川栄李奈&福地桃子「プラスになるように」 舞台『千と千尋の神隠し』で橋本環奈&上白石萌音とともに挑む千尋役
左から)川栄李奈&福地桃子

宮﨑駿の原作を、ジョン・ケアードの翻案・演出で舞台化。2022年3月に世界初演として帝国劇場で開幕した舞台『千と千尋の神隠し』。

第47回菊田一夫演劇大賞を受賞するなど大きな注目を集め、2023年8月には名古屋・御園座で再演。2024年には再び帝国劇場で上演後、愛知、福岡、大阪、北海道、そして英国ロンドン・ウエストエンドでの上演も決定している本作で、新たに千尋役を射止めたのは川栄李奈と福地桃子。作品への思いや舞台への意気込み、クワトロキャストで演じる千尋役について話を聞いた。



「チャキチャキ」と「ふわふわ」時間軸がまったく異なるふたり

川栄李奈&福地桃子「プラスになるように」 舞台『千と千尋の神隠し』で橋本環奈&上白石萌音とともに挑む千尋役

――川栄さんと福地さんは初対面とのことですが、今のところの印象は?



福地 数年前に作品で一度ご一緒させていただいていたんですが、長い時間というのは初めてです。ご一緒してからもそうですが、尊敬する俳優さんのおひとりでしたので。なので、またお会いできることもとても嬉しかったですし川栄さんとお稽古をさせていただく時間は学びだなと思います。わたしはなんだろう......ついのんびりしてしまいますが、(川栄さんは)チャキチャキしてる……。



川栄 そう(笑)。たぶん時間軸が全然違うだろうなっていう、今日はまだひとつしかインタビューを受けていないんですけど、そう感じます(笑)。私はせっかちなんですけど、福地さんと一緒にいるとよりせっかちだなって思うというか、ふわふわ感がすごい素敵だなって。



福地 いやいや、気をつけようと思います(笑)



――『千と千尋の神隠し』という作品の魅力をおふたりはどう感じていて、どんなところに惹かれてオーディションを受けられたのでしょうか?



川栄李奈&福地桃子「プラスになるように」 舞台『千と千尋の神隠し』で橋本環奈&上白石萌音とともに挑む千尋役

川栄 (2001年の映画公開当時は)私自身も小さかったので、千尋が“10歳のちっちゃい子”だとは思わずに観ていて。今こうして千尋をやるとなって作品を観返すと、「こんなにちっちゃい子がこんなに頑張っているんだ!」みたいな親目線というか、必死で生きてる千尋の一生懸命さが素敵だなと思います。原作がとても好きなので最初に舞台化すると聞いた時も絶対に観たいと思って、当時、(千尋役の)上白石さんが朝ドラでご一緒で、そのご縁で観に行かせてもらいました。

ジブリ作品の中で一番好きで小さい頃から何回も観ていたので、そこに一番惹かれたのかなって思います。



福地 私が幼心に感じたのは、スクリーンに次々と登場する生き物たちの力強さと「千尋は、よくこんな怖い世界に飛び込んでいくな」ということ。奇妙な雰囲気がずっとあるけれど、目が離せない不思議さがありました。大人になると、普段の生活をしていてリアルに起こることではないのに、その場面がとてもリアルに感じるキャラクターの人間味だったり、もしかするとそういうところに子どもの頃は真っ直ぐに神経が向くことができるのかな、と感じて、ふたつの面から楽しめる作品だと思いました。そして舞台を通してこれからも、もっと楽しみが広がっていったら素敵なことだなと思っています。



川栄李奈&福地桃子「プラスになるように」 舞台『千と千尋の神隠し』で橋本環奈&上白石萌音とともに挑む千尋役

オーディションを受けた際に、映像を拝見したのですが、想像を遥かに超えていて……。

凄いものをみたという感覚でした。肉眼で一度観てみたい! 観てみたかった! と思いました。凄まじい努力があったんだろうなと、初演を創り上げたチームの皆さんへのリスペクトももちろんありました。私も原作が大好きで、映画の公開日に兄といっしょに母にせがんで連れて行ってもらったという話を、舞台の出演が決定してから聞き驚きました。子どもが観たいという映画に並んだのは「千と千尋の神隠し」が初めてだったそうです。



――ちなみに、一番印象深いシーンや、演じるのが楽しみなシーンはありますか?



川栄 オーディションでハクからおにぎりをもらって号泣するシーンをやらせてもらって、すごく印象的なシーンでいいなと思っていたんですけど……ただ、いざ舞台で一連の流れを通して見てると、めちゃくちゃ走り回った後の“極限の千尋”みたいなシーンなので、やるとなると心的にもすごく大変なんだろうなと思いました。



福地 私もオーディションでやったシーンで、ハクを助けるために、釜爺に電車のチケットをもらう、映画でも印象に残っていた場面です。自分の中で何かを見せようとする感覚ではなく、湧き出た感情を大事にしようと思えたのがそこのシーンだったので、これから稽古をしていきどんなふうに変化していくのかがとても楽しみです。



4人でワンチーム。熱量を繋いでいきたい

――初演舞台をご覧になった感想はいかがでしょうか?



川栄 本当に映画のまんまの登場人物だったりの再現度と、あと、人が手で動かしているのに、その技術がすごいのでパペットにしか目がいかなかったりとか、細部にまでこだわった演出が本当にすごいなと思いました。



福地 私は、生の空間で聞こえてくる音だったりと、原作の千尋の動きというものが、演じられる方によって合わさったことで生まれる魅力というか、一つひとつのシーンに可愛らしさだったり魅力が詰まっていて、それを肉眼で見られる、聞くことができるという贅沢な空間が舞台にはあるなと思いました。



――特に千尋役についてはいかがでしたか?



川栄 今、橋本さんと上白石さんの両方のDVDを観ているんですけど、同じセリフでも全然違う千尋になっていて。

上白石さんはすごく芯の強さみたいなのが最初からある。環橋本さんは、10歳の明るい無邪気な女の子というのがすごく出ていて、本当にふたりとも違ってすごく良くて、さらにその周りのキャストの方々も日によって変わったりするじゃないですか。それによっても、全然違う作品になるんだろうなと。何通り見てもすごいだろうなって思っています。



福地 (千尋は)本当にどのシーンにも登場するので体力面もそうですし、冒頭で不安を抱えながら登場してくる姿から、流れる風景の中で千尋がとても自然に逞しく見えてくるというのがとても印象に残っています。初演からご出演されているお2人が熱量を持って取り組んできたものを大切に「繋ぐ」という意識を持ち参加したいと思います。



川栄李奈&福地桃子「プラスになるように」 舞台『千と千尋の神隠し』で橋本環奈&上白石萌音とともに挑む千尋役

――あらためて、生の舞台に挑むお気持ちは?



川栄 いつも舞台はとても緊張してしまうのですが、観てくださる方も生で観て、良い意味でみなさん緊張しているし、ダイレクトに伝わるじゃないですか。セリフ間違えちゃったりとか、すごく調子が良いときもあればそうでないときもある。そういうことも全部感じ取れるのが舞台の良いところだと思っているので、もちろん頑張るんですけど、ほどよい緊張感を持って、お客さまと一緒に空気感を味わう自分も出して頑張れたらいいなって思っています。



福地 『橋からの眺め』(2023年9~10月上演)では幕が開いてからも朝に集まり稽古を重ねていたのでほとんどの時間をキャスト・スタッフと一緒に過ごしました。舞台の上で言葉を繋ぐ緊張感も一緒に作っている感覚、過ごしている時間全てが今改めて思い出してもとても貴重な経験でした。これからまた素晴らしいチームの皆さんと共に時間を作っていけること、私も千尋という役を、大切に生の緊張感も楽しみながら作っていけたらいいなと思います。



――同じ役を4人で演じることについてはどんなお気持ちを抱いていますか?



川栄 ライバル心は全くなく、本当に4人でワンチームじゃないですけど、そういう気持ちで作って行けたらいいなっていうのと、やっぱり、他のキャストの方々もそうですけど、初演のふたりが作り上げてくれたものなので、私たちが入ってプラスになるように、4人に増えてさらにパワー増したよねと言ってもらえるようなものにしたいなと思っています。



福地 こんなにも強い方がいて下さるっていう経験はなかなかない中で、あの表情の裏にはどんなことが起きているのかというのを知ることができるというワクワクもあるなと思いますし、ワンチームとおっしゃってくださったように、私もプラスになるように、発信できるように、そこにいられたらいいなと思います。



――4人千尋がいる中で、ご自身の千尋はどんな風になりそうか、こんな千尋になったらいいなという想像など教えてください。



川栄李奈&福地桃子「プラスになるように」 舞台『千と千尋の神隠し』で橋本環奈&上白石萌音とともに挑む千尋役

川栄李奈&福地桃子「プラスになるように」 舞台『千と千尋の神隠し』で橋本環奈&上白石萌音とともに挑む千尋役

福地 (まだ見たことのない)川栄さんの千尋...すごく楽しみです。舞台ならではの動きをやってみたらすごく難しかったんですよね?



川栄 しなやかな動きとか、座ってる状態からいきなりバッと立ったりとか、それこそ服が引っ張られてバッてなったりとか、家でやってみたんですけど全然できなくて(笑)、私結構不安なんですけど……。今回は橋本さんと上白石さんという先輩がいるので、教えてもらえるっていう得と、映像もあるので、良いところを吸収するっていうのは大切だなと思っています(笑)。自分がどうなるか自分でもよくわかってないです(笑)。



福地 千尋の動きの面だけで見ると、訓練だなと思いました。



――体力は自信がありますか?



福地 あり……ますか?(笑)



一同 (笑)



福地 私はどうだろう……(笑)



川栄 なんかすごいふわふわしてて……稽古場でめっちゃ鋭かったらどうしようっていうくらい、すっごいふわふわ。



福地 してますか(笑)



川栄 ふわーんって空気が流れているので、楽しみです、一緒に稽古していくの(笑)



福地 私もすごく楽しみです(笑)よろしくお願いします!



川栄李奈&福地桃子「プラスになるように」 舞台『千と千尋の神隠し』で橋本環奈&上白石萌音とともに挑む千尋役

取材・文:ぴあ編集部 撮影:TOMO
ヘアメイク:(川栄)KUMI(LODGE Corp.)・(福地)Moe Hikida
スタイリスト:(川栄・福地)武久真理江



<公演情報>
舞台『千と千尋の神隠し』



原作:宮﨑駿
演出・翻案:ジョン・ケアード
共同翻案:今井麻緒子

出演:
千尋:橋本環奈 / 上白石萌音 / 川栄李奈/ 福地桃子
ハク:醍醐虎汰朗 / 三浦宏規(帝劇公演を除く)/ 増子敦貴(GENIC)
カオナシ:森山開次 / 小㞍健太 / 山野光 / 中川賢
リン/千尋の母:妃海風 / 華優希 / 実咲凜音
釜爺:田口トモロヲ / 橋本さとし(帝劇公演を除く)/ 宮崎吐夢
湯婆婆/銭婆:夏木マリ / 朴璐美 / 羽野晶紀 / 春風ひとみ
兄役/千尋の父:大澄賢也 / 堀部圭亮
父役:吉村直 / 伊藤俊彦
青蛙:おばたのお兄さん / 元木聖也
頭:五十嵐結也 / 奥山ばらば
坊:武者真由 / 坂口杏奈
ほか

2024年3月11日(月)~3月30日(土)
会場:東京・帝国劇場

【ツアー公演】
2024年4月 愛知・御園座
2024年4月~5月 福岡・博多座
2024年4月30日(火)~8月24日(土) 英国ロンドン・コロシアム
2024年5月~6月 大阪・梅田芸術劇場メインホール
2024年6月 北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru



チケット情報:
https://w.pia.jp/t/spirited-away/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347848&afid=P66)



日本公演公式サイト:
https://www.tohostage.com/spirited_away/



海外公演公式サイト:
https://www.spiritedawayuk.com/