「僕は!!! 審査員様だ!!!」R-1審査員で大炎上…王者になり大会卒業後も盛り上げ続ける、お見送り芸人しんいちのR-1への愛と感謝

3月9日、ピン芸人の日本一を決める『R-1グランプリ2024』(以下、R-1)が開催される。4年ぶりに「芸歴10年以下」という出場制限が撤廃されるなど、予選から熱気を帯びる中、2022年大会の王者・お見送り芸人しんいちが準決勝の審査員を務めたことで注目を集めた。

優勝後のいまもR-1を盛り上げる、お見送り芸人しんいち。なぜ彼は嫌われるのか、優勝後の変化と審査員を務めることで勃発した炎上騒動について話を聞いた。

R-1優勝後、実のない後輩と飯にいくのはやめた

――もうすぐR-1グランプリ2024ですが、2年前の優勝を振り返っていかがですか?

お見送り芸人しんいち(以下同) 実のところ優勝するつもりはあまりなかったです。当日会場に向かう道中、車内でマネージャーから「今日は優勝するぞ!」と発破をかけられたのですが、僕は「まあまあ…ZAZYが優勝でしょう」みたいな一歩引いた感じでした。

――気負っていなかったからこそ優勝できたのでは?

かもしれません。最終決戦でZAZYと吉住の3人で残ったときも「もうここまで来られただけで満足です」と思っていました。いい感じで力が抜けてネタができたからこそ優勝できたんだと思います。


「僕は!!! 審査員様だ!!!」R-1審査員で大炎上…王者になり大会卒業後も盛り上げ続ける、お見送り芸人しんいちのR-1への愛と感謝

お見送り芸人しんいちさん

――人生が変わるといわれていますが、優勝して何か大きく変わったことはありますか?

一緒にいて“実のある後輩”と一緒にご飯に行くようになりました。実のない後輩と飯行っても旨味がないので(笑)。また、「や団」さんとか「ゆんぼだんぷ」さんとか仲のいい先輩芸人にご飯をおごる機会が増えました。

――どちらも知名度のある芸人さんだと思いますが。

や団さんは『キングオブコント』に2年連続で決勝出場して、ゆんぼだんぷさんは『ゴット・タレント』に出演しています。どちらも露出は結構していますが、コンビやトリオですので給料を折半しなければいけません。

まだまだ生活は安定していない感じです。

――ちなみに、ゆんぼだんぷさんと、や団さんは実のある先輩芸人ですか?

実のある側ではないです(笑)。ただ、付き合いが長いので一緒にいると安心します。

自分以外は傷つかない唯一無二の毒舌

――エッジの効いた毒素満載なネタが持ち味のしんいちさんですが、優勝して“強者”になったことでネタの作り方は大きく変わったのでは?

優勝前はウケていたネタが、優勝後には一切ウケなくなることが増えました。例えば、「お金配ってるときだけフォロワーが多いあの社長好き」というネタがあるのですが、お客さんの頭に「おまえもお金持ってるやん」と浮かんでしまうため全然ウケません。優勝したことによる影響は本当に大きいです。

最近までネタ作りや立ち回りにずっと悩んでいたのですが、本当にここ1か月で自分なりの戦い方が見えてきました。



――その戦い方とは?

毒を吐いているフリをしながら自虐する感じです。以前出演した番組で話したエピソードなのですが、ある日「テレビ番組に出演したグラビアアイドルが『しんいちさんに狙われているんです』と話していたので、宣材写真を使わせてほしい」という連絡がスタッフさんからありました

――そういった発言をする若手のグラビアアイドルさんは多いですね。

もちろん「OK」を出したんだけど、僕はそのグラビアアイドルさんとはすでに大人の関係になりました。断じて狙っているわけではありません。ですので、「大人の関係になったことを伏せて“狙っている男”のフリをしなければいけないの、本当にツラいんですよ」と悔しさを話しました。

「僕は!!! 審査員様だ!!!」R-1審査員で大炎上…王者になり大会卒業後も盛り上げ続ける、お見送り芸人しんいちのR-1への愛と感謝

――大人の関係を認めた上で……新しい角度のエピソードトークに感じますが、現場のリアクションは?

僕も挑戦的なトーク内容だと思ったんですが、自分の予想以上にウケました。

一見グラビアアイドルさんに毒を吐いているようで、最終的には「しんいちが最低」というオチになっています。グラビアアイドルさんの名前を出しているわけでもありません、僕だけ傷ついてウケをとることができ、手ごたえを感じました。

――ある意味“(しんいちさん以外は)誰も傷つけない笑い”という今の時代にフィットしたスタイルでもあります。

サンドウィッチマンさんと一緒のライブに出演して、舞台上で富澤(たけし)さんから「とりあえずしんいちのせいにしておけば全部丸く収まるよな」と言われたとき、会場は大爆笑が起きました。僕が損することで笑ってくれる人は多いと思うので、その辺りを上手く活かしたいです。ここまであけっ広げに話すと、今後やられ役になった時に素直に笑ってくれるのかは不安ですけど(笑)。

「僕は!!! 審査員様だ!!!」R-1審査員炎上の裏側

――『R-1グランプリ 2024』準決勝の審査員を引き受けたそうですが、他人の人生を左右しかねない審査員を引き受けることに抵抗はなかったですか?

三浦マイルドさんや中山功太さんなど歴代王者を差し置いて、つい最近チャンピオンになった僕が審査員をやることで、賛否両論が起きるとは予想していました。それでも、僕はR-1に対する愛情や感謝は誰よりも強い自信があったため、喜んで引き受けました。

――R-1優勝のトロフィーを1年間持ってメディア出演したりなど、確かに愛情は人一倍強いイメージがあります。

ピン芸人はバラエティ番組に出演してもフォローや説明をしてくる相方がいないため、なかなか立ち回りが難しい。そんなピン芸人の僕が現在テレビに出られているのは間違いなくR-1のおかげです。恩返ししたい気持ちも人一倍強いと自負しています。

「僕は!!! 審査員様だ!!!」R-1審査員で大炎上…王者になり大会卒業後も盛り上げ続ける、お見送り芸人しんいちのR-1への愛と感謝

――Xで「僕は!!! 審査員様だ!!!」と投稿して炎上したことにより、“否”がかなり多い賛否両論が起きました。

この炎上もある意味狙い通りでしたか?

そうです。『M-1グランプリ』や『キングオブコント』と比較して、R-1は舐められているイメージがあります。なんとか注目を集めるために投稿しました。注目されることには成功はしましたが、炎上の火力があまりに大きかったことは計算外です(笑)。

――今回は異常なほどに燃え盛りました。

SNSやヤフコメを見ると、「僕が決勝の審査員をやる」と勘違いして批判している人が多かったです。それはそれで決勝を見たときに「しんいちいないじゃん!」となるので、盛り上がる要因を1つ作れたと前向きに考えています。

ZAZYは9割本気で怒っている

――また、しんいちさんに対してZAZYさんが「やっぱり大会全体のモチベーションを保つために最低限、出場者が審査されて納得いく人を審査員にしてほしいな」とXで投稿、これにおいでやす小田さんは「R-1のために言うで!これに関してはZAZYが正しいと思う」と反応したことも火に油を注ぎました。

多分ZAZYは9割本気で僕の投稿に怒っています。ZAZYは僕の足を引っ張りたくて生きている人間なので(笑)。ただ、ケンカ芸が下手くそで、なおかつ「賢く見られたい」っていうプライドの高さもあります。そのせいで今回のように変な絡み方になることが珍しくありません。

――今回もある意味通常運転だと


はい。立川志らく師匠が「彼に文句を言うのは筋違い」とXで僕を擁護してくれたのですが、そのことでZAZYもうっすら燃え始めました。だからなのか、ZAZYは火消しするために急に“しんいち擁護派”に転身して、「しんいちワンチャン決勝の審査員までやったほうが大会が面白くなる気がしてきた笑」と意味のわからんことを言い出した。本当にあいつが1番ふわふわしています(笑)。

「僕は!!! 審査員様だ!!!」R-1審査員で大炎上…王者になり大会卒業後も盛り上げ続ける、お見送り芸人しんいちのR-1への愛と感謝

―― 一方、小田さんは?

小田さんはわかりません。ただ、準決勝前に小田さんに会ったときに「あれはしんいちくんじゃなくて事務局に言いたかっただけで」「伝え方が悪かった」と事情を説明してくれました。小田さんもR-1に熱い思いのある人なので、思いが溢れ過ぎて上手く僕と噛み合わなかったのかもしれません。

――文章ではなかなか上手く伝えられない部分もありますよね。

かなり難しいです。炎上するとはわかっていましたけど、過剰に燃えないように「!」を多めにつけたり、あからさまに天狗の絵文字をつけたり配慮したつもりです。それでも、「気をつけなあかんな」と思いました。

――ちなみに小田さんとのわだかまりは解消されましたか?

準決勝の開始前に舞台で1~2分ほど審査員として喋る時間がありました。そこで「まだ始まってないですけど、小田さんには0点と書かせていただきます」とボケたら、舞台裏から「100点って書け!」と絶叫してツッコんでくれたので遺恨は一切ないと思います。
《後編》へつづく

取材・文/望月悠木 撮影/村上庄吾