マブチモーターがM&Aのアクセルを踏み込んでいる。2020年代に入り、その数は海外案件を含めて6件。
食品機械のマスダックを156億円で買収
マブチモーターは4月下旬、食品機械メーカーのマスダック(埼玉県所沢市)を買収すると発表した。新領域の食品機械への参入が狙いだ。国内投資ファンドのベーシック・キャピタル・マネジメント(東京都中央区)などから全株式を6月中旬に取得する予定。
取得金額は約156億円で、マブチモーターとして最大のM&Aとなる。これまで同業のモーターメーカーや、ギアなどの部品メーカーを買収ターゲットとしてきたが、今回のような機械メーカーを傘下に取り込むのは初のケース。その点でも、マブチモーターのM&Aとしてエポックの案件といえる。
マスダックは1957年に設立。全自動どら焼きやシュークリーム専用ラインなどの製造を主力とする。なかでも、どら焼き機は国内シェア9割を超えるという。
また、食品機械の製造ととまらず、1970年代から自ら菓子製造に進出。「東京ばな奈『見ぃつけたっ』」をはじめ、さまざまな菓子類の受託生産を手がける。
マブチモーターは食品機械事業について「国際化や設備自動化余地が大きい分野」と判断。自社のグローバルな生産・販売拠点や生産技術力と、マスダックが持つ製菓機械のエンジニアリング力を組み合わせ、事業拡大につなげる。
「3つのM領域」へ展開を加速
マブチモーターが掲げる成長戦略のキーワードだ。モビリティ(Mobility)、マシーナリー(Machinery)、メディカル(Medical)の頭文字を指す。
同社はモーター単体のビジネスだけでなく、制御やユニット、さらに機械装置・ラインを含むモーター周辺の提供ソリューションの拡大に注力中。一方、事業ポートフォリオについては自動車電装機器に加え、「3つのM領域」を中心に強化・拡張する作戦を打ち出している。
具体的には、モビリティは電気自動車、無人搬送車、アシスト自転車、シルバーカーなどの移動体領域、マシーナリーはロボット、産業機器などのFA(ファクトリー・オートメーション)領域、メディカルはポンプ、人工呼吸器、外科手術用ドリルなどの医療機器領域に照準を合わせている。
今回の食品機械メーカー、マスダックの買収はマシーナリー領域で繰り出した一手ということになる。
2020年代以降、M&Aに本格着手
実は、マブチモーターがM&Aに本格的に乗り出したのは2020年代以降。この間、直近のマスダックを含めて6件の買収に取り組んできたが、いずれも「3つのM領域」に合致する。
手始めとなったのは2021年、スイス企業の医療機器用モーターメーカーであるエレクトロマグ(現マブチモーターエレクトロマグ)の買収。2023年には、医療機器、車載、家電などに使われる小型ポンプを製造する応研精工(現マブチモーターオーケン、東京都稲城市)を傘下に収めた。
続いて2025年、樹脂ギアメーカーのオービー工業(現マブチモーターオービーギアシステム、大阪市)、沖マイクロ技研から小型モーター事業(現マブチモーターマイクロテック、福島県二本松市)を相次いで子会社化。
今年1月に子会社化を完了したのは日本パルスモーター(現マブチモーターNPM、東京都文京区)で、取得額は66億円。同社は半導体製造装置や工作機械、医療機器分野を強みとする。
現在、車載向けが売上高の8割近く
マブチチモーターは戦後、戦後、同社は戦後、玩具・模型用モーターから事業をスタート。現在の主力の自動車電装機器市場には1970年代に進出した。
ドアミラー用モーターで約80%、ドアロック用モーターで70%超の世界シェアを持つなど、こうした車載向けモーターが売上高の8割近くを占める。日本、米国、欧州、中国、アジア・太平洋の5極体制を確立し、海外販売比率は9割を超える。
売上高の残る2割強は事務機器、健康・医療、家電・工具・住宅設備、理美容などの「ライフ・インダストリー機器」向けモーターとなっている。
同社の2025年12月期業績は売上高2.1%増の2004億円、営業利益17.7%増の254億円。売上高は初めて2000億円を突破した。足元の26年3月期は売上高6.3%増の2130億円、営業利益2.1%増の260億円を見込む。
新規領域で500億円を実現へ
2024年にスタートした7カ年の経営計画では最終年度の2030年12月期に売上高3000億円、営業利益300億円以上を掲げる。売上高構成は車載機器向け2000億円、ライフ・インダスリー機器向け500億円、新規領域500億円を想定している。
このうち新規領域の500億円については直近5年間に買収した各社の2026年売上計画(6月に子会社化が完了予定のマスダックを含む)を合計すると、その7割以上をカバーするとし、計画達成がすでに視野に入りつつある。
2030年に向けた経営計画では7年間で700億~800億円規模の成長投資を見込む。中盤戦に迎える中、「3つのM領域」での成長加速を見据えて、次はどんなM&Aが国内外で飛び出すのか、要ウオッチとなりそうだ。
文:M&A Online
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