私鉄大手の「西日本鉄道」農業事業を拡充 肥料や農薬など販売のヒノマルを子会社化

九州北部の私鉄大手である西日本鉄道<9031>は2025年10月に、農業分野に特化した卸売会社のヒノマル(熊本市中央区)を傘下に持つヒノマルホールディングス(HD、東京都中央区)を子会社化する。

2026年3月期を最終年とする3カ年の中期経営計画の中で掲げた、M&Aを活用した「ストア事業の拡大」「物流での海外ネットワークの拡充」「農水産領域などでの事業創出」の三つの目標を踏まえて決断した。

ワンストップで応えられる総合力が強み

第一弾としてベーシック・キャピタル・マネジメント(東京都中央区)が運営するファンドと個人株主からヒノマルHD株式の99%を取得し、年内をめどに残りの株式を取得し保有割合を100%に引き上げる。

子会社化後は西日本鉄道グループの物流サービスやスーパーなどをはじめとする多くの事業と連携を進め、規模の拡大を目指す。

同社では「九州の主要産業である農業を支え、沿線地域、九州経済の活性化と持続可能なまちづくりにつなげる」としている。

ヒノマルは1947年の創業で、九州を中心に有機化成肥料や土壌改良材などの「肥料事業」や、殺虫剤や除草剤などの「農薬事業」を展開しているほか、農業用ビニールや散水チューブなどの「園芸・産業資材事業」、ビニールハウス建設などの「施設工事事業」、農薬散布用ドローンや自動潅水(かんすい)装置などの「スマート農業事業」なども手がけており、2025年3月期の売上高は128億4900万円だった。

ヒノマルでは、こうした幅広い事業を通じて「顧客ニーズにワンストップで応えられる総合力が強み」としており、西日本鉄道の傘下入りで「ネットワークやアセットなどを最大限に活用し、農業の発展に貢献する」としている。

西日本鉄道では新領域開発事業として取り組んでいる農業事業で、すでに子会社のNJアグリサポート(福岡県大木町)が、就農人口の増加と就農者の所得向上、農業経営の安定化を目的に、イチゴとトマトの栽培を行っており、ヒノマルが加わることで農業分野の業容が一気に拡大することになる。

スーパーの子会社化に実績

西日本鉄道は1908年に北九州市で設立された九州電気軌道が前身で、1942年に九州電気軌道と九州鉄道、博多湾鉄道汽船、福博電車、筑前参宮鉄道の5社が合併し、西日本鉄道が誕生した。

現在、祖業である鉄道、バスの「運輸事業」の売上高比率は20%弱で、国内外物流や倉庫などの「物流事業」が最もウエイトが高く、総売上高の3分の1ほどを占める。

このほかに、住宅分譲やオフィスビル賃貸などの「不動産事業」と、スーパーや生活雑貨販売などの「流通事業」が同20%弱を、ホテルや遊園地、水族館などの「レジャー・サービス事業」が同10%強といった構成になっている。

運輸を核に多角的に事業を展開しているのが強みで、2025年3月期は国際物流での取扱高の増加や、ホテル客室単価の上昇、バスの運賃改定などにより、売上高は4434億9500万円(前年度比7.7%増)、営業利益は266億5500万円(同3.0%増)と増収営業増益となった。

2026年3月期については、不動産事業で住宅の分譲販売の増加や、賃貸ビルの開業などにより売り上げは6.0%増えるものの、人件費や減価償却費の増加などにより営業利益は6.2%の減少を余儀なくされる見込み。

これまでM&Aは多くなく、直近では2011年に、佐賀県などを中心にスーパーマーケットを運営するあんくるふじや(現 西鉄ストア)を子会社化した案件がある。

これ以前ではスーパーマーケットなどを運営していたスピナ(北九州市、現在は不動産賃貸や食品製造などを手がける)を子会社化した2006年までさかのぼる。

農業でのM&Aに続いて今後、中期経営計画に掲げた「ストア事業の拡大」「物流での海外ネットワークの拡充」などでもM&Aの出番があるかもしれない。

私鉄大手の「西日本鉄道」農業事業を拡充 肥料や農薬など販売のヒノマルを子会社化
西日本鉄道の沿革と主なM&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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