
狭小地とは、30坪(約100㎡)未満、都心部では15坪(約50㎡)未満などの狭い土地のことを指します。狭小地での不動産投資は、一見すると初期費用を抑えられるようにも思われますが、実際には1㎡あたりの建設コストで計算すると高くなるため、投資対象としては慎重な検討が求められます。
本コラムでは、狭小地を活用するメリットやデメリット、具体的な活用方法、活用時の注意点について詳しく解説します。
■狭小地(狭い土地)とは
(画像:PIXTA)狭小地とは、一般的に土地区画整備事業地内における30坪(約100㎡)未満の「過小宅地」や、都心部における15坪~20坪(約50㎡)未満の土地のことをいいます。狭小地は狭いだけではなく、地形がいびつであったり、周囲を建物に囲まれていたりと、有効な土地活用が難しい傾向があります。
近年では土地価格の高騰や都市部の人口集中により、狭小地にも新たな価値が見出されつつありますが、狭小地では十分な日当たりや風通しを確保しにくく、快適な住環境を整えるのが困難な場合も少なくありません。そのため一般の住宅用地と比べると需要が低く、売却や転用もしづらいというデメリットがあります。
特に不動産投資初心者にとっては、思わぬコストがかかったり、安定した収益が得られなかったりと、リスクの高い物件となることもあります。そのため狭小地の購入を検討している場合には、物件が持つ特性や周囲の状況をしっかりと調査し、購入後の活用方法を事前にシミュレーションしておくなど、慎重な検討が求められます。
■狭小地を活用するメリット

狭小地は、限られた面積のなかでも工夫次第で快適な住環境や収益物件を実現できます。一般的に、狭小地は初期費用が安く済む、固定資産税などの税負担が小さいといったメリットがあるといわれることがあります。
しかし、これらは敷地面積が小さいことに起因するものであって、「狭小地ならではの利点」とはいえません。
むしろ実際には、狭小地の活用する際には設計や施工にあたって特別な配慮が必要となるため、設計費用や建設費用がかさみやすく、結果として1㎡あたりのコストは一般的な土地よりも高くなることがほとんどです。また、形状が不規則な土地であれば、測量や登記にも追加の手間がかかり、費用が発生します。
このように、狭小地は安価に見えても、実際には費用が多く発生する可能性があるため、不動産投資にあたっては購入後にかかる費用についてしっかりと把握しておくことが重要です。
■狭小地を活用するデメリット
ここからは、狭小地のデメリットを掘り下げて解説します。狭小地の購入を検討している場合には、これらのデメリットをよく理解し、費用対効果の面で十分な利点があるかどうかを確認するようにしましょう。
●建築費用が割高になりやすい
狭小地では限られたスペースを有効活用するために、建物の設計や施工に特別な配慮が求められ、建築費用が割高になる傾向にあります。
例えば、敷地形状に合わせた変則的な間取りや隣地が近いため距離を考慮した設計などが必要になるほか、工事車両の進入や駐車が困難な場所では人力での作業が多くなり、結果的に工期が伸びたり人件費がかさんだりします。
さらに、高さ制限や斜線制限などの法的規制によって計画通りに建てられない場合もあるため、設計段階から慎重に検討を進めることが重要です。
●融資条件が厳しくなる
不動産を購入する際には、購入する不動産を担保として、住宅ローンや不動産投資ローンを利用することが一般的です。狭小地は購入ニーズが限定的で市場であり、金融機関によって売却しにくいと判断される場合には、担保として十分な評価がされません。
特に、土地の形状や立地が悪い場合は、担保価値が十分に認められず、融資額が減額されたり、最悪の場合は融資自体が断られたりすることもあります。また、希望する金額で融資を受けられるとしても、金利を高く設定されたり、保証料や融資事務手数料を高く設定されたりするなど、融資を受けるための条件が厳しくなることもあります。
このように、狭小地の購入にあたっては資金計画の段階でつまずくリスクがあるため、事前に金融機関との相談を行うことをおすすめします。
●活用の選択肢が限られる
狭小地はその面積の制約や自治体の制限により、活用できる用途が大きく制限されることがあります。
例えば賃貸住宅として使う場合でも、間取りや収納スペースに制限を受けやすく、入居者目線から見た魅力が損なわれる可能性もあります。また、店舗や事務所に転用しようとしても、面積が足りずに希望する業種では開業できないといった事態になることもあり得ます。結果として、投資計画が当初の想定通りに進まず、収益性が大きく下がってしまうリスクもあります。
当初思い描いていたような活用ができないといったことにならないように、十分な事前検証を行った上で計画を立てるようにしましょう。
■狭小地の活用方法

狭小地は一般的に活用が難しいものの、工夫次第では有効な投資対象にもなり得ます。そこで、狭小地の具体的な活用方法を5つ紹介します。もっとも、それぞれに制約や課題があるため、しっかりと事前にリサーチと検討を行うようにしましょう。
●戸建住宅として建築する
都市部では土地の価格が高騰しているため、狭小地に建てられた戸建て住宅には一定の需要があります。駅や商業エリアに近い立地であれば、コンパクトな住宅でも需要を見込める可能性があります。
しかし、建ぺい率の制限により十分な建築面積が取れないこともあり、設計の工夫が求められます。また、階数を増やすことで面積を確保するケースもありますが、容積率の制限に抵触したり、建築コストがかさんだりする点に注意が必要です。
周辺環境や自治体ごとの法規制をしっかりと把握し、現実的なプランを立てるようにしましょう。
●小規模賃貸アパートを建築する
狭小地を活用して小規模な賃貸アパートを建てるという選択肢もあります。都市部であれば単身者向けの需要が見込めるため、ワンルームなどコンパクトな住戸を複数設けることで、一定程度の家賃収入を得られる可能性があります。
しかし、建築できる戸数が限られることに注意が必要であるほか、周辺の賃貸需要や競合物件の状況を綿密に調査し、ターゲット層に響く設備やデザインを取り入れるなどの工夫が必要となります。
●小規模店舗・事務所として使う
立地条件が良好な狭小地であれば、店舗や事務所として活用する方法も考えられます。人通りの多い場所や駅から近い場所であれば、小さなカフェや美容室、カウンター店舗、士業の事務所などにニーズがあるでしょう。
ただし、業種によっては一定の広さや設備が必要になるため、活用できるビジネスに制限が出ることがあります。また、店舗として活用するのであれば、商業繁華性の高い土地でなければ、売上が悪く店舗として成り立ちません。周辺の商圏ニーズや競合状況を十分に調査しなければ、空きテナントになってしまうリスクもあります。
そのため、周辺の競合店やターゲットとする顧客層や交通量などを十分に調査し、事業としての採算性を慎重に見極める必要があります。また、店舗や事務所としての機能を満たすための内装や設備投資も考慮に入れましょう。
●駐車場・バイク置き場にする
狭小地の中でも特に形状や立地が制限されている場合は、建物を建てずに駐車場やバイク置き場として活用するのも一つの方法です。駐車場の運営は1台からでも可能で、駐車スペースは1台あたり最低でも縦5m、横2.5mの幅があれば活用できます。
特に、月極駐車場や時間貸し駐車場としての需要が高いエリアであれば、安定した収益が期待できます。舗装やライン引き、精算機の設置など、最低限の設備投資で始められるため、比較的リスクも抑えられます。
ただし、駐車場やバイク置き場は参入障壁が低いことから、競合の参入により収益性が悪化するリスクなどもあるため、周辺の需要・供給状況に注意が必要です。
●売却する
狭小地は基本的に購入ニーズが限定され市場で流通はしにくいですが、エリアによっては一定の需要があり、資産としての流通性があるケースもあります。特に再建築が可能な土地であれば、戸建住宅や収益物件の購入を検討する個人・法人の買い手が見つかる可能性があります。
ただし、売却時にはその土地の特性を的確に把握し、適正な価格設定と販売戦略を立てることが求められるため、信頼できる不動産会社に相談することをおすすめします。
一般的な土地活用方法としては、今回紹介した方法のほかにも、コインランドリー経営やトランクルーム経営なども考えられます。こちらの記事ではさらに詳しく土地活用の方法を紹介しておりますので、ぜひ併せてご確認ください。
【関連記事】土地投資の種類は?初心者にもできる?メリットやおすすめの人とは
■狭小地を活用する際のポイント

狭小地を有効に活用するためには、単に土地の広さや価格だけに注目するのではなく、さまざまな観点から計画を立てることが重要です。以下からは、狭小地を活用するために注意すべきポイントを3つ解説します。
●エリアや敷地形状によって活用法が異なる
狭小地の活用方法は、その土地が位置するエリアや敷地の形状によって大きく異なります。
例えば、都心部であればたとえ15坪以下の狭い土地であっても、単身者や夫婦向けのコンパクトな戸建住宅や、小規模オフィスビルとして十分に需要が見込める場合があります。
このように、単に面積だけで判断するのではなく、周辺環境や需要を綿密にリサーチし、土地の特性を活かせる最適な活用方法を見極めることが重要です。
●建築可能かどうかを確認する
狭小地の活用を検討するうえで重要なのが、その土地が建築可能かどうかの確認です。
例えば、前面道路の幅員が狭い場合や接道義務を満たしていない「再建築不可」の土地の場合、新たに建物を建てることができません。また、建築基準法に基づく建ぺい率や容積率の制限から用途にあった大きさや高さの建物を建てられないケースや、法的には建築が可能であっても、建築上の制限が多くコストがかさみ、実質的に建築不可能な場合もあります。
そのため購入前に行政機関や専門家への相談を行い、建築可能な土地かどうかを確認することが重要です。
●将来的な売却も視野に入れる
狭小地を購入する際には、自身で活用するだけではなく、将来的に第三者に売却する可能性も視野に入れて計画を進めるようにしましょう。再建築が可能であり、かつ人気のエリアにある狭小地であれば、一定の需要が見込まれるため、出口戦略としての売却も現実的な選択肢となります。
ただし立地や法的条件によっては、将来の買い手が限られる、もしくは買い手が付かない可能性もあるため、購入にあたっては慎重に検討をしましょう。
また、購入後においては、いざというときにスムーズに売却できるよう、市場の動向や需要を常に意識しておくことが大切です。
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