9万6800円のインバウンド和牛って…「高すぎる!」「日本人は行かなくていいですね」それでも外国人観光客の爆食いは止まらない

2024年の訪日外国人の数は、コロナ禍以前を上回る3310万人と過去最多を予測されている(JTB調べ)。観光客でにぎわう東京・浅草も連日、多くの外国人でにぎわっているが、なかでも注目はインバウンドに向けた飲食店だ。

1食9万6800円の超高級な神戸牛を提供するレストランを取材した。

9万6800円の和牛を浅草で提供

歴史的な円安の追い風とコロナ禍で停滞していた外国人観光客の回復もあり、インバウンド需要がめきめきと復活しつつある。2月下旬の春節が過ぎたころ、東京・浅草を訪れると、平日にもかかわらず大勢の観光客でごった返してにぎわっていた。

ざっと見たところ、6~7割が外国人観光客といったところだ。着物を着たり、食べ歩きをしたり、人力車に乗ったりと浅草を満喫している。

そんな浅草の一等地で店を構えているのが、神戸牛専門店「神戸牛ダイア」。2022年12月に浅草で1号店を出店してから、わずか1年ちょっとの短期間で浅草に8店舗を展開し、一躍浅草の名物店となった。



メニューはウン万円の神戸牛ステーキなどを多数とりそろえており、一番高価なメニューは220グラムで9万6800円(税込)のエンペラーブリアンステーキだ。

9万6800円のインバウンド和牛って…「高すぎる!」「日本人は行かなくていいですね」それでも外国人観光客の爆食いは止まらない

「神戸牛ダイア」のエンペラーブリアンステーキ

この値段からして、味は間違いなさそうだが、それにしてもこの超高級ステーキ、いったいどんな人がオーダーするのだろうか。「神戸牛ダイア」浅草1号店で、東京エリア責任者の東野秀明さんに話を聞いた。

「インバウンドの効果は感じています。ただ、春節で中国の方が増えたというのは若干でしかありません。アジアの近隣諸国でも同じタイミングでお休みになるので、2月からはそちらからも増えてきているかなと感じています。

基本的には外国人のお客さまが多くて、1月後半に少し落ち込んだ時期はありましたが、2月の春節に向けて、また上向いてきた感じですね」

来店客の国籍の割合は、6:4くらいの割合でアジア系の観光客が多く、豚肉を食べないハラル(イスラム圏)の人もたくさん訪れるそうだ。スリランカ、マレーシア、シンガポールなど多岐にわたる。

9万6800円のインバウンド和牛って…「高すぎる!」「日本人は行かなくていいですね」それでも外国人観光客の爆食いは止まらない

ステーキ重を食べて満足そうな外国人観光客

「やはり一番売れるのはサーロインですが、観光目的ですのでいろいろ食べたいということから、お寿司とお刺身がついたセット、お重なども人気です。あとはウニ。年末年始は中国の方がたくさん食べられていた。意外と人気だなと感じたのはメロンソーダ。

メロンソーダがこんなに売れると思わなかった(笑)」

ちなみに、気になる一番高価なエンペラーブリアンステーキの売れ行きはどうなのだろうか。

豊洲・築地でもインバウンドで大にぎわい

「今日も1食出ましたよ。平均すると1日1食くらいは売れています。浅草には8店舗系列店があるので、どこかしらでは出ているといった感じですね。そんなに珍しい話でもなくなってきています」

取材した当日も店舗の2階に足を運ぶと、ヨーロッパ系、アジア系とさまざまな人種の外国人観光客が、おいしそうにステーキを食べていた。

9万6800円のインバウンド和牛って…「高すぎる!」「日本人は行かなくていいですね」それでも外国人観光客の爆食いは止まらない

「神戸牛ダイア」のメニュー表

インバウンド価格としては、いまや目を見張るような価格の海鮮丼や和牛が注目されている

2月中旬には、春節を迎えた中国から多くの観光客が日本に押し寄せて、東京・築地市場で和牛の牛串を食べるための行列が作られていた。



高価な和牛を豪快に串に刺して焼き、使い捨ての白い簡素な紙皿に乗せて提供され、それを手に持ちながら築地市場を食べ歩く。一般的な日本人の金銭感覚からはあまりもかけ離れている。

また、2月1日にオープンした大型商業施設「豊洲 千客万来」では、フードコートにある海鮮丼店『江戸辻屋』にて6980円の海鮮丼が販売されている。SNSでは日本人ユーザーたちが「ふだん使いしたかったけど、これは無理ですね。高すぎる!」「日本人は行かなくてもいいですね」と悲鳴をあげた。

フードコートという庶民の憩いの場ともいえる場所で、気軽に超高級海鮮丼を食べるさまも、やはり庶民には考えられない光景だ。


過去には物価の安い東南アジアで豪遊しようと、海外旅行に繰り出していた日本人だが、今ではその日本が昔の海外の観光地のようになってきている一面がある。

取材・撮影・文/集英社オンライン編集部