『大小島真木展|あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?』KAAT神奈川芸術劇場で 会場を「胞衣(えな)」に見立て、命への“祈り”の空間をつくる新作インスタレーションを展開
《胞衣 | Ena》 ©︎2022 Maki Ohkojima Courtesy of Sezon Museum of Modern Art, Photo by Ken Kato

KAAT神奈川芸術劇場の劇場空間と現代美術の融合による新しい表現を展開するシリーズ「KAAT EXHIBITION」。その10回目となる『KAAT EXHIBITION 2025 大小島真木展|あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?』が、9月21日(日)~10月19日(日)、KAAT神奈川芸術劇場<中スタジオ・アトリウム>で開催される。

今回は、緻密な描画と大規模なインスタレーションで知られるアーティスト、大小島真木の劇場初個展となる。大小島は、「絡まり、もつれ、ほころびながら、いびつに循環していく生命」をテーマに、東京を拠点として国内外で制作活動を行ってきたが、2023年以降、かねてより制作に携わっていた編集者・辻陽介とともに、名称はそのままにアートユニットとして活動している。

『大小島真木展|あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?』KAAT神奈川芸術劇場で 会場を「胞衣(えな)」に見立て、命への“祈り”の空間をつくる新作インスタレーションを展開

《L’œil de la baleine | 鯨の目》 ©︎2019 Maki Ohkojima in Aquarium of Paris Cineaqua, Paris, France, Photo by Serge Koutchinsky

今回は、日本語の古語で、母体の胎児を包む羊膜と胎盤を示す「胞衣(えな)」をモチーフとする。「胞衣」は再生のシンボルとして、また、生死を超えて私たちを包み込むこの世界そのもののメタファーとして、世界各地で信仰されてきた。展覧会タイトルの『あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?』とは、メキシコの先住民セリ族が出身地を尋ねるときに使う慣用句だという。その言葉から、胞衣とは、私たちがかつていた場所であり、やがて還りゆく場所でもあることに思いが及ぶ。

『大小島真木展|あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?』KAAT神奈川芸術劇場で 会場を「胞衣(えな)」に見立て、命への“祈り”の空間をつくる新作インスタレーションを展開

《千鹿頭 | Chikato》 Film 37min ©︎2023 Maki Ohkojima

この展覧会では、会場全体を「胞衣」に見立て、その内奥に「祈り」の場を立ち上げる。大小島は、「祈り」とは「“私たちの死”をあらかじめ荘厳すること、そこに小さな明かりをいっせいに灯すこと」だと考える。そして、生きていく中で誰もが不条理や矛盾に見舞われ、「痛み」を感じることがあるが、痛みを克服するというよりも、所与のものとしてともに生きていこうとする姿勢を示す。

戦争、差別、環境変動など、様々な問題や悲劇を前に、人類史そのものが自省を求めているような現代。展覧会では、その「祈り」を「出産」という営みと結びつけ、いかなる状況においても命が生成していくというプロセスそのものを、その先に種の絶滅さえも見据えながら肯定し、そこへ捧げる祈りを表現する。命を横に縦につないでいく大切さを改めて感じたい。



<開催概要>
KAAT EXHIBITION 2025『大小島真木展|あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?』



会期:2025年9月21日(日)~10月19日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 <中スタジオ・アトリウム>
時間:11:00~18:00(入場は閉場の30分前まで)
休館日:火曜日(9月23日は開場)
料金:一般1,000円、大学・65歳以上500円
※コンセプトブック付
※神奈川県民割引(在住・在勤)あり
公式サイト: https://kaat-seasons.com/exhibition2025/

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