
中堅の葬儀会社であるこころネット<6060>は、今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)、葬祭会社との友好的M&A推進する。
葬儀業界は、コロナ禍の影響による葬儀の小規模化と単価の下落が続いているのに加え、将来の人口減少に伴う市場の縮小が見込まることから、事業者間の競争の激化や、M&Aによる業界再編が進んでいる。
同社ではこの流れに沿って、新規出店、既存施設のリニューアルと並んでM&Aを推進し、葬儀事業に経営資源を集中することで、3年間で30%の規模拡大を目指す。
M&Aなどの成長投資を2倍に拡大
葬儀事業では、営業エリアの拡大や既存営業エリアの深耕などに取り組む計画で、この計画達成のためにM&Aを活用する。
福島県を地盤とする同社は2023年9月に、葬祭事業の営業エリア拡大を狙いに、山梨県で葬祭事業を手がける喜月堂ホールディングス(山梨県韮崎市)を子会社化しており、これに次ぐ企業買収を模索する。
今後3年間にM&Aなどの成長投資に、過去3年間(2023年3月期~2025年3月期)の2倍に当たる30億円を投じる計画だ。
葬祭の小規模化や埋葬形態の多様化で計画未達に
こころネットは売上高の70%近くを占める葬祭事業のほかに、同20%ほどの石材事業、同5%ほどの婚礼事業と生花事業を手がけている。
葬祭事業は儀式の小規模化が加速しているものの、飲食需要は回復基調にある。一方、石材事業は納骨堂や合祀墓(不特定多数の遺骨を一緒に埋葬する墓)、樹木葬などの伸長で売り上げが減少しており、生花事業も儀式の小規模化に伴い需要は減少傾向にある。婚礼事業は少子化や未婚率の上昇などにより婚姻組数は伸び悩んでいる。
こころネットは2025年3月期に120億1000万の売上高を計画していたが、葬祭の小規模化の加速や、埋葬形態の多様化による墓石販売数の減少などにより、計画が未達となり売上高は101億1700万円(目標達成率84.2%)にとどまった。
2026年3月期は葬祭事業に支えられ売上高105億円(同3.8%増)、営業利益9億2000万円(同23.2%増)の増収営業増益を、M&Aの影響が予想される2028年3月期は売上高130億円(2025年3月期比28.4%増)、営業利益12億7000万円(同70.2%増)を見込む。

活発化するM&A
経済産業省が2022年10月にまとめた葬儀業界の概要によると、同業界の市場規模は約1兆6000億円、葬祭事業者数は4000~5000社で、9割は中小零細事業者という。
2040年ごろまでは死亡者数が増加する見通しであるものの、その後は減少に転じるとともに、葬儀のトレンドが家族葬をはじめ簡素化、小規模化により、単価は下落する見通しにあるという。
こうした状況を踏まえて、葬儀業界でM&Aが活発化しており、大手の燦ホールディングス<9628>は2024年9月に「家族葬のファミーユ」を展開する葬儀会社のきずなホールディングスを子会社化したのに続き、2025年6月にも訪問医療マッサージを手がけるクニカネクスト(京都市)を子会社化した。
中堅のティア<2485>も2023年11月に、葬祭事業の八光殿(大阪府八尾市)、東海典礼(愛知県豊川市)をそれぞれ傘下に置く持ち株会社2社を子会社化。
さらに平安レイサービス<2344>は2020年に、葬祭業のさがみライフサービス(神奈川県小田原市)とビジネスホテル経営のシンエイ・クリエート・サービス(神奈川県開成町)を、サン・ライフホールディング<7040>も2020年に、東京霊園を管理、運営する高尾山観光開発(東京都八王子市)をそれぞれ子会社化している。
葬儀業界のM&Aに当面ブレーキがかかる要因はなさそうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一
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