
神奈川・平塚市美術館で、同市出身の画家・原良介の展覧会が、6月14日(土)から9月15日(月・祝)まで開催される。油絵具を用い、一貫して光の表現を追求している画家の、現在地点までを紹介する大規模な個展となる。
1975年生まれの原良介は、2002年に多摩美術大学大学院在学中に『第2回トーキョーワンダーウォール展』で大賞を受賞するなど、早くから注目を集めてきた。2009年には、東京オペラシティアートギャラリーの若手作家を紹介する企画『project N』に登場し、また2012年には、茅ヶ崎市美術館で『原良介 絵画への小径』を開催。近年は個展やグループ展のほか、レジデンス・プログラムやアートプロジェクトでの制作にも精力的に取り組んでいる。

原良介《フナ子》2024 年 作家蔵
原の油彩画の特徴は、基本的に塗り重ねをせず、一層で描かれていること。少ない手数で描いているが、対象の形や奥行き、前後関係を的確にとらえており、軽やかな筆遣いと光にあふれた明るい色彩が魅力である。また原が子供の頃から慣れ親しんだ平塚の地や、何度も取材した場所を描いた風景は、観る者にとっても、どこかで出会った懐かしい景色を想起させるものとなっている。子供たちの姿や、鳥のサギや魚のフナといった生き物をともなう風景は、自然と人間の接点、あるいははその境界としての風景のようにも感じられるだろう。
活動を始めた当初の作品では、ピンホールカメラの画像のように、動くものの形があいまいになったり消えたりするさまを、鑑賞者の視線の動きに重ねて描いていたというが、近年では、風景を画面の中に置かれた物体のように描いたり、それを画面から取り出して立体作品として表現する手法にも取り組んでいる。平面と立体を行き来する作品は、三次元のものを二次元に表現する絵画の現代的な意味を問いかけているとも言えるのだろう。かたちは違えども、一貫して光に満ちた作品を生み出し続けている原の初期から現在地点まで、その絵画空間をゆっくりと会場で味わいたい。

原良介《ぬけ》2014 年 個人蔵
<開催概要>
『原良介 サギ子とフナ子 光のそばで』
会期:2025年6月14日(土)~2025年9月15日(月・祝)
会場:平塚市美術館
時間:9:30~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜(7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日(火)、8月12日(火)
料金:一般900円、大高500円(土曜は高校無料)
公式サイト:
https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/