
過剰出店による自社店舗の競合やコロナ禍の影響で業績が低迷していた「いきなり!ステーキ」のペッパーフードサービス<3053>が、海鮮業態への進出で業績の巻き返しを狙っている。
海鮮居酒屋「かいり」事業を譲り受け、海鮮業態という新たな市場に参入することで、多角化による経営基盤の安定と収益の拡大を目指す計画だ。
独自の新たな取り組みを加え事業を拡大
ペッパーフードは2025年3月に、フードキャッチ(東京都渋谷区)が運営するカキとエビを中心とした海鮮料理居酒屋「かいり」事業を譲り受けた。
「かいり」は、東京都渋谷区内に3店舗を展開し、カキをメインに、エビや貝類などを提供している。
名物の「痛風鍋」は、カキをはじめエビやあん肝、白子などの食材を使いインパクトのある見た目に仕上げてある。
ペッパーフードでは痛風鍋をはじめとした高品質な料理とサービスを継承するとともに、今後は独自の新たな取り組みを加えサービスを向上することで「かいり」事業を拡大するとしている。
業態の多様化で経営基盤を安定化
ペッパーフードはステーキ業態の「いきなり!ステーキ」のほかに、「炭焼ステーキ・くに」(ステーキ専門店)、「こだわりとんかつ・かつき亭」(とんかつ店)「すきはな」(すき焼き店)を展開している。
2024年12月期の売上高は「いきなり!ステーキ」が135億円ほどで、全体(139億8800万円)の96%以上を占めた。
「いきなり!ステーキ」は肉に特化したランチやディナーの中価格帯の業態であるのに対し「かいり」は飲酒を伴う夜の需要に対応した高価格帯の海鮮業態であり、顧客層や仕入れ先が異なるため、グループ内に取り込むことで業態の多様化につながる。
また健康志向の高まりやインバウンド(訪日観光客)需要の拡大により、和食や海鮮料理の人気が高まっており、ブランド力のある「かいり」を傘下に収めることで、即戦力として業績への貢献が期待できる。
これまでの事業譲受については、2019年10月のハイエンドのステーキ店「Prime42 BY NEBRASKA FARMS」の案件がある。
「いきなり!ステーキ」に次ぐ柱に
ペッパーフードは過剰出店やコロナ禍の影響で業績が振るわず、2019年12月期から5期連続の営業赤字が続いていたが、不採算店舗の撤退が進んだことや、販売価格の適正化による原価率の改善などにより、2024年12月期は営業黒字に転換。2025年12月期は2期連続で営業黒字を確保できる見通しとなった。
こうした業績の回復を踏まえ、同社では主力事業の「いきなり!ステーキ」に次ぐ新業態の開拓に力を入れており、2024年11月に「ひとりすき焼き」をコンセプトにした店舗「すきはな」の運営に乗り出している。
2025年5月15日発表した「中期経営計画の進捗に関するお知らせ」では、「かいり事業を、いきなり!ステーキ次ぐ新たな柱として進めていく」としており、期待の高さが感じ取れる。
同社は、コロナ禍の中の2020年に「いきなり!ステーキ」と並ぶ経営の柱だった「ペッパーランチ」事業を売却、その年の売上高が前年の600億円台から一気に300億円台に縮小した経験を持つ。
M&Aで失った経営の柱をM&Aで再び取り戻すことはできるだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一
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