2025年上期(1~6月)のM&A件数(適時開示ベース)は660件と前年を53件、率で8.7%上回り、上期として7年連続の増加となった。このペースでいけば、年間件数も2年連続で過去最多を更新する公算する大きい。
ただ、米トランプ政権の高関税措置発動による国内産業への影響が懸念される中、今後のM&A動向には不透明感がぬぐえない。
1月を除き、毎月100件突破
上場企業に義務づけられている適時開示情報をもとに経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。

上期のM&A660件の内訳は日本企業同士の国内案件が前年比51件増の539件、国境をまたぐ海外案件が同2件増の121件。海外案件は微増ながらも、高水準をキープしており、3年連続の年間200件台が確実視される。
総件数を月別にみると、1月(82件)を除く5カ月はいずれも100件を超え、これは年間5度(3、5、9、11、12月)だった2024年にすでに並び、M&Aの盛り上がりを如実に物語る。
2024年の年間M&A件数は1221件とリーマンショック前年の2007年(1169件)を超え、17年ぶりに最多を更新したが、今年もここまで増勢を保持したままだ。
4.7兆円規模の豊田織機、歴代2位
一方、上期の取引金額は前年比2.5倍の12兆4532億円(金額公表分を集計)。この3分の1以上を占めたのが6月に発表された豊田自動織機をめぐる4兆7000億円規模の買収・非公開化だ。
日本企業のM&Aとして歴代の2位の超大型案件で、武田薬品工業が2018年に発表したアイルランド製薬大手のシャイアー買収(約6兆2000億円、買収完了は2019年)に次ぐ。
豊田織機はトヨタ自動車の源流企業。1937(昭和12)年に独立した自動車部門が現在のトヨタにあたる。
トヨタ、同社会長の豊田章男氏、トヨタ不動産(名古屋市)の3者が出資する持ち株会社を新設し、この傘下に豊田織機を置く。今年12月をめどにTOB(株式公開買い付け)が行われ、豊田織機株の約75%を3兆6899億円で取得する。
「1000億円超」7件増の18件
豊田織機を差し引いたとしても、金額水準は例年を大きく上回る。1000億円超の大型案件は18件(前年上期11件)を数え、うち海外案件が投資ファンド絡みを中心に12件を占める(一覧表を参照)。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)はコンビニ事業に集中するため、総合スーパーなどの非中核事業を米投資ファンドのベインキャピタルに約8100億円で売却することを決めた。
対照的に、ディスカウントストア大手のトライアルホールディングスはおよそ3800億円を投じて米投資ファンドKKR傘下の総合スーパー、西友の買収に動いた。
NTTは携帯子会社のNTTドコモを通じて、住信SBIネット銀行を取り込む。取得金額は約4200億円。携帯大手4社で唯一、銀行を持っていなかったが、「ドコモ経済圏」拡大に向けて悲願の銀行参入を果たす。
牧野フライス、芝浦電子で“争奪戦”
争奪戦”の当事者となったことで話題を集めたのが工作機械大手の牧野フライス製作所とセンサーメーカーの芝浦電子だ。

牧野フライスをめぐってはニデックが5月、同意なき買収を断念した。牧野フライスが対抗措置として導入した買収防衛策について、差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請していたが、却下されたのを受け、実施中だったTOBを取り下げた。
これに代わる形で、アジア系投資ファンドのMBKパートナーズがホワイトナイト(友好的買収者)として登場。12月をめど牧野フライスに対してTOBを始める予定で、牧野フライス側もTOBに賛同を表明した。
芝浦電子では台湾電子部品大手のヤゲオ(国巨)と精密部品大手のミネベアミツミによるTOBが5月初めに始まったが、まだ決着していない。芝浦はヤゲオのTOBに反対し、ミネベアミツミは賛同を得たホワイトナイトの立場。
ヤゲオは日本当局による外為法審査の期間が延びているのを理由に7月15日まで買付期間を延長しているが、ミネベアミツミ(買付期間は7月11日まで)を1株あたり700円上回る6200円の買付価格を提示をしており、有利な状況にある。
◎1~6月M&A:金額上位25(HDはホールディングスの略)
文:M&A Online
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