マクドナルドで“2つ”の特別扱いを受ける冬の定番バーガー「グラコロ」が30年前の発売当初から一切変わらないもの

マクドナルドの冬の風物詩「グラコロ」が今年も販売を開始する。冬季限定商品の中でも人気のバーガーだが、実はもともと冬向け商品ではなかったという。

今年で30周年を迎えるグラコロの人気の秘訣と歴史について、日本マクドナルド広報の當山心氏とハンバーガー評論家・松原好秀氏に聞いた。

実はグラコロは冬向けの商品ではなかった!?

トロトロでクリーミーなグラタンコロッケがサンドされた冬のマクドナルドを代表するハンバーガーメニューの「グラコロ」。

今年も11月29日(水)より期間限定で販売がスタート。同時発売となる新作「濃厚ビーフハヤシグラコロ」は、牛肉とタマネギをデミグラスソースに絡めたビーフハヤシフィリングと、3種のチーズ使用のチーズソースを合わせた、懐かしくも新しい味わいの一品に仕上がっている。

1993年に「グラタンコロッケバーガー」という名前で販売開始したグラコロだが、「もともとは冬向けの商品ではありませんでした」と當山氏は言う。

マクドナルドで“2つ”の特別扱いを受ける冬の定番バーガー「グラコロ」が30年前の発売当初から一切変わらないもの

2023年11月29日から期間限定で販売スタート、新作は「濃厚ビーフハヤシグラコロ」

「そもそもグラコロのコンセプトは、“町の洋食屋さんのグラタンコロッケ”の再現にありました。当時の開発担当者がある洋食屋で出会ったグラタンコロッケがあまりにもおいしかったので、これを自分たちで再現しようと開発に至ったんです。

そのため、コンセプトそのものが冬向けということではなく、発売当初は4月に販売していました。

ですが、グラタンコロッケのクリーミーさ、食べると“ほっ”と身体が温まる、という特徴を考えたときに、実は冬のほうがお楽しみいただけるのではないかとなり、1995年の再販売からは冬の期間限定商品として販売するようになりました」(當山氏)

消費者の間でも冬とグラコロの相性を絶賛する声が出始め、次第にグラコロには“寒い冬の時期に温かいグラタンコロッケ”といったコンセプトが確立。

ちなみに、マクドナルド公式の2007年のリリース文には「冬の定番メニュー」との文言がつけ加えられ、2015年からは「冬の風物詩」と銘打たれるように。ちなみに現在の「グラコロ」という省略形の名前は2007年から正式に採用されたという。

発売から30年間、毎年グラコロは改良を少しずつ加えているものの、まったく変わらないものが1つあるという。

朝マックでも販売され、より多くの人の手に

グラコロは30年間、実は見た目がほとんど変わっていない。

當山氏によれば、2016年に大きなリニューアルを行い、味の決め手となる2つのソースやバンズを改良し、濃厚でリッチな味わいに進化した「超グラコロ」を販売した(現在の「グラコロ」)というが、基本的には姿、形は発売当初のままだ。

それだけオリジナルのコンセプトや味が完成されていたのだろう。

マクドナルドで“2つ”の特別扱いを受ける冬の定番バーガー「グラコロ」が30年前の発売当初から一切変わらないもの

超グラコロ(2016年販売)

一方で、グラコロは新作の開発も盛んに行われており、近年では毎年のように新しい味が販売され、大人気だ。なかでも2018年販売の「濃グラコロ チーズフォンデュ」、2022年販売の「ふわとろたまご 濃厚デミグラコロ」など、クリーミーなグラタンコロッケを濃厚で味わい深くした商品の開発に力を入れているそうだ。

マクドナルドで“2つ”の特別扱いを受ける冬の定番バーガー「グラコロ」が30年前の発売当初から一切変わらないもの

濃グラコロ チーズフォンデュ(2018年販売)

マクドナルドで“2つ”の特別扱いを受ける冬の定番バーガー「グラコロ」が30年前の発売当初から一切変わらないもの

ふわとろたまご 濃厚デミグラコロ(2022年)

そして、2017年冬からは朝マックでの販売もスタートした。通常、マクドナルドの期間限定商品は10時30分以降に販売されるか、もしくは「~~マフィン」というようにアレンジを加えて販売されるが、當山氏は「寒い冬の朝から温まってもらう」ためにグラコロのみ朝から販売することになったそうだ。

「グラコロのうた」で認知度がアップ

ハンバーガー評論家の松原好秀氏いわく、グラコロがここまで支持を集めたのは、「コロッケパン」という商品の性質と、グラコロのCMでお馴染みの「グラコロのうた」の存在が大きかったという。



「コロッケパンは、街のパン屋さんでも販売されるほど身近なので、ふだんマクドナルドを利用しない層にとっても魅力的な商品として目に映り、結果として客層が広がったんだと思います。

そして、「グラコロ~グラコロ~♪」というコミカルな歌詞が印象的な曲が、キャッチーなメロディで誰でも覚えやすく、歌いやすい曲調で耳に残る。しかも、マクドナルドのなかでも珍しい、この商品のためだけに作られたCMソングなんです。

期間限定商品には、ほかにも『月見バーガー』や『チキンタツタ』がありますが、オリジナルソングがあるのは唯一グラコロだけ。そう、グラコロは特別扱いなんですよ。冬の定番というコンセプトに加え、商品を連想しやすい曲が毎年流れることで、グラコロはより多くのの人にとって身近な存在になったのでしょう。
今では歌詞も付いて、すっかりバラード調のアレンジですが、元はアップテンポな曲でした。聞き比べてみるとおもしろいですよ」(松原氏)

マクドナルドで“2つ”の特別扱いを受ける冬の定番バーガー「グラコロ」が30年前の発売当初から一切変わらないもの



そして、近年のグラコロでは、冬の風物詩というコンセプトのほかに「年の瀬を感じる」商品としての側面も強まってきたとのこと。

「頑張った1年のごほうび、季節の移り変わり、そういった“年末感”を訴える内容に、グラコロのCMが年々変化して行っている印象を受けます。マクドナルド公式のリリース文でも、2021年から『1年を締めくくる』との文言が追加されており、グラコロを食べて、よい年末を過ごしてほしいといったメッセージに感じますね」(松原氏)

年末という特別な時期に、“ほっ”と温まる商品を食べると、心機一転して年明けからもがんばることができそうだ。マクドナルドの當山氏も、人々の“あたたかな思い出”が増えるように、グラコロを引き続き販売していく予定だと語る。

「30年もの長きにわたり、毎年大変多くのお客さまに冬の定番メニューとしてご愛顧いただいて本当にうれしく思います。

今後もグラコロを召し上がって、冬の到来を感じていただき、心も身体も温まっていただければ幸いです」(當山氏)

取材・文/文月/A4studio