「隙を見せない“王道のアイドル”から、そろそろ“現実的な中島健人”を見せてもいいフェーズに来ている」社会との結びつきも意識していきたい29歳の今

真保裕一の同名原作を映画化した『おまえの罪を自白しろ』に主演した中島健人。正統派のアイドルからイメージを一新し、誘拐された姪を救うべく奮闘する議員秘書を演じている。

俳優としての新たな挑戦について話を聞いた。(トップ画像:©️ 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会)

サスペンス映画初主演で「新・中島健人」が誕生

「隙を見せない“王道のアイドル”から、そろそろ“現実的な中島健人”を見せてもいいフェーズに来ている」社会との結びつきも意識していきたい29歳の今

©️ 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

──『おまえの罪を自白しろ』(2023)で演じたのは、国会議員の父親・宇田清治郎(堤真一)の息子であり秘書でもある宇田晄司役です。中島さんにとって、新境地と言えるキャラクターですね?

これまではアイドルとして、華やかな世界に特化した “中島健人”というキャラクターを活かす作品が多かったのですが、ここ数年で変化してきましたね。

『ラーゲリより愛を込めて』(2022)から、より骨太な人間を演じさせていただくようになったと感じていて。そんな思いを抱きながらこの映画の撮影を終えて、完成した作品を見たときに、自分でも「新・中島健人だ」という感覚を覚えました。

──それは中島さんの意思で変化しているものなのでしょうか?

今年、29歳になったので年齢的なこともあると思います。明るく華やかでポップな作品も楽しいので続けていきたいのですが、その一方で『おまえの罪を自白しろ』のような、現実と地続きのシリアスな作品にも出演していきたい。

今、こうした両タイプの作品に出演させていただけるようになり、本当にうれしいんです。

みなさんが認識している“中島健人”は隙を見せない王道のアイドル的な存在だと思うのですが、そろそろ現実的な“中島健人”を見せてもいいフェーズに来ていると感じます。

──俳優・中島健人としては、リアルな一面を映像作品で見せていきたいということですか?

そうですね。正直、まだまだ俳優としては満たされていない、これからだと思っています。Netflix映画『桜のような僕の恋人』(2022)が俳優・中島健人のエピソード0だとしたら『ラーゲリより愛を込めて』がエピソード0.5、『おまえの罪を自白しろ』がエピソード1ですね。

『桜のような僕の恋人』は撮影が本当に楽しくて、ある意味、自分を解放できた作品だったんです。
あの作品から『ラーゲリより愛を込めて』『Concordia(コンコルディア)』(2024/Hulu独占配信予定)『おまえの罪を自白しろ』と、順調に進んでいると思います。

ただ、自己満足ではダメだとわかっています。やはりお客さまに成長している姿を見ていただきたいし、タイプの違う役を演じているので、僕自身とのギャップも感じていただければと思います。

中島健人、もしかして政治家向き?

──国会議員の秘書・宇田晄司役の役作りを教えていただけますか?

国会議事堂に行き、衆議院予算委員会の見学をさせていただきました。その光景は想像していたよりも淡々と会が進んでいくという印象でしたが、やはりそれぞれの議員の方たちは国民のために働くという責任の中、プレッシャーと闘うのは大変だろうなと思いながら見ていました。

議員秘書を演じるため、できるだけポジティブな視線で見るように心がけましたね。そうそう、議員会館の食堂でカレーライスを食べました。

美味しかったです(笑)。

「隙を見せない“王道のアイドル”から、そろそろ“現実的な中島健人”を見せてもいいフェーズに来ている」社会との結びつきも意識していきたい29歳の今

©️ 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

──父親役は大先輩の堤真一さんですが、役についてお話しされたりしましたか?

最初の本読みでお会いしたときはすごく緊張しましたが、実際にお話ししてみたら、とても話しやすい方で楽しく仕事ができました。記念写真をお願いしたら「いいよ」と言ってくださったので、自撮りを5カットくらい撮ったのですが、堤さん、全部変顔なんですよ(笑)。

そんな風にお茶目な一面もありつつ、芝居に入ると迫力があり怖いくらいなので、そのギャップがかっこいいですね。僕の目指す俳優さんです。

──角野卓造さんとのシーンも緊張感ありましたね。



印象深かったですね。角野さんは幹事長役で、晄司との間にヒリヒリする駆け引きがあるのですが、素顔は“駅弁の話をするのが大好き”な楽しい方なんです(笑)。その角野さんが、芝居になるととてつもなく怖い。恐ろしすぎて僕はNGを出してしまいました。

──宇田晄司役がハマりすぎて、中島さんは政治の世界に向いているのではないかと思いました。

僕も政治の世界に興味がないわけではなく、一時期、アメリカの大統領についての本を夢中になって読み、ロナルド・レーガン大統領が好きになりました。


政治家とアイドルは意外と共通点があると思います。活躍する世界は違うけど、人前に立つこと、自分をアピールすることは一緒だなと。僕らが東京ドームや横浜アリーナでパフォーマンスを通して打ち出していることは、大統領演説と似ているのかもしれないと思いました。

時は止められないけど、時を残すことはできる

「隙を見せない“王道のアイドル”から、そろそろ“現実的な中島健人”を見せてもいいフェーズに来ている」社会との結びつきも意識していきたい29歳の今

©️ 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

──『おまえの罪を自白しろ』の撮影では、主演俳優として座長的な意識で臨まれたのでしょうか?

これまで共演者は同世代が多かったけど、今回は年上の先輩俳優たちとの共演。映画界のレジェンド俳優が揃っていたので座長という意識はなかったです。同世代の共演者なら「みんなで頑張っていこう」とリードしていたと思いますが、この映画の共演者はみなさん自立した大人の俳優ですから、僕は主演としてしっかり立つことを考えていました。

でも、できれば差し入れをしたかったですね。

いつもはカフェカーでオムライスの差し入れをするのですが、撮影が猛暑の夏だったのでできなかったんです。でも堤さんからカフェカーでカフェラテの差し入れがありまして。先越された~と思いました(笑)

──これまでとは一味違う、シリアスな作品に出演したことは、中島さんにとってどんな経験でしたか?

「20代も30代も意識は変わらないよ」という先輩もいるのですが、僕は20代の表情を作品として残したいという気持ちがあります。時を止めることはできないけど、残すことはできるし、それができるのが映画ではないかと。そういう意味でも今の年齢で、この映画に出演できたのは大きかったです。

──本格的に大人の俳優へと歩み始めたのですね。

アイドルの仕事をしていると、すごく若い気持ちでいられるんですよ。でも同じ年の友達は、警察官、消防士、コンサルタントなど、それぞれの職業で自分の人生を歩んでいて、年相応にすごく大人でしっかりしています。

若い気持ちでいるのも大切ですが、その一方で年相応の感覚は身につけておきたいし、芸能界にいながら社会との結びつきも意識していきたい。そういう気持ちにさせてくれたのは『おまえの罪を自白しろ』ですし、この気持ちを忘れずに芝居をしていきたいです。

映画に詳しくなりすぎないように心がける!?

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©️ 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

──中島さんはアカデミー賞授賞式のレッドカーペットのレポートやWOWOWの「中島健人の今、映画について知りたいコト。」などでスター俳優や映画関係者の取材をされています。そういった経験が、俳優・中島健人の力になっていると感じることはありますか?

『おまえの罪を自白しろ』の照明の藤井勇さんは、是枝裕和監督の『万引き家族』(2018)で第42回日本アカデミー賞最優秀照明賞を受賞した方で、以前、取材でお世話になったことがあるんです。やはり面識がある方がスタッフにいるといいですね。「健人をいい光で照らしたい」と言ってくださってうれしかったですし、そういうつながりが太ければ太いほど、チームの結束は強くなっていくのかなと思いました。

──取材でつながりが増えていきそうですね。

そうですね。でも俳優をやる上では、あまり詳しくなりすぎてもいけないと感じます。人にもよると思いますが、僕の場合は、製作側のことを知りすぎてしまうと、現場でいろいろなことが目について、あれこれ意見してしまうかもしれない。

河瀬直美監督が「映画はひとつの体だから、一箇所でも主張が強いと体のバランスが悪くなってしまう。だから全体的に均一になるよう、それぞれのパーツの最適を考えている」とおっしゃっていて、なるほどと思いました。その言葉を忘れないようにしています。

──さまざまな世界の映画監督にも取材されていますが、一緒に仕事したい、この監督の現場を見たいと思う人はいますか?

Netflixドラマ『BEEF/ビーフ~逆上~』(2023)など、ハリウッドでも活躍している監督のHIKARIさん。アメリカで活躍の場をどんどん広げていてすごいですよね。あとNetflixの『ONE PIECE』(2023)に出演している(新田)真剣佑のことも誇りに思います。続編があったらエネル役で出演したいなあ(笑)。

現場を見たいと思うのはクリストファー・ノーラン監督。『TENET テネット』(2020)のときに対談させていただいたのですが、ノーラン監督はリアルを追求する方なので、その現場を一度見てみたい。日本で撮影してくれないかなと思うし、できれば出演もしたいです。

取材・文/斎藤香 ヘアメイク/小宮山由佳(IKEDAYA TOKYO)スタイリスト/柴田拡美(Creative GUILD)

中島健人 なかじま・けんと
1994年3月13日生まれ。東京都出身。2011年にSexyZoneとしてCDデビュー。俳優としてドラマ『生まれる。』(2011/TBS)、『黒服物語』(2014/テレビ朝日)『彼女はキレイだった』(2021/NTV)『シッコウ!!~犬と私と執行官~』(2023/テレビ朝日)。映画『銀の匙Silver Spoon』(2014)『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016)『心が叫びたがっているだ』(2017)『桜のような僕の恋人』『ラーゲリより愛を込めて』(2022)『トランスフォーマー/ビースト覚醒』(2023/声の出演)。最新作はHuluオリジナル海外ドラマ『Concordia(コンコルディア)』(仮題)が2024年配信予定。

『おまえの罪を自白しろ』(2023)上映時間:101分/日本

「隙を見せない“王道のアイドル”から、そろそろ“現実的な中島健人”を見せてもいいフェーズに来ている」社会との結びつきも意識していきたい29歳の今


政治家一族の宇田家の長男・晄司(中島健人)は、建設会社を設立したが失敗。スキャンダル渦中の国会議員の父・清治郎(堤真一)の秘書になる。ある日、一家の長女・麻由美(池田エライザ)の娘が誘拐される事件が発生。犯人からの要請は身代金ではなく清治郎に「明日の午後5時までに記者会見でお前の罪を自白しろ」というものだった。それは国家を揺るがす“罪”。姪の命を助けるため、晄司は行動に移すのだが……。

10月20日(金)より、全国ロードショー
配給:松竹
©️ 2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/omaenotsumi/