
ジャニーズ事務所を設立し、男性アイドル路線で日本の芸能史を大きく変えたジャニー喜多川氏が亡くなった。心からご冥福を祈りたい。
ニーズに合わせて子会社を設立
レコード(CD)制作や楽曲著作権の管理といった音楽系の子会社だけでなく、チケット販売やタレントグッズの企画・制作、モバイルを含むウェブサイト運営など、顧客のニーズに合わせて子会社を設立し、新たな収益源を確保している。
例えばヤング・コミュニケーションは、通常なら外部に委託するコンサートなどのチケット販売を一手に引き受け、一般に20%前後といわれる販売手数料をジャニーズグループ内に還流している。同グループの利益率が高いのは、ヤング・コミュニケーションによる事実上の「チケット直売」にあるという。
エム・シィオーが手がけるタレント限定グッズは、コンサート会場でしか買えない希少性から売れ残りなどの在庫がほとんどなく、実売価格を維持できることからジャニーズグループの大きな収益源となっている。
ジャニーズタレントのコンサートは入手困難で、会場で販売しているオリジナルグッズが入手しにくい。そこでジェイベースが、全国4カ所にジャニーズショップを展開。コンサートに行けなくてもファンがグッズを購入できるようにした。通常なら外部への委託販売で拡販を目指すが、希少性の維持と利益率の高さで関係会社による直販を選択したのだろう。ジャニーズ人気があるがゆえの戦略といえる。
「音楽が売れない」時代に生き残る子会社戦略
救済型のM&Aもある。公務員宿舎だった新宿西戸山住宅跡地再開発の目玉事業で、「民間活力導入による国有地再開発第1号」としてバブル期の1988年に建設された「東京グローブ座」だ。著名な建設家である磯崎新氏が設計し、世界で最も有名な劇作家ウィリアム・シェイクスピアの劇場だった英国ロンドンの「グローブ座」を模して、舞台を円筒状の客席が囲む構造となっている。
鳴り物入りでオープンし、主にシェイクスピア劇を上演していたが、赤字続きで2002年に休館。
こうした子会社は、CDなどの音楽コンテンツが売れない時代に事務所の成長を持続する原動力となっている。ポスト音楽コンテンツの生き残りのカギは物販とライブ活動(コンサート、演劇)というのが、世界的な潮流だ。ジャニーズ事務所の子会社は、まさにこの流れに沿って設立されている。
2019年5月に音楽コンテンツを手がけるジャニーズ・エンタテイメントがジェイ・ストームに事業譲渡し、事実上の子会社再編を断行していることからも、グループ経営の軸足を祖業の音楽コンテンツから物販、ライブへ移していることは明らかだ。芸能界の老舗企業ながら、見事な子会社戦略といえるだろう。
ジャニーズ事務所の関係会社リスト
社 名事業内容備 考 アートバンク 携帯コンテンツ事業 モバイル公式サイト「Johnny's web」を運営するために設立。ネット投稿された所属アイドルの写真や動画の削除要請など、ネット上の著作権・肖像権管理も エム・シィオー コンサート・舞台・映画グッズの販売、書籍や宣伝ツールの企画制作事務所所属タレントのうちわ、ポスター、Tシャツ、ペンライトなどの限定グッズを手がけるジェイ・ストーム レコード(CD)・映画制作 人気グループ「嵐」のプライベートレーベルとして発足。社名の「ストーム」はグループ名の「嵐」に由来する。2019年6月、ジャニーズ・エンタテイメントからの事業譲渡を受けて、社内にレコードレーベル(レコード事業部門)の「ジャニーズ エンタテイメント」が発足 ジェイベース グッズ販売とジャニーズショップの運営、ファンクラブ会報誌およびJr.名鑑の発行ジャニーズショップは東京・原宿、名古屋、大阪、福岡に出店。2016年までの旧社名は「ジェイステーション 」だった ジャニーズアイランド 事務所若手タレント「ジャニーズJr.」のプロデュース、動画サイト「ISLAND TV」の運営 2019年1月に設立。
文:M&A online編集部