
ファンの応援を受けて懸命に走るパドマーワト
九州唯一の地方競馬「佐賀競馬」(佐賀県鳥栖市)で、0勝118敗と全敗記録を更新中の7歳牝馬パドマーワトが話題を呼んでいる。かつて「負け組の星」として一大ブームを巻き起こしたハルウララ(高知競馬)のデビュー以来113連敗の記録を5月に抜き、注目度が高まった。
2018年に北海道新冠町の牧場で生まれたパドマーワトは、20年6月に北海道の門別競馬場でデビュー。同年11月に佐賀競馬の柳井厩舎(きゅうしゃ)に移籍した。名前はインドの叙事詩に登場する美しい王妃に由来する。
調教師の柳井宏之さん(50)によると、性格は「おとなしく、音に敏感で怖がり」。集団で走るとひるむため、視界を一部遮る馬具を着けて前方に集中させようと試みたが「見えないことで余計に恐れるようになった」という。

調教師の柳井宏之さんとパドマーワト
餌を残しがちで体が細く、負荷をかけて鍛えようとすると筋肉痛になってしまう虚弱体質。休養を挟んで走らせると体調を崩すため、2週間に1回のペースで出走させながら調整している。
昨年4月、休養を取ってはり治療を施し、立て直しを図ったものの「何も効果はなかった」と柳井さんは苦笑いする。一番低いクラスで戦っていても新しい馬が入ってくるため「1勝するのは簡単じゃない」。けがなく無事に帰還することを願いながら、レースに送り出す。
ファンの存在にも支えられている。
地方競馬全国協会(東京)によると、記録が残る1973年4月以降の地方競馬の全敗最多記録は、2021年10月のレースを最後に引退したダンスセイバー(門別競馬)の229敗。上には上がいる。
パドマーワトの最高順位は3着。「勝って有終の美を飾るのが一番良いけど、なかなか…」(柳井さん)。それでも念願の1勝を目指し、パドマーワトは走り続ける。(前田絵)