
香川県の第二地銀、香川銀行は1943(昭和18)年2月、県内の旭無尽、香川第一無尽、讃岐無尽、七宝無尽、丸亀無尽の5無尽が新立合併し、香川無尽として誕生した。
その後1951年6月に施行された相互銀行法により、同年10月、香川相互銀行に。
香川銀行となって以降、大きなM&Aとしては、2010年4月、徳島銀行とともにトモニホールディングス<8600>という金融持株会社を設立し、その子会社という位置づけになった。また、その徳島銀行は2020年1月、大阪の大正銀行と合併し、徳島大正銀行となっている。
第二地銀に至るまでのM&Aとしては、極めてオーソドックスな経緯を経ている。
整然と棲み分けていた“領地”をかき乱すもの
四国の金融機関はこれまで、“整然”としていた。各県に比較的規模の大きな地銀(伊予銀行=愛媛県、百十四銀行=香川県、阿波銀行=徳島県、四国銀行=高知県)があり、各県それぞれに、規模が比較的小さい第二地銀(愛媛銀行、香川銀行、徳島大正銀行、高知銀行)がある。行名から見ても、地銀はその県名を示さず、第二地銀がそれぞれ県名を名乗っている。印象論になるが、それぞれに奥ゆかしく棲み分けができている感があった。
ところが四国全体の人口を見ると、2024年1月時点で約364万6,000人。1985年の約423万人をピークに、減少の一途をたどっている。また、四国地方整備局の資料(四国圏広域地方計画)によると、「四国は全国平均から見て、人口のピークが20年早く、高齢化は10年早く進んでいる」とされる。
この人口減少は、整然と棲み分けがあった四国金融の“パイの奪い合い”状況をもたらしているかのようだ。四国の第二地銀4行では「4 YOU NET(フォーユーネット)」の名称で提携し、提携銀行のATMではキャッシュカード等での入金および出金は利用手数料が無料だ。一方で、前述した第二地銀同士の金融持株会社化を進めている。
また、香川県内のメインバンク調査では、百十四銀行が6,968社で香川銀行が2,658社と地銀の百十四銀行に大きく水を開けられている。ところが、隣の愛媛県内では香川銀行が441社で百十四銀行が249社と、香川銀行のほうがより多くの企業との取引がある(いずれも数字は2023年帝国データバンク調査)。
通常、第二地銀はそれぞれの県内企業との取引がメインバンクとして活発なのだが、香川銀行は隣県では“負けていない”金融機関だ。
愛媛県の東部、東予地方は山を隔てた県庁所在地の松山市より、香川県の県庁所在地である高松市のほうが利便性がよい。このようなことも影響があるのだろう。
香川銀行は2017年、高松市亀井町で本店社屋の建て替えを始め、2019年に竣工、業務を開始した。地上10階で、旧本店に比べ広さは約1.8倍になった。

細い通りを隔てた同じ亀井町内北側には、百十四銀行の本店ビルが地上16階で建つ。このビルは1966年の竣工当時、西日本一の高さを誇っていた。
国道11号の目抜き通り、通称「中央通り」に県内両金融機関の巨大な本店ビルが並び立つ姿はまさに圧巻。県内の地銀・第二地銀で鎬を削っているかのようだ。
香川銀行としては、「県内では二番手地銀だが、利便性のよい隣県愛媛では善戦している。もう一つの隣県徳島とは、金融持株会社をつくった仲間だ」と考えているだろう。これも無尽時代からの隣県との経済交流、さらに、さらに明治期までの隣藩との交流、また、やがて無尽組織などともなったであろう「講(金毘羅講)」組織などでの琴平詣が営々と影響しているのかもしれない。
文・菱田秀則(ライター)
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