン面接の基本的な流れ
①ビデオ通話用のURLを転職希望者に送付する
②開始時間の数分前から待機する
③転職希望者が入室(URLへアクセス)したら、挨拶を交わす
④面接を実施する
⑤転職希望者からの質問を確認する
⑥転職希望者の退室後、評価を行う
オンラインであることを除けば、基本的な流れは個人面接と大きく変わりません。ただし、面接当日までに企業側がビデオ通話用のURLを送付する必要があるので、この点には注意しましょう。
(参考:『オンライン面接を徹底解明!メリット・デメリットや導入にあたっての注意点』)
電話面接
電話で転職希望者と話をする、電話面接という形式も存在します。オンライン面接と同じように時間や場所の制約が少ないため、自社での活躍が期待できる人材と出会える機会を増やせます。
ただし、電話である以上お互いの顔は確認できません。端末やインターネットなどの環境が整備されているのであれば、オンライン面接を実施するほうが無難でしょう。
【参考】新卒採用での面接の種類
新卒採用では、先ほど紹介したものに加えて、以下の3種類の面接もメジャーな形式として挙げられます。中途採用で実施する機会はほとんどありませんが、参考までに把握しておきましょう。
集団面接
集団面接は、複数人が同時に面接を受ける形式です。一度に多くの人材を採用する新卒採用では、最適な手段といえます。
面接官から質問を行い、それに対して一人ずつ答えてもらうというのが基本的な進め方です。回答内容を候補者ごとに比較することで、自社に合った人材かどうかを効果的に判断できます。一方で、個人面接と異なり一人ひとりにかけられる時間は少ないので、人柄や特徴などを深掘りすることは難しいでしょう。
集団面接の基本的な流れ集団面接を実施する機会があるなら、以下の流れを参考にしましょう。
集団面接の基本的な流れ
①候補者が入室する
②一人ずつ自己紹介をしてもらう
③面接を実施する
④候補者からの質問を確認する
⑤候補者の退室後、評価を行う
基本的には、個人面接の流れとほとんど変わりません。しかし、先ほどお伝えしたように一人ひとりに多くの時間は割けないので、時間配分には気をつける必要があります。
グループディスカッション
大人数の候補者を評価するという点では、グループディスカッションも効果的な方法です。
グループディスカッションでは、候補者を5~8人ほどのグループに分けて、特定のテーマについて議論してもらいます。与えられたテーマについて考える力や発想力、コミュニケーション力などを評価できます。また役割分担も必要となるため、「割り振られた役割でどのように貢献できるのか」という点も確認可能です。
グループディスカッションの基本的な流れ一般的に、グループディスカッションは、以下の流れで進めていきます。
グループディスカッションの基本的な流れ
①候補者が入室し、グループごとに待機する
②面接官からディスカッションのテーマを共有する
③グループディスカッションを開始する
④(必要に応じて)各グループの結論を発表する
⑤候補者の退室後、評価を行う
グループディスカッションの最中は、各候補者の振る舞いをきちんとチェックすることが大切です。
AI面接
近年は、AIを活用した面接が行われることもあります。面接官ではなくAIが候補者に対して質問する、あるいは何らかのやりとりを行い評価する、というのが基本的な仕組みです。また、候補者から動画などを送ってもらい、それをAIに分析させる方法も存在します。
AI面接には「面接官の直感に頼らず評価できる」「採用業務の効率を上げられる」などの効果が期待できます。しかし、あくまでも補助的な使い方しかできないため、最終的には人事・採用担当者が決定を下さなくてはなりません。それに加えて、AIの使用について候補者に理解・納得してもらう必要もあるため、ノウハウがない状態で導入するのは難しいでしょう。
(参考:『AI面接とは?実施するためのポイントや注意点を解説』)

人事・採用担当者が活用できる5つの面接の手法
採用面接を実施するにあたって重要となるのは、「形式的」な種類だけではありません。転職希望者が自社に合っているかどうかを見極めるための、「面接手法」も意識したいところです。
人事・採用担当者が知っておきたい面接手法としては、以下の5つが挙げられます。
構造化面接
採用面接で活用できる面接手法としてまず挙げられるのが、構造化面接です。この手法では、事前に定めた評価基準と質問項目に従って面接を実施します。
評価基準が決まっている上に、全ての転職希望者に対して同じ質問を問いかけるため、面接官の主観を排した公平な評価が可能です。
(参考:『構造化面接とは?どんな質問をすべき?半構造化面接との違いやメリット・デメリットを解説』)
非構造化面接
構造化面接とは対照的に、非構造化面接では特に質問事項などは決まっておらず、面接官が転職希望者に対して自由に質問を投げ掛けます。その場の流れに合わせて柔軟に質問事項を変えられるため、転職希望者の人柄や個性をより深く把握できる点が強みです。自社に合っているかどうかをしっかりと判断したい場合には、優先的に活用しましょう。
一方で、評価基準が面接官の考え方に強く依存している点は、無視できないデメリットです。また、面接の質も面接官の力量次第であるため、得られる情報に偏りが出る可能性もあります。
半構造化面接
半構造化面接は、その名称からもわかる通り構造化面接と非構造化面接の中間に位置する面接手法です。例えば、前半では事前に決めた項目に沿った問いかけを、後半では自由質問での会話を、といった流れで面接を進めることとなります。
一定の情報は確実に得られる上に深掘りすることも可能であるため、バランスの取れた評価ができます。ただし、面接官に任せる部分が一定ある以上、評価軸に多少のばらつきが発生する可能性はゼロにはできません。事前に準備する質問事項の内容を精査する、または面接官の判断力を研修によって養うなどして、半構造化面接を有効活用できる体制を整えたいところです。
(参考:『半構造化面接とは|構造化面接・非構造化面接との違いや質問例を解説』)
行動面接
行動面接では、転職希望者の過去の行動や経験を基に評価を行います。具体的には、「過去にどのような業務に注力したか」「トラブルに直面したときどのように対処したか」などを質問し、それに対する回答から自社への適性の有無を判断します。
過去の行動を把握し、転職希望者の入社後の振る舞い方を予想することが、行動面接の目的です。
一点、質問の内容や問い方次第では、転職希望者が圧力を感じてしまう可能性があることには十分注意しましょう。圧迫面接にならないように話し方や態度を意識して、転職希望者が安心できる雰囲気をつくることが大切です。
履修履歴活用面接
履修履歴や成績証明書を活用して面接を行う、履修履歴活用面接という手法も存在します。この手法では、転職希望者が学んできたことを確認した上で、それをどのようにして仕事で活かしていくのかを質問します。学校が発行した証明書を活用する関係上、業務に必要な知識やスキルの有無を事実ベースで確認できることが大きな利点です。
主に新卒採用で使われる手法ではありますが、職業訓練校に通っていた転職希望者に対してなら実施できるケースもあります。特に、経験・スキルの有無が業務に大きな影響を与える業種であれば、履修履歴活用面接の実践を検討してもよいでしょう。
中途採用面接の基本プロセス
ここでは、中途採用での実際の面接プロセスを、3つのフェーズに分けて解説します。
一次面接
一次面接は、採用する部署の社員が面接官を務めることが一般的です。その転職希望者と実際に働くと考えた場合に、社会人マナーなどで気になる点があるかどうかを確認しましょう。また、技術力が重要な業種では、過去に参加したプロジェクトやトラブル対応時の話などを聞くことで、技術力や対応力などのスキルを確認しやすくなります。
一次面接の完了後は、二次面接の面接官に所感の申し送りを行いますが、この際、感想だけではなく事実もきちんと伝えることが非常に重要となります。「この人はうちに合っていると思います」と感想だけを伝えても、次の面接官が適切な判断を下せないためです。抱いた印象や感想とともに、転職希望者の発言や振る舞い方などの事実も伝えることが、採用面接での理想的な流れです。
二次面接
二次面接では管理職クラスの社員が面接官を務めることが多いです。社員を統括する立場から転職希望者の将来性を確認し、自社での活躍が見込めると判断できた場合には最終面接へと通しましょう。
なお、中途採用では基本的に面接の回数は少ないほうが良いとされています。採用の売り手市場が続いている関係上、自社よりも選考回数が少なく、スピードが速い他社に入社してしまう可能性があるためです。そういった理由から、二次面接を省略したり、一次面接時に管理職が同席したりするなど選考回数を減らす工夫をしている企業も増えています。
(参考:『今、選考スピードアップは必須。どう現場を巻き込む?他社事例やデータを活用して社内協力を得る方法』)
最終面接(役員面接)
最終面接(社長・役員面接)にまで進んできた転職希望者は、スキルやコミュニケーション力などは十分に備えていると予想されます。よってこのフェーズでは、役員が志望動機や入社意欲などを掘り下げて、自社に対する興味・関心を再確認することが大切です。自社の業務内容や将来的な展望に関する質問もあわせて行えば、入社意欲の強さをより確実に確かめられます。
このように、役員クラスが面接すること自体には大きな利点があります。しかし先ほどもお伝えした通り、面接の回数は可能な限り少なくしたいところです。転職希望者の情報がスムーズに連携できれば、何度も面接しなくとも済む可能性があるので、まずは情報共有の体制を見直してみることが良いかもしれません。
(参考:『採用フローとは?押さえておきたいポイントと課題の改善策』)
中途採用での面接当日の流れ
自社に最適な人材を見極める上では、面接のスムーズな進行も欠かせません。そこでここからは、中途採用で最も実施する機会の多い、個人面接を想定して流れを解説します。
転職希望者の入室~挨拶まで
まずは転職希望者が入室するので、軽く挨拶をしたら着席を促します。そのあとはいきなり質疑応答に入るのではなく、改めてしっかりと挨拶を交わしてアイスブレイクの時間を取りましょう。転職希望者の緊張を和らげて、お互いに話しやすい雰囲気をつくることが大切です。
挨拶が済んだあとは、企業によってタイミングが異なる場合もありますが、自社や求人の情報についてひと通り説明します。採用面接は、企業側が転職希望者を評価するだけではなく、転職希望者が「ここは自分に合っているだろうか」と判断するための場でもあります。よって質疑応答へ入る前に、業務内容や職場環境などの認識をすり合わせて、採用のミスマッチが発生しないように努めることが非常に重要です。
転職希望者の自己PR~質疑応答まで
挨拶の際に済んでいることもありますが、ここで転職希望者に自己PRを話してもらいます。「自身の強みを論理的に説明できているか」という点のほか、事前に送付された履歴書との相違もチェックします。
そのあとは、こちらからの質疑応答に入ります。自己PRの内容も踏まえて、転職希望者のスキルや人となりを掘り下げられるような質問ができると最適です。以下に面接でそのまま使える質問例を用意したので、ぜひご活用ください。
質問の観点と具体例
上記のほか、他社の選考状況も確認することをおすすめします。返答内容に応じて以降の対応をフレキシブルに変えられれば、自社に合った人材を採用できる可能性を高められます。
転職希望者からの質問~クロージングまで
こちらからの質問を終えたら、次は転職希望者からの質問に答えます。その際は、可能な限りあいまいな回答をしないように心掛けてください。ネガティブな内容でもはっきりと答えるほうが、より良い印象を与えられます。自社の魅力も絡めて回答できれば、さらに効果的な訴求につながるでしょう。
全ての対応が完了したら、面接のクロージングを行います。クロージングの際は、まず面接に来ていただいたことに対して感謝の意を示して、以降の流れと日程(次の選考あるいは合否通知)を伝えます。そして転職希望者が退出する際は、挨拶をしっかりと行ってお見送りしましょう。最後まで誠実に対応することが、自社のイメージアップ、ひいては活躍が見込める人材の採用につながります。
面接を行う際に意識したい点
最後に、採用面接を行う際に意識すべき点を解説します。自社と転職希望者の両方にとって実りのある時間にするためにも、面接の際は以下の4点を意識しましょう。
アイスブレイクを行う
転職希望者に自然体で話してもらうためにも、面接では最初にアイスブレイクを行うのがおすすめです。お互いにリラックスした状態で話ができれば、実際に考えていることや志望動機などをしっかりと掘り下げられます。またアイスブレイクから入ることで、「この会社でなら安心して働けそうだ」と、良い印象を与えられるかもしれません。
ただし、アイスブレイクを行う際は、面接に関わる内容に言及しないように注意しましょう。こちらにその意図がなくとも、転職希望者が「ここでの返答も合否に関係するのかな…」と感じて、かえって緊張してしまうためです。天気や当日の交通手段など、誰でも簡単に答えられるような話題を選びたいところです。
(参考:『【面接官必見!】知らないと失敗しちゃうかも?有意義な面接のためのアイスブレイクとは~質問例付き~』、『良かれと思ったアイスブレイクが逆効果!?応募者の本音を引き出す面接テクニック』)
態度や言動に気をつける
面接時の態度や言動には、十分注意しなければなりません。
意図的に圧迫面接を行うなどは言語道断ですが、こちらにそのつもりがなくとも転職希望者には圧迫面接だと思われてしまうことも、可能性としてはあります。特に「相手をしっかりと深掘りしよう」という点にばかり意識が向くと、態度や語気が強くなり、相手に威圧感を与えてしまうかもしれません。転職希望者にリラックスしてもらうことも面接では重要であるため、物腰柔らかな態度で接するように努めましょう。
(参考:『態度が悪い面接官が応募者の意欲を下げる?面接あるある~環境・マナー編~』、『選考歩留まり要因は堅物ベテラン面接官?「データフィードバック」で面接官の意識改革』)
会社のアピールも忘れずに行う
転職希望者に対して自社のアピールを行うことも、採用面接では欠かせません。
先ほどお伝えした通り、採用面接は転職希望者が自社を評価する場でもあります。また見方を変えれば、自社に入りたいと思っている人材と、直接話せる貴重な機会とも考えられます。多くの転職希望者に「この会社で働きたい」と思ってもらうためにも、自社で働くメリットや自社ならではの魅力を、自然な流れで伝えたいところです。
(参考:『採用のプロが指南する「自社の魅力の見つけ方・伝え方」。人事・採用担当者が自社の魅力を引き出す――、その効果的なメソッドを解説』)
オンライン面接の場合は環境を整備する
オンラインで面接を行う場合は、ネットワーク環境やマイク・スピーカーなどの周辺環境を事前に整備しておきましょう。面接の際に「通信環境が不安定」「向こうの音声が聞こえない」などの事態に直面することは、大きな機会損失になりかねません。特にオンライン面接の実施が初めての場合には、当日になって問題が発生しないように、あらかじめテストしておくことをおすすめします。
面接時に確認したい内容や目的に合わせて最適な面接形式・手法を選ぶことが重要
今回は、面接の形式・手法、そして面接を行う際に意識すべき点を解説しました。
中途採用の面接には、個人面接とオンライン面接といった形式の異なる種類があるほか、構造化面接・非構造化面接などの手法の観点で違うものも存在します。最適なケースや確認できる内容はそれぞれ異なるので、採用の目的に合わせて使い分けることが大切です。また面接を実施する際は「自社も評価される側だ」という意識を持ち、誠実な対応を取ることを心掛けましょう。
(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)