
制御機器やヘルスケアなどの事業を展開するオムロン<6645>は、企業が従業員の健康を維持、向上させる取り組みであるコーポレートヘルス事業を本格展開する。
企業が抱える従業員の健康に関する課題を解決するサービス「Carely」を提供しているiCARE(東京都品川区)を2025年10月に子会社化し、オムロンとiCARE両社の知見を活用した新サービスの開発に着手。
600社以上が利用
日本国内では、従業員の高齢化と人手不足が進んでおり、従業員の健康増進が企業の生産性の向上などに影響を与えるようになりつつある。
このため、従業員の健康保持、増進の取り組みが、将来的に収益性などを高める投資であるとの考えに基づき、従業員の健康増進に取り組む健康経営が企業に広まってきた。
オムロンは、データを活用した健康経営領域での事業の創出を目的に、2024年7月にiCAREの30%の株式を取得し連携を開始。
今回iCAREの全株式を追加取得し完全子会社化することで、iCAREが持つ従業員の健康データと産業保健領域の知見や人的ネットワークを取り込み、コーポレートヘルス事業を加速させることにした。
iCAREが提供している「Carely」は、従業員の健康情報を一元管理する健康管理クラウドや、産業医の紹介、健診業務の支援、コンサルティングなど、企業の健康課題を解決する仕組みを備えたサービスで、すでに600社以上が利用しているという。
ヘルスケア産業は2050年に77兆円市場に
健康経営は、企業が従業員の健康を維持、向上させる取り組みで、病気やメンタル不調による 欠勤、離職の予防、生産性の向上、企業イメージの向上などが期待されている。
経済産業省は2024年8月に公表した健康経営に関する資料で、健康経営を「健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」とし、企業が健康経営に取り組むことで業績の向上や企業価値の向上につながることから、同取り組みを推進している。
同省ではヘルスケア産業市場の規模について、健康経営や民間保険、予防、食品などの健康保持・増進に関わる分野で、2020年に18兆5000億円だったのが、2050年には59兆9000億円に拡大。さらに日常生活・社会参加支援や介護関連機器などの患者や要支援、要介護者の生活を支援する分野で、2020年に6兆4000億円だったのが2050年には16兆9000億円に拡大すると推計。
両分野を合わせると2020年に25兆円ほどだったのが、2050年には77兆円ほどに拡大するとしている。
2023年に子会社化したJMDCとの連携も強化
オムロンは2023年6月に、健康経営の実践に取り組む企業の集まりである「健康経営アライアンス」の立ち上げに参画し、データに基づいた健康経営の実践、普及に取り組んできた。
iCARE の子会社化を機に、2023年に子会社化した、レセプト(診療報酬明細書)や健康診断などの医療ビッグデータの解析サービスなどを手がけるJMDC<4483>との連携も強化し、新たな領域での事業展開を目指す計画だ。
オムロンの2025年3月期は売上高8017億5300万円(前年度比2.1%減)、営業利益540億3800万円(同57.4%増)と減収ながら大幅な営業増益となった。
制御機器事業や電子部品事業で設備投資需要が低調に推移したことに加え、ヘルスケア事業で中国市場の需要が減少したことから減収を余儀なくされたものの、構造改革などによって収益性が急激に改善した。
ヘルスケア事業の2025年3月期の売上高は1459億円(同2.6%減)、営業利益は175億円(同5.3%減)と振るわなかったが、2026年3月期は売上高1500億円(同2.8%増)、営業利益185億円(同5.8%増)と増収営業増益を見込んでいる。
オムロンが適時開示したM&Aは2023年のJMDCが最後で、これ以降に適時開示していない案件としては今回のiCAREのほかに、2024年の欧州で医療機関向けの遠隔診療サービス事業を展開するオランダのルーシーヘルステックの子会社化などがある。

文:M&A Online記者 松本亮一
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