LINEヤフー、メルカリと提携した「大黒屋」さらなる提携を進めるワケは

中古ブランド品買い取り中堅の大黒屋ホールディングス<6993>が、事業拡大戦略として他社との提携を活発化させている。

すでにLINEヤフー<4689>、メルカリ<4385>との連携事業をスタートさせており、今後は中古ブランド品買い取り機会の創出や、新規サービスの開発を狙い、清掃、倉庫、旅行、エンターテインメントなどの幅広い企業との提携を模索する方針だ。

5年で売上高を6倍に

バッグや時計、アパレルなどのブランド品をはじめ、貴金属や電子機器、ホビー用品などを対象とするリユース市場は、物価高による節約志向の高まりや、持続可能な社会を目指す消費者意識の変化などから、需要の拡大が見込まれている。

こうした状況の中、事業拡大を狙いにM&Aを模索する動きが強まっており、各社とも戦略投資として大きな金額を投じる計画を持つ。

大黒屋は2025年2月に見直した2029年3月期を最終年とする5カ年の中期経営計画ではM&A戦略について触れていないが、最終年に2024年3月期の約6倍に当たる600億円を超える売上高を計画しており、提携による事業拡大を基本戦略とする一方で非連続な成長が可能なM&Aについても実現の可能性はありそうだ。

関連記事はこちら
中古ブランド品売買の「コメ兵」企業買収を活発化 業界にも広がりが
リユースの「BuySell」ロールアップ戦略で3年後に売り上げを2倍以上に
リユースの「オークネット」30億円規模のM&Aを3年以内に2件実施へ
「バリュエンス」激化するリユース品の買い取り競争に勝ち残る戦略は
「トレジャー・ファクトリー」がM&Aで獲得を目指すターゲットは?

AI査定を武器に提携を推進

大黒屋の強みは、8年以上蓄積したブランド品のデータを基に、クローゼットの写真から自動でブランドやモデルを認識し、即座に買い取り価格を提示できるAI(人工知能)を用いた即時査定システム「AI査定チャットボット」にある。

同システムはダイナミックプライシング(商品やサービスの需要に応じて価格を変動させる仕組み)AIによって、現在の相場価格に基づいた正確な査定額を表示することが可能で、買い取り手続きなどは、スマートフォンなどでメッセージをやり取りするアプリのLINEで全て行うことができる。

さらにチャットボットを進化させたAI音声対話アバター(分身)によるビデオ通話査定システムを開発しており、これを活用することで無人の店舗での買い取りなども可能にした。

これらサービスを提供することで、他社との提携を進め、買い取りネットワークの強化や、利益の拡大を目指す作戦だ。

すでに提携しているLINEヤフーとは、2024年7月に「おてがるナンデモ買取」サービスを開始した。

同サービスはLINEを利用して中古品を大黒屋が買い取り、Yahoo!オークションに出品し、落札金額に応じて値上がり分を追加で買い取り代金に上乗せするもので、買い取りに関する登録や集荷、査定、振込みなどが全てLINE上で完結する。

ネット上でフリーマーケットのように個人間で物品の売買を行えるアプリを運用するメルカリとは、2024年12月に「買取リクエスト」としてサービスを始めた。

同サービスは、ユーザーがメルカリに出品したブランド品などに対して、メルカリから「買取リクエスト」が届き、大黒屋による査定金額をベースにした買い取り価格が提示され、出品者が価格に納得すれば、買い取りが成立するという仕組み。

こうした連携を今後広げていく計画で、買い取り機会の創出については、清掃や倉庫のほか、老人ホーム、家電量販店、家事代行、ホームセキュリティー、福利厚生、化粧品の訪問販売などに関わる企業との連携を模索する。

また新規サービスの開発に関しては、旅行やエンターテインメントのほか、EC(電子商取引)、フリーマーケット、ネットオークション、運輸、仮想通貨(暗号資産)取引所、通信キャリアなどとの連携を検討する。

リユース業界に広がるM&A

リユース業界では、事業拡大を目標にM&Aが増加傾向にある。

コメ兵ホールディングス<2780>が2024年にわずか半年の間に、中古ブランド品買い取り企業3社を買収したほか、BuySell Technologies<7685>は連続的なM&Aによるロールアップ戦略(複数の中小企業を買収し、統合することで一つの大きな企業として成長を目指す手法)を推進する方針を打ち出している。

またオークネット<3964>は、2026年と2027年に1件ずつのM&Aを実施する計画を策定しており、トレジャー・ファクトリー<3093>は、専門性や地域の補完などのシナジーが見込めるリユース企業を対象にM&Aを検討。さらに、バリュエンスホールディングス<9270>も、買い取り店舗以外のリユース品の仕入れネットワークの強化を目的にM&Aを活用する方針だ。

大黒屋は1912年に森新治郎商店を創立し、照明器具の製造や販売に乗り出したのが始まりで、2013年にディーワンダーランド(現 大黒屋グローバルホールディング)と、その子会社の大黒屋を子会社化したことでリユース事業が拡大。2015年には中古品買い取り販売事業を手がける英国のSPEEDLOAN FINANCEを子会社化した。

2025年3月期は売上高105億1500万円(前年度比4.1%減)、営業損益6億8600万円の赤字(前年度は1億4300万円の赤字)の見込みで、2期連増の減収営業赤字に陥る。

その後の2026年3月期以降は増収営業増益に転じると見ており、子会社の大黒屋のみを対象(連結では電機事業を含むが、業績に占める割合は小さいとしている)とした業績見通しでは、2026年3月期に70%を超える増収となったあと毎年40%~60%の成長を予測する。

高い成長率は他社との提携などの効果を見込んだものだが、この急成長実現の過程でM&Aの出番もありそうだ。

LINEヤフー、メルカリと提携した「大黒屋」さらなる提携を進めるワケは
大黒屋ホールディングスの沿革と主なM&A

文:M&A Online記者 松本亮一

【M&A Online 無料会員登録のご案内】
6000本超のM&A関連コラム読み放題!! M&Aデータベースが使い放題!!
登録無料、会員登録はここをクリック

編集部おすすめ