上場企業の社名変更でこのところ、「グループ」を冠するケースが広がっている。持ち株会社を意味する「ホールディングス」をわざわざ社名から外し、「グループ」に改める動きが目立つほか、新しく持ち株会社に移行する際も「ホールディングス」を使わずに「グループ」を選ぶことが多くなっている。
グループとしての一体性
三菱ケミカルホールディングス(HD)は5月19日、7月1日付で「三菱ケミカルグループ」に社名を変更すると発表した。同社は「One Company, One Team」を掲げ、フラットな組織体制への移行を進めている。これまで通り持ち株会社制は維持するが、グループが一体となって戦略を遂行する新組織体制を表すため、社名を改める。
三菱ケミカルHDとして2005年に三菱化学と三菱ウェルファーマ(現田辺三菱製薬)の経営統合に伴い発足して以来17年ぶりの社名変更。同社は昨年4月、外部招聘したジョンマーク・ギルソン社長が誕生し、初の外国人トップのもとで、事業構成の変革(ポートフォリオDX)などを推進中だ。
持ち株会社のまま、社名のホールディングスをグループに取り換えるのは三菱ケミカルHDだけではない。新年度入りした4月以降、セイコーホールディングス、コナミホールディングスも同様の社名変更を発表した。社名変更はセイコーHD(10月1日付)はそれぞれ15年ぶり、コナミHD(7月1日付)が7年ぶり、
いずれもグループとしての一体性を高め、司令塔としての役割を明確に打ち出す狙いが込められている。セイコーHDは「経営環境は急激に変化しており、グループの総合力を強化・発展させる体制構築が急務になっている」とし、各事業の経営管理を主体とした従来型の持ち株会社制からの転換を図る考えだ。
ソニー、楽天もグループを採用
実際、ここ数年、社名にグループを採用するケースは増えている。ソニーは2021年4月に持ち株会社に移行した際、「ソニーグループ」に名前を変えた。グループの本社機能に特化するのが狙いで、持ち株会社のソニーグループの傘下にエレクトロニクス、ゲーム、音楽、映画、音楽などの事業会社を配置した。ソニーの名前は祖業であるエレクトロニクス事業を担う子会社が引き継いだ。
楽天も昨年4月、「楽天グループ」に変更した。
「チーミング」を取り入れた電通
電通が「電通グループ」に社名変更したのは2020年1月。国内事業を切り出し、持ち株会社の下に国内事業と海外事業会社を配置した。その際、重視したのが「チーミング(teaming)」の概念で、一般的な持ち株会社のイメージと一線を画す。電通の幹部は「グローバル・デジタル化が進む多様性の時代に価値創造できる『チーム』作りを企業グループ全体で推進していく考え方」と説明する。
もっとも、持ち株会社化への移行にあたっては「ホールディングス」の採用が主流であることは変わらない。パナソニックは今年4月にパナソニックホールディングスを発足したばかりだ。
◎社名変更で「グループ」を冠した主な上場企業 ※HDはホールディングスの略
新社名 旧社名 変更年月 セイコーグループ セイコーHD 2022年10月 タナベコンサルティンググループ タナベ経営 〃 GMOインターネットグループGMOインターネット2022年9月 三菱ケミカルグループ 三菱ケミカルHD 2022年7月 コナミグループ コナミHD 〃 日産証券グループ 岡藤日産証券HD 〃 オープンハウスグループ オープンハウス 2022年1月 エクシオグループ 協和エクシオ 2021年10月 ソニーグループ ソニー 2021年4月 楽天グループ 楽天 〃 カクヤスグループ カクヤス 2020年10月 電通グループ 電通 2020年1月 ソフトバンクグループ ソフトバンク 2015年7月文:M&A Online編集部