『野町和嘉―人間の大地』世田谷美術館で 世界各地の人々の信仰と暮らしを撮り続けてきた写真家の50年にわたる足跡をたどる
野町和嘉《氷河に十字架を建てるために登山する巡礼者。ペルー》2004年 © Kazuyoshi Nomachi

1972年にサハラ砂漠と出会って以降、世界各地の過酷ともいえる風土と、その土地で深い信仰心を支えに生きる人々を撮り続けてきた写真家・野町和嘉(のまち かずよし)の50年にわたる足跡をたどる大規模展が、7月5日(土)から8月31日(日)まで、東京の世田谷美術館で開催される。

1946年に高知県で生まれた野町は、写真家を志して上京。

1971年にフリーの写真家となり、25歳の時にサハラ砂漠を訪れたことをきっかけに、アフリカを広く取材し始める。1978年に写真集『サハラ』を5カ国で刊行。アフリカの人々をとらえた写真が各国のグラフ誌に掲載されるようになり、以後も、エチオピア、チベット、サウジアラビアと、外部の者が容易には近づけない土地を目指して旅を継続し、膨大な数の写真を撮り続けてきた。1982年に『LIFE』誌の記事により米国報道写真家協会年度賞・銀賞を受賞。2005年には30年の活動の集大成となる写真集『地球巡礼』を11カ国語で刊行し、2013年にはローマ市立現代美術館において、総点数225点による回顧展を開催するなど、海外でも高い評価を受けている。
『野町和嘉―人間の大地』世田谷美術館で 世界各地の人々の信仰と暮らしを撮り続けてきた写真家の50年にわたる足跡をたどる

野町和嘉《巨大砂丘麓の放牧。アルジェリア》1972年 © Kazuyoshi Nomachi

同展は、その野町の活動の足跡を、「サハラ」「ナイル」「エチオピア」「グレート・リフト・ヴァレー」「メッカとメディナ」「チベット」「アンデス」の7つのテーマのもと、代表作でたどるものだ。アフリカ、ユーラシア、南北アメリカ大陸へと、撮影のフィールドを広げつつ、一貫して人々の信仰と暮らしを追ってきた野町の活動の集大成を見せる展観となる。

『野町和嘉―人間の大地』世田谷美術館で 世界各地の人々の信仰と暮らしを撮り続けてきた写真家の50年にわたる足跡をたどる

野町和嘉《ディンカ族牧畜民。スーダン》1981年 © Kazuyoshi Nomachi

見どころのひとつは、野町の写真を通じ、「もう見ることのできない世界」が見られること。野町がアフリカ大陸奥地まで分け入った1970年代から80年代は、人々の暮らしは穏やかで安全だったというが、のちの政情不安や紛争により、今では入国できない国々も少なくない。また2000年以降のデジタル・テクノロジーの発展や携帯電話の普及により、各地の暮らしは平準化されてきた。

同じ場所を繰り返し訪れて撮影を続けてきた野町は、光景の変化を実感してきたという。人々の生活様式や風習や装いが急速に変化した現在、野町の写真の光景は、もはや見ることのできない、貴重な「人と大地のドキュメント」となっている。



<開催概要>
『野町和嘉―人間の大地』



会期:2025年7月5日(土)~8月31日(日)
会場:世田谷美術館
時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜(7月21日、8月11日は開館)、7月22日(火)、8月12日(火)
料金:一般1,400円、65歳以上1,200円、大高800円、中小500円
公式サイト:
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00225

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