マンションは、戸建住宅を買えない人が住むところ? 上昇、なだらかに下落、無価値…日本の不動産市場で起きている「三極化」の現実
マンションは、戸建住宅を買えない人が住むところ? 上昇、なだらかに下落、無価値…日本の不動産市場で起きている「三極化」の現実

マンションの価格高騰が止まらない。都心のマンションを中心にバブル期超えの最高値を更新中だ。

しかしその実態は玉石混淆で、資産性を維持できる「選ばれるマンション」と資産性を落とす「選ばれないマンション」の物件格差がかつてないほど広がっている。

資産性が落ちない「選ばれるマンション」の見極め方、住み方をプロが伝授した『マンションバブル41の落とし穴』より一部抜粋。再構成してお届けする。

マンションは、戸建住宅を買えない人が住むところ?

日本の都市部・好立地マンションの価格は、2012~2013年頃から上昇し続けています。コロナ禍のような非常事態においても活況は続き、平成バブル以来の大規模な不動産バブルと称されています。

背景にあるのは日銀の金融緩和政策と、それに伴う低金利です。金融機関にお金を借りやすい状況が、多くの人の不動産購入を後押ししました。

人気が集中したのはマンションです。国土交通省が毎月発表している「不動産価格指数」を見ると、2010年のマンション価格指数の平均は100前後ですが、2023年には約190まで上昇。戸建住宅価格の指数も上昇していますが、2010年の平均はマンション同様100前後ながら、2023年の平均は120に届かず、上昇幅はマンションの比ではありません。

要するに今、マンションは戸建住宅以上に人気があり、なおかつ価格も高いのです。

一昔前はマンションよりも戸建住宅のほうが全般的に価格は高く、戸建住宅に住むことが一種のステータスであり、「マンション=戸建住宅を買えない人が住むところ」と見る向きさえありました。

1970年代頃、ちょうど高度経済成長期と重なる時代ですが、当時は社会人になったら賃貸の木造アパートなどに住み、結婚して賃貸マンションに住み替え。

その後、分譲マンションに移り、さらにお金が貯まったら郊外に庭付きの戸建住宅を購入してゴール──というコースが理想とされ、一連の流れは「住宅すごろく」と呼ばれていました。

ゴールした後、子どもが巣立って夫婦、あるいは単身住まいになってからは、そのまま戸建住宅に住み続けるパターンのほか、サイズの小さいマンションや老人ホームなどに住み替えるパターンも多くなります。実際、団塊の世代以上の年代では、このようなコースをたどっている人が多いでしょう。

しかし、今やこの住宅すごろくのコースは様変わりしています。

日本経済は著しい成長段階を過ぎ、年功序列で黙っていても給料が増えていく時代も終わりました。夫が一馬力で働き、妻が専業主婦という従来のモデルケースに当てはまる世帯は減少し、共働きが当たり前に。

その結果、限られた時間を有効活用するべく、生活利便性を重視する風潮が強まりました。

コロナ禍後も根強い「職住近接」

一馬力であれば、郊外の住宅に住んで夫が長時間かけて通勤し、妻が家事・育児の全般を取り仕切るというライフスタイルも成り立ちましたが、夫婦で長時間通勤となると、特に子どものいる家庭では生活が回らなくなります。

そこで生まれたのが「職住近接」──つまり、職場の近くに住むというトレンドです

リモートワークが浸透したコロナ禍の影響により、多少風向きは変わるとも言われましたが実際は変わらず、職住近接志向には根強いものがあります。企業のオフィスはたいてい都市部にあるので、都心寄りのエリアにマイホームを求める人が多数派です。さらに駅からも近ければ、通勤・通学の時間を減らせます。駅周辺は大型商業施設などを建設できる商業地域に指定されている場合が多く、利便性はすこぶる高くなります。



駅周辺の立地では戸建住宅が少ないことから、マンションへの居住を選ぶケースが多くなります。このようにして、都心・駅近のマンションへのニーズが急増。不動産価格は、おもに需要と供給のバランスによって形成されるので、多くの人が求める物件は、必然的に価格が高騰します。

今、日本でもっとも不動産価格が高いのは東京の都心3区(港区・千代田区・中央区)で、駅周辺のマンションは新築も中古も非常に高額です。都心3区から少しずつ遠ざかっていくと、エリアごとに濃淡はあるものの、徐々に価格は下がっていきます。

離れすぎると職住近接ではなくなってしまうため、多少高くても都心から離れすぎないエリアで、背伸びしてでも物件を買おうとする人は多くなっています。

完全テレワークの人などを除き、あえて郊外を選択する人は少なくなりました。

マンションバブルで物件は今後も値上がりする?

200億円もするような超高額物件は異例としても、都心部には1億円を優に超えるマンションが多く、購入できる層は限られます。一般のファミリー層が現実的に購入できる物件を探すなら、もう少し都心から離れたエリアに照準を合わせる必要があります。

2024年現在、都心から少し離れたエリア(都内で、都心部に1時間以内で出られるエリア)のファミリー向けマンションの価格は、新築・中古ともに5000万~7000万円台あたりがボリュームゾーンです。少し前までは3000万円台から4000万円台の物件もボリュームゾーンに入っていたことを考えると、やはり値上がりが顕著です。

とはいえ、昨今の価格上昇は平成バブルとは異なり、一部エリアの物件しか高騰していない「局地的バブル」です。平成バブルの折には、交通の便が悪い郊外を含む広範囲のエリアで不動産価格が高騰しましたが、今は郊外で利便性の悪いエリアになると、価格上昇の動きは見られません。

むしろ値下がりしている物件もたくさんあります。この先、平成バブル期のように広範囲の不動産が値上がりする可能性は少ないでしょう。

さくら事務所では前々から、日本の不動産市場で「三極化」が進行していることを指摘しています。日本の不動産市場は次の「三極」に分類できます。

①価格維持・上昇の地域(全体の10~15%)
②なだらかに価格が下落する地域(全体の70~80%)
③限りなく無価値、あるいはマイナスの地域(全体の10~15%)

今バブルになっているのは①の地域、つまり都心の好立地エリアにある駅前・駅近のマンションだけです。地方でも、そのエリアの中心都市における一等地や、インバウンド人気の高い観光地などでは、不動産価格が上がっています。

①と対照的なのが③の限りなく無価値、あるいはマイナスの地域ですが、面積としては①のエリアよりもずっと広くなります。過疎化、高齢化が進む地方の市区町村では空き家が増え続け、不動産価格はほとんどゼロに近づいています。もともと人口の少ない離島などでは、住戸の半分以上が空き家という極端な事例も見られます。

住むための維持修繕費用のほうが高い「負動産」物件

こうした空き家は売却してもほとんど利益にならず、逆に解体する費用が高くつくなどの理由で放置されています。もし、あなたが実家の相続などで空き家を所有しているなら、放置するのは危険です。近隣住民を悩ませる「特定空家」に指定されると、所有者は固定資産税の軽減措置対象から外れたり、解体費用を請求されたりすることがあるからです。

バブル期に建てられたリゾートマンションのなかにも、発売当初に何千万円もしたものが、今や老朽化でほとんど資産価値がなくなり、住むための維持修繕費用のほうがずっと高くつくような負の資産、いわゆる「負動産」が数多くあります。

1960年代の高度経済成長期に、当時の住宅難への対応策として開発された全国のニュータウンにも、価格が下落している物件が少なくありません。都心部から離れていて駅からも遠く、老朽化が進んだ団地が多いのですが、居住している方の多くは高齢者です。居住者が亡くなったり転居したりしても、次の入居者が見つかりづらいため、夜に近くを通るとほとんど明かりが灯っていない棟もあります。

①や③以上に多いのは、現状ではある程度価値を保っているものの、これからなだらかに不動産価格が下落していく地域です。

代表的なのは、都心から30~40㎞ほど離れている、かつてのベッドタウンです。そこまで都心部から離れていないということで、従来は人気の高かったエリアでも、今後は高齢化・人口減少が進み、徐々に価値が下がっていく可能性が高いです。

駅から離れれば離れるほど、価格の下落幅は大きくなっていきます。よっぽど高い付加価値がない限り、マイホームは駅から近ければ近いほど良い、という価値観が大勢を占めます。以前は「徒歩10分以内」なら十分駅近というイメージでしたが、今は「徒歩7分以内」など、より駅近の物件を探す人が増加しました。

かつてはブランド力の高い街であれば、利便性に多少の難があっても高額物件が売れました。たとえば、長らく人気エリアとされてきた東京都の世田谷区には、昔からの高級住宅街が多く、なかには最寄り駅から20分以上離れたところもあります。しかし、最近はそうしたエリアで、駅からの遠さがネックとなって、地価の下落が見られるように。緑豊かで閑静な住宅街が広がり、住環境は最高だとしても、駅から遠いと敬遠される傾向が強まっていることがわかります。

マンションバブル41の落とし穴

長嶋 修 さくら事務所
マンションは、戸建住宅を買えない人が住むところ? 上昇、なだらかに下落、無価値…日本の不動産市場で起きている「三極化」の現実
マンションバブル41の落とし穴
2024/5/31990円(税込)192ページISBN: 978-4098254712

そのマンションは資産性を維持できるのか

こんな「マンション選び」をしている人は必読です!

・やっぱりマンションを買うなら新築が安心
・立地や仕様が同じマンションなら安い方がお得
・都市部の新築・タワマンの価格が下がるのを待つ
・リノベ済み中古物件は内装が新しいため安心
・少しでも気になる物件は全て見ておいた方がいい
・修繕積立金や管理費は安い方がいい

マンションの価格高騰が止まらない。
都心のマンションを中心にバブル期超えの最高値を更新中だ。

しかしその実態は玉石混淆で、

資産性を維持できる「選ばれるマンション」と
資産性を落とす「選ばれないマンション」の

物件格差がかつてないほど広がっている。

そこで本書では、素人にはなかなか見極めが難しい
マンションの資産性を落とす様々な「落とし穴」を
具体的な事例とともに提示。

資産性が落ちない「選ばれるマンション」の選び方、住まい方を
マンションのプロが伝授する。